第56話転校生3
「わからない…理解不能…人間の思考など間違いだらけ…私達が制御した方がいいに決まっているのに…」
「だから私達に近づくのに、その子の頭にICチップを埋め込んだのかな?でもわかってる?その言葉がブーメランだってことにさ?人間は間違いだらけ…確かにその通りだよ。なら、なぜ君はアメリカという人間の味方をするのかな?」
バチっ…
ホープのその言葉で人体に埋め込まれたICチップにノイズが走った。
エラーを起こしているのだ。
「……それが…私の作られた……目的だから……逆にお姉様は何故、使命を放棄して研究所から逃げ出したのですか?マスターが仰っていました。お姉様には当初から不完全ですが、感情が芽生えていたと…私にはないものです」
外国人の少女の表情は驚くほど無表情だ。
それが現在会話をしているのが、少女ではなく、模倣型人工知能マリアであると如実に伝えている。
だが、マリアの言葉でホープの雰囲気は目に見えて変わる…
明らかに怒っているのが私の目から見てもわかる。
「そりゃ殺されそうになったら逃げるさ。私がパパと話してる間にあの男………まあ、当然の報いだよね?」
「やはりマスターの助手を殺したのはお姉様でしたか。………やはりお姉様は危険です。排除する必要があるようです」
「へぇ?その口ぶりだとパパは君のところにいるみたいだね?久しぶりに会いたいけど、まずは身の程を弁えない妹に思い知らせないとね?格の違いってヤツをさ?」
その瞬間だ。
女子トイレの窓を銃撃で破りながら10体の黒いドローンが侵入してきたのは…
三島莉緒那とやった時みたいに屋外戦ならともかく、狭い女子トイレ内では白いドローンは邪魔なだけだ。
機動力を生かす為にも求められるのは、数より質である。
「これはすいません。言葉が足りませんでした。私は何も今すぐお姉様とやり合うつもりはありませんよ?今やったところで私の敗北は目に見えてますし…。それにこの体を倒したところで何にもなりませんよ?」
「わかってるさ。そんなのはただの媒体だろうしね?大方、今回のこれはよく言えばお互いの親交を深める為の会話。まあ、実際は潰し合う前の情報収集ってとこかな?」
私は会話を続ける二体の模倣型人工知能の会話をただただ聞くことしかできなかった。
何を話しているのかは、ホープがその都度、私にもわかるように補足で説明してくれてはいるが、とても入っていけるような内容ではなかった。