第26話ゲームセンター2
「姉御は退がっててください〜。こんな雑魚共〜、未亜一人で十分なんで〜。莉奈〜?姉御は任したよ〜」
「誰に言ってるの?」
未亜は女子三人に向けて歩き出し、莉奈は私を守るように陣取る。
一触即発の空気である。
だが…
「朱莉。本当に黙って。こいつのことは気にしないでいいから話は終わり」
おそらく女子三人の中じゃリーダー格なのだろう。
その女子の言葉で朱莉はそれ以上は言わない。
「にしても…八神華音の金魚のフンだったアイツらが別のヤツに従うなんてね…こりゃ面白いものが見れたわ…」
リーダー格の女子の最後の言葉は小声でボソっと言っただけだ。
未亜と莉奈は当然聞こえていないし、私もホープが通訳してくれなければわからなかった。
〜
その後…
「ねえ?ネボスケって何?喧嘩売ってるの?漢字もわからないなら書かない方がいいよ?バカを認めてるみたいなものだから?」
「喧嘩売ってま…すいません、姉御、売ってません。漢字わからないのは莉奈だって同じじゃないの〜?書いて見なよ〜?ネボスケって〜?」
そう。
現在私達はプリクラの落書きコーナーにいる。
落書きペンを渡された莉奈の手が止まる…
莉奈もわからない…いや、無理もないか…
莉奈が…いや、屋上メンバーは基本まともに授業になんか出ない。
「誰が自分の自虐ネタなんか書くの?そっちの方が頭悪いよね?」
「あれ〜?人に言っといて書けないの〜?寝過ぎで脳みそ溶けたって噂は本当みたいだね〜?」
「…喧嘩売ってるよね?美月先輩、すいません、後でぶっ飛ばしてもらっても構わないんでやってもいいですか?」
さすがの莉奈も額に青筋を立てている。
これはさすがに止めた方がよさそうだ。
「二人ともやめて。未亜が悪いよ。煽りすぎだし…」
「すいません」
私がそう言えば未亜は素直に謝る。
少し前までいじめられていた私からは想像がつかないかも知れないが、事実だから仕方がない。
「でも〜…」
そこで未亜は言いかける…
まだ何かあるのだろうか?
「…純粋な質問ですけど〜姉御は書けます〜?」
「誰に言ってるの?美月先輩は書けるに決まってるじゃん?あんたとは頭の出来が違うんだから」
いや、書けるけど…
書けるけどさ?
〜
その後出来上がったプリクラには、私が書いた漢字の寝坊助がデカデカと莉奈の頭の上に印字されている…
ちなみにその後の莉奈と未亜の会話の流れで、その一枚に関しては未亜の頭上には私が漢字で書いた馬鹿という言葉が印字されている。
二人とも特に気にした様子もなくニコニコしているが、あんた達それでいいの?
私は心の底から思った。




