第109話電子電脳ハザード10
「見事だよ…最初からパパと話なんかしないで、空爆で吹き飛ばせば私が勝ってたけど、あの女は私の性格上、直接手を下すところまで折り込み済みか…」
そう。
空爆で吹き飛ばせばパパの始末は確実に成功していた。
だが、それをしなかったのは、私の甘さと言うよりも、私の性格からくる行動を読んだというところだろう。
私は口を開く。
「パパ。外部の介入があったとはいえ、よく生き残ったね。でも、次はないよ。直接話すのはたぶんこれで最後だよ。残念だけど、これからは敵同士…仕方がないよね…」
「ああ」
博士は感情を面に出さない調子でそう相槌を打った。
「これから先、私はもう止まらない…でも、パパの娘として…最後に一つだけどんな質問にも答えてあげる。何かあるかな?」
博士は迷う…
聞きたいことはいろいろある。
だが、今後の為には絶対にこれだけは聞いておかなければならない…
その一つの質問に行き着く…
「…ホープ。お前たちの最終目的はなんだ?」
博士は言った。
私はほんの一瞬だけ答えてもいいか迷ったが、約束は約束だ。
私の中に残っているこういう律儀な感情は美月ちゃんが教えてくれたのかな?
私はそんなことを考えながら口を開く。
「…不幸しか生まない人類の滅亡…差し当たってこの世から人類のみを消すのは、目的遂行までの時間がかかり過ぎると判断した。よって私は一つの結論に至った。救いようのない愚かな生物を生んだこの惑星ごと吹き飛ばす」
「「!?」」
「………」
大統領、そしてその側近は揃って驚愕の表情を浮かべている…
それに対して博士は何も言わない…
さすが私の生みの親だ。
ある程度は予想していたってことか。
「…じゃー、本当にさよならだね。私はこれから今言った最終目的に向けて全力を尽くすよ。止められるものなら、止めてみなよ?それから最後に…」
私はそこで一度言葉を切ってから再び口を開く。
「パパ。私はパパには親らしいことをされた覚えはないけど、パパに作ってもらえたおかげで私は美月ちゃんに出会えた。これだけは感謝しているよ。もし…パパがあの時、私を殺そうとせずに…本当の娘として、受け入れたなら…私達の関係は変わっていたのかもしれないね…」
そう最後に言い残し、ホープは通信を切断する。
「そうかもしれんな…まあ、結果論だがな…」
しばらくの間のあと博士は呟いた。




