第53話後始末
三島莉緒那は撤退する…
だが、パトカーのサイレン音はすぐ近くまで来ている…
「さて、こっちの処理は簡単だね。美月ちゃん、こっちだよ?」
九官鳥ホープは言いながら私の肩に戻ると一方向を指し示す。
サイレンがだんだんと遠ざかるのは、ホープが警察の無線を乗っ取って間違った方向に誘導しているからだ。
ホープが言うにはこれでしばらくの時間は稼げるらしい…
「あ…姉御!?なんだったんですか…あれ…」
「ホープ?未亜どうしよ?」
うん。
さすがにいくら酔っ払いでも目の前で人が吹き飛ぶ姿を見れば、酔いも覚める…
未亜はいつもの間延びした話し方ではなく、顔を真っ青にしながら言った。
「記憶の改竄しとく?」
「ダメ!!そんな危ないこと未亜にしたら許さないから!!」
「99.99%は安全だよ?まあ…残り0.001%はパッパラパーになっちゃうけど…」
「そんなことしていいわけないでしょっ!!」
私はさすがに声を荒げた。
「たぶん大丈夫だと思うけどな?パチンコの海○語でサ○を外すぐらいの確率だしさ?」
「説明がわかりにくいよっ!!」
ふざけたことを言うホープに私はそう突っ込みを返した。
こうなったら…
「…説明するしかないよね…」
私は覚悟を決めた。
〜
約1時間後…
「姉御の強さの秘密〜。未亜〜墓まで持っていきますよ〜」
理解度がちょっとアレな未亜に模倣型人工知能としてのホープのことや、ついさっきの状況…裏社会のヤバイ人がホープを狙ってきたことを説明したが、理解してくれたと思う………たぶん…
「まあ、私の正体を完全に話したのは、美月ちゃんを除けばまだ二人目だよ」
「もう一人は〜?」
「華音だね」
その瞬間、未亜の目が輝く…
「やりました〜!!莉奈に勝ちました〜!!」
何が勝ったのか…いや、この子は単純だ。
私の秘密を共有できて嬉しいだろう。
「そーいうこと言わないの?莉奈も大事な友達でしょ?」
「すいません〜。昔と違って今は未亜も〜莉奈のこと嫌いなわけじゃないんですよ〜。むしろ仲間としては好きですよ〜?」
一年四六時中いっしょにいたせいか、未亜と莉奈の仲はかなり改善されている。
まあ、それでもライバルという意識は抜けてないのだろう。
「ならいいよ。帰ろっか?」
「はい〜!!」
私と未亜は並んで歩き出す…
『なんか美月ちゃん、いい先輩してるね?』
うるさいな…
ワイヤレスイヤホンから茶化してくるホープの言葉を聞き流しつつ、私達は帰路につくのだった。