第44話それから…
すっかり楽しくなった私の中学生活はあっという間に過ぎた…
そう。
気がつけば一年だ…
猛先輩や剛先輩や永海先輩を筆頭にした3年生は皆、卒業し、私達は3年に…莉奈や未亜達は2年になった。
〜
「美月先輩、紹介します。あたしの後輩で九童悠妃って言い………何やってるんですか?」
「ゲホッゲホッ…本人に聞いてよ」
今日は新一年生の入学式だ。
授業はないし、午前中で終了である。
もっとも屋上メンバーの中で入学式にちゃんと出席したのは私だけだが…
そしてなんで私が咳き込んでいて、莉奈が困惑しているのか…
それは私の肩で葉巻をふかしているバカな九官鳥のせいである。
「入学初日に挨拶に来るなんてなかなか殊勝な心がけだねー?私はホープ。美月ちゃんのパートナーだよ」
「はい!!これからよろしくお願いします!!」
悠妃ちゃんは元気よくそう挨拶する…
悠妃ちゃんの見た目は茶髪にカラコンが入った普通の…いや、普通じゃないか。
ここは中学校だし…
でも、屋上メンバーの中じゃむしろ私の見た目の方が浮いているし…
私はそんなどうでもいいことを考えながら答える。
「うん、悠妃ちゃん。美月だよ。よろしくね?」
「はいっ!!美月先輩の武勇伝は莉奈先輩から聞いてますっ!!一中に華音先輩とたった二人で乗り込んで100人以上を…美月先輩はウチらの憧れですっ!!」
うん、半分は正解だけど、いろいろ盛ってる…
私が倒した…いや、正確にはホープが処理したのは20人ぐらいだし…
あの後、3回程来るたびに返り討ちにされた…(私はあの校門の事件以来、やってないからほとんど華音がやった)一中は手段を選ばなくなり、一般生徒にまで手を出しはじめた。
それに激怒した先輩方が一中に乗り込んだけど、50人以上集まっている一中の多勢に、さすがに返り討ち…
捕まった先輩方を助けに華音が一人で乗り込んだ話を莉奈から聞いた私は、さすがに放っておけなくて一中に行った。
〜
数ヶ月前…
「化け物じゃねーかよ…一人で30人以上やりやがったぞ?」
「でも、さすがに幹部が束でかかればいけるでしょ?」
一中のトップの男子生徒とNo.2の女子生徒はそんなやりとりをする…
冗談抜きで華音は強い…
「あ?……んなもんか?おい?」
30人以上を倒した華音もさすがに満身創痍…
もはや立っているのがやっとだ。
「まあ、この分なら俺らが出なくてもなんとかなるだろ?玲那も汚名返上できたんじゃねーか?」
「…兵隊が相当数やられてるけどね?こんな状況でもし………うわ…最悪…」
女子生徒が私を見て露骨に嫌な顔をする…
私だって来たくて来たんじゃないんだよ?
「…八神華音はたしかNo.2だったよな?ってことはアイツが死神女王か。お前ら行くぞっ!!ドローンは無視しろっ!!操ってるヤツをやれば終わりだっ!!」
一中トップの男子生徒はそう言って突っ込んでくる…
〜
まあ、そこから先は例のごとく私は何もしないまま終わったのだが…
全てが終わった時に…
「…美月に全部いいとこ持ってかれちまったじゃねーかよ…」
と言った華音のセリフは不思議とまだ耳に残っている。