第50話ホープVS三島莉緒那
「交渉決裂かしら?めんどくさいわね…」
三島莉緒那はそう呟くと、宇宙服のようなマスクを被り直す。
その瞬間だった。
待機していた三島莉緒那の部下のいる3方向からスモッグが充満し出したのは…
『街中で毒ガス…いや、さすがにただの催眠ガスか…新型の逆噴射で風のバリアを張るよ』
ワイヤレスイヤホンごしにホープは言った。
ちなみに新型と言うのは私の周りを取り囲む、プロペラのない黒いドローンのことである。
「さて、先に攻撃してきたのは向こうだからもう遠慮はいらないよね?」
ホープのその言葉で旧型ドローン達は攻撃体制に入る。
ここまでは刹那の間だが、三島莉緒那の部下はさすがは本職の傭兵と言ったところだ。
すぐに主人である三島莉緒那と白いドローンの間に割って入る。
銃撃戦のはじまりである。
「ホープっ!!実弾はマズイよっ!!」
戦うことは覚悟した私だが、いきなり躊躇なく実弾ドローンを人に向けて発射させるホープに私は叫んだ。
「悪いけど、今回は聞けないね。非殺傷の装備じゃ、あの防護服に守られて有効打にすらならない」
言いながら九官鳥ホープも私の肩から上空に飛び立つ…
〜
ドローン達に攻撃指令と防御指令を出しながら、ホープは模倣型人工知能の性能を如何なく使って高速演算を開始する…
さて、三島莉緒那のカバーに入ったのは、一番近かった左翼の5人だけ…
残る右翼と後方に控えている部下はまだ追いついていない。
追いつくのは時間の問題だけど、一番警戒しなきゃいけないのは、まだ動いていない正面の非武装の男で、次点が、後方の3名だ。
正面の男は単騎で三島莉緒那の護衛を任せられるぐらいだから、三島莉緒那の彼に対する信頼は相当なものだ。
動作の節々から見ても、その他の部下達とは別格だ。
おまけにこの男には催眠ガスも効果をなさないらしい。
フロゲニ…
元ロシア軍人崩れの三島莉緒那の専属護衛だ。
データベースにある情報と現在進行形で更新されている情報がコイツが最も危険であることを示している。
次に後方の3名だが、この3名は三島莉緒那の他の部下達と比べて動きが格段にいい。
こちらはおそらく精鋭…鵜飼いの暗殺部隊と見るべきだ。
ちなみにここまでの結論に至るまでのホープの演算時間はほとんどかかっていない。
〜
ホープの白いドローンと三島莉緒那の部下達は銃撃戦を続ける…
時おり、美月や未亜に被弾しそうな銃弾はあらかじめホープが軌道予測している為、黒いドローンが弾く…
これを見るだけでわかると思うが、黒いドローンの強度は白いドローンとは比べ物にならない…
「うぐっ…」
そんな時だ。
三島莉緒那の部下の一人が白いドローンの弾丸に倒れたのは…
それとほぼ同時に右翼から来た三島莉緒那の部下7人が合流する。
それを見計らってついにフロゲニが動き出す。
「オマエラ、ミオサンヲ、タノム」
フロゲニはその巨体からは考えられないスピードで倒れた仲間に向かって走り出した。




