第13話教室にて…2
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三限目…
「美月さん、ノートです。代わりにとっておきました」
斜め後ろの萌から小声でそんな事を言われる…
いや、求めてないよ?
ただホームルームからずっとみんなこんな対応なんだよ?
その時だ。
ガラガラガラ…
今は授業の真っ最中…
先生はもちろん教室にいる。
そんな時間に本来教室の扉が開くわけがないのだが、事実開いた。
その原因は…
「一条…ここは二年の教室だぞ?」
先生はチラリとその人物に視線を送るとそう言った。
昨日の感じでわかったが、この学校のヤンキー達の仲間意識は異様に強い…
そして八神さんをはじめとして、大人でも恐怖するような背後関係を持つ人物も数名いる…
先生はその一言だけ言うともはやそれ以上は言わない。
「吸血姫…」
誰かがそんなことを呟いた…
その瞬間だった。
ズガーンッ!!
その声の方向に鉄の塊が投げつけられたのだ。
「ぁぁぁ…」
言い出したのは男子生徒だったが、突然投げつけられたショート鉄パイプに驚きのあまり椅子から転げ落ちた。
「やめてくださいよ…あたしそのあだ名…気に入ってないんですから…」
昨日とは違って何故か○ケモン着ぐるみパジャマスタイルの莉奈は、相変わらず眠そうな表情で懐から別のショート鉄パイプを引き抜く。
どちらにせよ、学校に来る服装じゃないのはもはや気にしてはいけない。
一体いくつ持っているんだろう?
私はそんなどうでもいいことを考える…
昨日は普通だったが、この子もやはり仲間の前と普段では違うのだろう。
「って…こんなことしに来たんじゃ…あ…いた…美月先輩…」
莉奈は私を見つけて駆け寄ってくる。
クラスメイトは薄々気づいていた為か目線を逸らすが、先生に至ってはすごい顔でこちらを見ている…
結局イジメはなくなっても私には平和な学園生活は訪れないようだ。
てか私が対処しなきゃダメだよね?
これ?
「…莉奈ちゃん?どうしたの?」
若干の間のあと私は仕方なくそう口を開いた。
「あ…はい…さっきあたしも呼ばれたんですけど…猛先輩がスロットで大勝ちしたらしくて…お昼にみんなに奢ってくれるみたいなんですよ…それで剛先輩をはじめ何人かが二日酔いでソファーで寝てて動けないから…とりあえずウー○ーイーツをとろうって話になりまして…美月さんは何にします…?」
えーっと…
これはどう答えるべきなのかな?
てかどうすればいいの?
ちなみに猛先輩や剛先輩は3年のイカツイ先輩だ。
とりあえず…
「すいません、ちょっとお腹が…」
あからさまだが、私は一言先生にそう断り、莉奈の手を掴むと廊下に出る…
私の背中にみんなの視線が刺さってる気がするが、気にしたら負けだ。