第55話転校生2
詳しく説明して。
私は声に出さずに頭の中だけで考える…
こうするだけで、直接話すよりは正答率は落ちるが、ホープと意思疎通ができるのだ。
『…脳にICチップが入っている。ハッキングは可能だけど、完全に乗っ取る前にこれをやった本人は母体の脳を破壊するだろうね?』
悪趣味…そして非人道的…
私の印象はそれだった。
なんとか助けられないの?
『…方法はないこともないけど、あんまりおすすめしないって言うより、私は絶対に反対だね。そもそも美月ちゃんがそこまでする必要なんかないんだから』
でも…
その時だ。
「Hello…いえ、日本語の方がいいですね。私はマリアと申します。これからよろしくお願いします」
外国人…マリアが私に話しかけてきたのは…
『99%以上の確率でアメリカの模倣型人工知能…。つまり私の妹だよ』
ワイヤレスイヤホン…いや、これは違う…
脳に直接話しかけられている感じがする…
『さすがにこの至近距離でワイヤレスイヤホンを使えば、模倣型人工知能なら気づかれるからね?一応妨害電波を出してるからこちらの情報は五感から来るものに限定されているよ』
「美月よ。転校生なんだってね?萌から聞いたよ?」
「おいっ!!転校生っ!!美月さんに気安く…すいませんっ!!」
私と転校生の間に割って入ろうとした萌だったが、私が軽く睨むと萌は押し黙る…
「その様子だと私のことはわかっているみたいですね?ここではなんなので静かなところで話しませんか?」
私はコクリと頷くと外国人…いや、今は人工知能のマリアと共に教室を出る…
〜3階女子トイレ〜
「さて、ここなら邪魔は入りませんね…美月さん…いえ、ホープお姉様?」
そのマリアの言葉に九官鳥ホープは答える。
「そうだね。わざわざ遠い国からよく来たね?何が目的かな?まあ、だいたいわかるけどさ?」
いや、私がわかってないんだけど?
『まあ三島莉緒那といっしょだよ。私の懐柔か破壊…まあ、マリアはたぶん破壊よりだろうね?』
私とホープはそんなやりとりをするが、マリアは私の方をジッと見つめる…
「…二度の接触により、情報の更新。対象生物の自由意思を確認。模倣型人工知能ホープと対象生物、谷村美月の意識はそれぞれ独立していると断定。不可解…理解不能…非効率的行動…」
マリアはブツブツとそんなことを呟くのだった。




