第38話日常
ガラガラ…
私は扉を開けて教室に入る…
未亜や華音…ひいては他の屋上メンバーのように乱暴な開け方はしない。
だからこそ、一瞬みんなが気づくまでのタイムラグはあるが、それでも数秒で私の姿を見つける…
「「お疲れ様です!!」」
私は軽く手をあげてそれに答える。
もはやいまさらだ。
いや、諦めてるって言ってもいいかも知れない。
すぐに私の席の近くで立ち話をしていた萌が駆け寄ってくる。
「美月さん、留守中に次の授業の準備をしておきました。
「うん、ありがと」
最近ではクラス内で私の子分面をしている萌に私はそう返す。
この子は私がいじめられていた頃もそうだったが、強いものにはすぐになびくスタイルだ。
事実、以前は私をいじめていた主犯8人になびいていた。
まあ、どうでもいいか。
私はそんな風に自己完結すると席につく。
その日の授業は問題なく過ぎた。
〜
放課後になった。
授業が終われば今度は集会だ。
私は立ち上がる。
「美月さん、鞄お持ちしますよ?」
金魚のフンのごとく萌がついてくるがもはや指摘するのもめんどうくさい。
「美月さん、話は変わるんですが、美月さんこの後って…」
校内を歩きながら萌は切り出す。
私はその一言でだいたい察しがついた。
どうせ、前みたいに萌が狙っている男に寄ってきている女を恫喝して黙らせてほしい…
いや、具体的には私は何も言わずに黙っているだけで威圧になるらしいからそれでいいらしいが、とりあえずめんどくさい。
私は先手を打つ。
「…メデューサの集会だけどくる?」
「いっいえっ…また後日改めて…」
萌はそう言って引き下がる。
前回の時はたしか、お礼がしたいという萌にスマホカバーをねだったらすんなり買ってくれたし、一方的に利用されているわけではないのだが、この子との関係は華音達と違って利害関係の下に成り立っている。
まあ、それが別に悪いとは思わないけど、友達かと言われるとちょっと微妙なところだ。
仮に私が萌を遊びに誘った場合、萌が断るのは想像がつかないが、またそれは別の話だ。
萌と私の関係は、この奇妙な力関係があってこそのものなのだ。
〜
校門にたどり着くと、萌は華音達に一礼してその場を去る。
ちなみに私の荷物は私に返されることはなく、そのまま未亜にパスされた。
「すっかり二中のボスじゃねーか?」
「やめてよ」
「わりーわりー。行くか」
私はからかってくる華音とそんなやりとりをすると、莉奈と未亜を連れてメデューサの集会に向かうのだった。