第54話転校生
三島莉緒那…あのヤバイ裏社会の女との一戦から数日後…
私は教室で机に…正確には机と私の顔の間にある低反発枕に突っ伏していた。
ちなみに机にその枕を差し込んだのは萌である。
なんでこんな状態なのか…
決まっている。
単純に寝不足なのである。
一昨日は朝までカラオケ…
昨日はメデューサの臨時集会…涼子さんの引退式はさすがに参加しないわけにはいかない…
そう。
おかげで私はこの2日まともに寝れていないのである。
私と同じ状況のはずだが、授業に基本的に出てこない華音は、屋上のソファーで昼間は爆睡している。
正直、殺意が湧いたのは仕方のないことだろう。
睡眠は大切だ。
寝不足だからこんな物騒な思考回路になるのだ。
「無理…。ホームルームはもう寝る…授業はじまったら起こして…」
と言ったら萌が枕を渡してくれたのが、つい10分ほど前の話だ。
教室が恐ろしいほど静かなのは、私のせいだろうか?
いや、今はそんなこと気にしてる余裕はない。
私は微睡みながらそんなことを思った。
〜
「美月さん。美月さん、一限目はじまりますよ?美月さん…ひっ!?すいませんっ!!」
まだ寝ていたかったが、授業がはじまるなら仕方がない。
そしてどうやら私は寝起きの不機嫌な目で萌を睨みつけてしまったらしい。
「ごめんね…起こしてくれてありがと…」
「いえ、お気になさらずに!!」
私の話し方はもはや、いつもの莉奈みたいになっているが、そこは気にしないでくれると嬉しい。
私はだるい体をなんとか起こす…
そして、あることに気づく。
教室の中に人集りができているのだ。
そして、その中心にいるのは…
ブロンドの髪…
日本人離れした整った顔立ち…
「ん?外国人?」
私は首を傾げた。
「あ、転校生みたいですよ?さっきホームルームで紹介してました。うるさいですかね?黙らせてきますか?」
「いや、いいよ」
私は萌にそう答えると、マジマジとその転校生を見る。
こないだの三島莉緒那といた…フロゲニとか言ったか?
その外国人のせいで、あまり外国人にはいい印象がない。
だが、そんな私の予想…いや、勘とも言うべきか…
それは当たってしまう。
『美月ちゃん、微弱だけどあの子の体内から不自然な電磁波を感じるよ。気をつけて』
私はワイヤレスイヤホンから聞こえるホープのその言葉に表情を険しくする…




