第43話友情
あの事件の翌日…
街中はいつにも増して騒がしい…
当たり前だ。
深夜の街中で正体不明の発砲騒ぎ…
しかも、ついこの間、この街では一家惨殺事件が同じ日に8件も起きたばかりなのだ。
けたたましくサイレン音を鳴らし続ける警察がこの事態の深刻さをものがたっている…
〜
いろいろな意味で疲れた私はその日は昼まで寝ていた…
電話の着信音が鳴る…
私は微睡む頭で電話に出る。
「美月ー?いつまで寝てんだ?ちっと遠出しねーか?こんなおまわりだらけの街になんかいられねーよ」
電話の相手は華音だ。
華音は昨日の事件などまるで気にしていないのだろうか?
だとしたらさすがと言うべきだが…
「…その元凶を連れてどこに行くって言うの?」
私の言い方は少し棘のあるものだったかも知れない。
私といればまたこんな事になるかも?
そんな私とはそもそももう関わらない方がいいと…
私の言葉は言外にそう言っている。
だが…
「眠てえこと言ってんじゃねーよ。気ぃ使ってんじゃねーよ?ウチらダチだろーが?さっさと顔洗ってこいよ?寝坊助は莉奈だけで十分だ。ちなみにあいつはまだ寝てやがるから合流したら叩き起こしに行くぞ?」
私の瞳からは自然と涙が溢れる…
「うん…そうする…」
「ちっ…やっぱり先に莉奈のバカを起こしに行ってくるわ。それまでに顔洗っとけよ?」
どうやら華音は私の涙声に気づいたようだ。
やることはめちゃくちゃだが、華音はこういうところは気を使うタイプだ。
私に気を使うなって言っといて自分はこれとか…
でも…
「…ありがと…」
私は言った。
「…あ?なんの話だ?」
「なんでもないよ。支度するから待ってて?」
「ああ、別に急がなくていいぞ?あのバカを起こすのは毎回手間取るしな?」
私は華音とそのやりとりを最後に電話を切る…
華音が男だったらたぶん惚れているところだ。
まあ、さすがに女の子同士の趣味はないからアレだけど…
私はたぶん一生、今日という日を忘れない…
そう。
今日は…
私に親友ができた記念日なんだから…
本当に支度をする為、洗面所に向かう私の足取りは軽かった。