第4話登校
ホープが巻き起こしたあの惨劇から1週間がたった。
私は今日からまた学校である。
学校側は生徒の心のケアとかいう理由で昨日までは完全な臨時休校だった。
まあ事が事だから何も不思議じゃないけど…
「美月ちゃーん!!起きてー!!学校に遅刻しちゃうよー?」
ベッドで微睡む私ホープは文章ではなく、スマホのスピーカーを使って音声で伝えてくる。
「ホープ…スピーカーで喋るのはやめてって言わなかったっけ?」
私は寝起きの不機嫌な目でスマホを睨みつけながら言った。
ホープが私に意思疎通をする方法は大きくわけて二つある。
一つはスマホに勝手に文章を打ち出すやり方…
これはけっこうな頻度で使っている。
そしてもう一つはスピーカーを媒体に直接音声で伝えるこのやり方…。
正直これはやめてほしい。
何故なら家にいるのは私だけではないからだ。
母にバレたらめんどうな事になるのは確実である。
『美月ちゃん、ごめんね?次からはアラームをセットするね?だから嫌いにならないで?』
今度はスマートフォンにこう文章が打ち出された。
アラーム…自分でかけてもいないアラームが鳴ったらそれはそれで心臓に悪い…。
でも直接喋られるよりは100倍マシである。
「ならないよ。そのかわり今度からはちゃんとして?」
『はーい』
スマホに打ち出される文章を見ながら私は思う。
ホープは知識と思考能力はずば抜けているが、性格自体は善悪の区別がまともにできない子供である。
いや、大まかな区別はできているのだろう。
けどそれは私をいじめていた比較的小さな悪を止める為に、報道されている30人近い人を惨殺するというような暴挙にでるものだ。
そんな事を考えながら私は母が作ってくれた朝食を食べる。
『美月ちゃん、野菜が足りないよ?』
「ホープうるさい」
スマホに打ち出された文章を見て私は小声で答えた。
母がいる以上スマホと会話していたら私は変人である。
そんなやりとりもあったが、私は学校に行く為家を出る。
〜
〜登校中〜
『あれ?みんなお喋りしながら学校に行くのに美月ちゃんは?』
この中身が子供の殺人AIは悪気はないんだろうけど地味に傷つく。
まあ一応この子は私の数少ない友達だ。
正直に答えよう。
「いないよ。前は少し話す子ぐらいはいたけど、みんないじめの矛先が自分に向くのを恐れて離れていったよ…」
自分で言ってて涙が出そうになる。
どんな拷問だよ。
私がそんな事を思った時だ。
『よし。決めた。今日は美月ちゃんに私以外の友達を作るよ。いいかな?』
「できるの?」
私はスマホに打ち出された文章を見て思わずそう聞いてしまうのだった。