第42話喧嘩
「ごめんって…いや、お願いだから?もう油断しないから…ね?考え直してよ?」
「無理。また昨日みたいになったらどうするの?」
私とホープは問答を繰り返す。
昨日の事件…
幸い私達に怪我人は出なかったが、一般客には若干の軽症者が出ている。
あのあと私達も警察に事情聴取され、そのまま未成年だからという理由で補導された。
事件の原因は、公式発表ではわかっていないし、ホープが絡んでいる以上、永遠にわかることはないだろう。
母にはあんまり心配かけさせないで?と軽く叱られた。
もう何年も母に叱られることはなかったから、少し驚いたがどう考えても私が悪いので素直に謝った。
「だからって全てのドローンの撤退なんて絶対ダメだよっ!!美月ちゃんに何かあったらどうするのさ?あれからドローンの制御は今までの10倍のセキュリティーした。断言するよ。何があっても今度は破られることなんてありえないよ」
ちなみにホープはそれをやった相手に対し、逆探知をしたあげく、報復に軍事システムをハッキングしてミサイルを撃ち込んだことは美月には伏せていた。
そんなことを言えば火に油なのはわかりきっている。
「50…これ以上は譲れない」
「少なすぎるよっ!!せめて5000…いや、こんなことがあったんだから、もっと本格的な軍用兵器の導入を…」
「………」
ホープのその言葉に私は何も言わない。
ちなみに50とか5000とかはドローンの数の話である。
私の部屋を沈黙が支配する。
「………そっか…さよなら…ホープ…」
「ダメだよっ!!」
バチバチバチっ!!
「あぅぅぅっ!?」
部屋の窓から飛び降りて自殺しようとした私の足を九官鳥のスタンガンが襲う…
一般家庭の2階程度の高さでも打ちどころを悪くすれば死ねる…
そう考えての行動だった。
「ごめんね?痛かったよね?でも死ぬなんてダメだよ…ね?謝るから…ね?」
腰から下は痺れて動かない…
しかも今のスタンガンはお世辞抜きにめちゃくちゃ痛かった…
ホープは今までこんなものを人に…
プツン…
私の中で何かがキレた。
「じゃーどうしろって言うのさっ!!私が生きてるからそんな数のわけのわからない兵器が必要なんでしょっ!?だったらこうするしかないじゃん!?」
私は気づいたら泣き叫んでいた。
一瞬の間…
そしてその後、ホープは口を開く…
「…わかった。言う通りにする…美月ちゃんが50って譲歩してくれたのに私ばっかり自分の考えを押し通そうってのはよくなかったよ…約束する。50体を残して他は撤退させる」
「…約束破ったら絶交だよ」
「わかってる。女同士…美月ちゃんの一番の親友として約束するよ」
言いながら擦り寄ってきた九官鳥の頭を私は座り込んだ体勢のまま、優しく撫でた。




