第47話結城澪
宇宙服のようなマスクを外した女…
アイドルも裸足で逃げ出すような絶世の美女は口元に薄く笑みを浮かべる。
ゾクリ…
それは気のせいなんかじゃない。
私の背筋に強烈な寒気が襲った。
「ミオサン、マスク、ハズシチャ、イケマセン。ソゲキサレタラ、ドウスルンデスカ?」
「話しにくいから仕方ないわ。もし仮に狙撃されたらマスクを付け直すまでの間、フロゲニ。あんたがあたしを守りなさいよ?」
フロゲニと呼ばれた大男のカタコトの日本語にミオと呼ばれた、絶世の美女はそう答えた。
ミオと呼ばれた方が私の方に向き直る。
「はじめまして。可愛いお嬢さん。いや、谷村美月さんって呼んだ方がいいかしら?あたしは結城澪って言うわ。ちょっと話がしたいんだけどいいかしら?」
『結城澪、本名、三島莉緒那。世界各国の犯罪組織と繋がっていて、悪名高い三島三兄弟の二番目だよ。一番上の兄の煌一は華音の親の組や、世界各国のマフィアを裏で操っていて、弟の鋭治は美月ちゃんが生まれるずっと前だけど、世間を騒がせていた千人殺しのシリアルキラーだよ』
ワイヤレスイヤホンからその女の恐ろしいプロフィールが聞かされる…
てかこの人一体いくつなのよ?
どう見ても20代前半にしか見えないんだけど?
てかなんでそもそも、そんな住む世界の違う人が私の目の前にいるの!?
私はもはやパニックである。
「ん?そのAIにあたしの事でも聞かされたかしら?……最近ダメね。昔ならすぐわかったのに、今じゃ半分は勘ってとこね…」
私が何も答えないのを確認すると、三島莉緒那はさらに続ける。
「…単刀直入に言うわ。そのAIをあたしに寄こしなさい。渡してくれればあたしはあなたに何もしないし、対価にあなたが一生かけても使い切れないぐらいの大金も渡すわ。どう?悪い話じゃないでしょ?」
脅し…
明らかに脅しだが、どうするべきだろうか?
『…今の戦力でやってやれないことはないけど、勝てるかどうかは状況がかなり不利だから、正直五分五分だね。美月ちゃんがやるって言うなら親友として全力でサポートするけど………こればかりは命がかかってるから強くは言わないよ…美月ちゃんが決めてよ…』
ワイヤレスイヤホンに聞こえたホープの最後の言葉は今にも消え入りそうだった。
そんなこと言われたらやるしかないじゃん…
いじめられてた頃から数えれば何回死のうと考えたかわからない。
でも…
「…ホープ。何があっても未亜だけは守ってね」
「交渉決裂かしら?めんどくさいわね…」
私は三島莉緒那に相対した。