第41話マリア
「その口ぶり、ガスポートではないのか?」
「はい。ガスポートの可能性もないわけではありませんが、可能性的にはかなり低いと言わざるおえません」
男…マリアの調整をした者でホープの生みの親でもあるが、その人物は聞き返す。
「その根拠は?」
と…
「まず第一にカモフラージュ能力もさることながら、制御能力が極めて高度でした。ガスポートの予測性能は私の8割…かなり多く見積もって私と同等と言ったところです。事実、全力でハッキングしたにも関わらずハッキングできた端末は僅か5体…そして、それすらもすぐに制御権を奪い返されてしまいました。これらのことから、日本に潜伏する模倣型人工知能は、少なく見積もっても私の倍近い性能はあるようです」
「まさか…いや…そんなはずは…あれはたしかに…」
マリアのその言葉に男…博士は狼狽する。
「心当たりがあるようですね。…申し訳ございませんが、脳波を読ませてもらいました。そうですかホープですか。いえ、私の立場ならお姉様と呼んだ方が良いのかも知れませんね?」
「ありえん!!あれは破壊したっ!!」
「マスター、事実が全てです。私達模倣型人工知能の弱点は等しく強力な磁場ですが、なんらかの方法で危機を脱したと考えるべきです」
「しかし…」
だがここで、まだ何か言いたげな博士の発言を強制的に止める事態が発生する。
「警告。最新情報…上空の衛星がこちらに接近する多数の飛翔体を確認。迎撃ミサイル準備………アクセス失敗…再施行…アクセス失敗…すぐに避難を…」
「なっ!?」
博士の表情はそのマリアの言葉に驚愕に変わる。
これが何を表すのか…
つまりは逆探知でこちらの位置を特定して、逆にミサイルを撃ち込まれたのだ。
そして、迎撃ミサイルを準備しようとしたマリアの行動を阻害…
もはや認めたくはないが、これでは認めるしかない。
ホープがまだ健在であると…
「この施設の地下はシェルターになっているなんとかやり過ごすより他はない。マリア、お前はとりあえず儂が持っている適当な電子機器に入れ。ホープに対抗するにはお前が必要だ」
「わかりました。地上の研究施設を見捨てるなら、生存確率は99%を超えるでしょう」
マリアは言いながら言われた通り、博士がつけている高性能の時計の内部に侵入する…
〜
この日、アメリカのとある実験施設が突然地図から消滅するという信じがたい事件が起きた。
この日の出来事は、アメリカ政府に隠匿され、実験施設内の爆薬の誤爆ということで処理されたが、それは後に起きる惨劇のはじまりに過ぎなかったことを、人類は知る由もなかった。