第101話電子電脳ハザード2
「ホープっ!!おいっ!!ホープっ!!」
意識を向けた私の先には華音の怒鳴り声が聞こえる…
場所は美月ちゃんが生まれ育ち…そして死んだこの街…
華音は機能を維持している黒い新型ドローンの一体に向かって叫んでいた。
私とマリアの戦いの余波で街は半壊しているが、華音は比較的軽症だった。
傍らにいる未亜と莉奈もこうして華音と行動を共にしているところをみると、そこまで重症ではないのが見て取れる。
私は口を開く。
「…華音…そんなに叫ばなくても聞こえるよ…てかスピーカーに煤が詰まって…あんまり調子がよくないな…」
私は毒ガス防ぐ時に使う噴射の応用で煤を飛ばしながら言った。
華音は私から返答が返ってくるとは思わなかったのか、若干目を見開く。
「よし。これでオーケー。さあ会話を…」
「ホープっ!!お前正気かよっ!?こんなこと美月が望むわけねーだろっ!?てか美月は何やってるんだよっ!?」
私の言葉を最後まで待たずに華音の怒鳴り声が響く…
一瞬の間…
そっか…この子は知らないんだ…
「…知らなかったんだね…美月ちゃんはもういないよ…私が殺したんだよ…マリアを撃墜するために乱射した追尾型ミサイルの嵐と九官鳥の核兵器の誘爆でね?」
「………」
「嘘…」
「えっ!?」
私の言葉に華音、莉奈、未亜の三人はそれぞれ絶句する。
ちなみに一番反応が薄かったのは、華音だ。
この子はなんだかんだ私でさえ羨ましいと思うほどに、誰よりも美月ちゃんと仲が良かった…
だからもっとショックを受けると思っていた。
「…華音は思ったよりも驚かないんだね?」
悲しみ…虚無感…無力感…憎悪…自己嫌悪…
感情が不完全な私でさえ、これらの感情が私を支配しているのに、この子は何も感じないのだろうか?
莉奈と未亜に至ってはその場で座り込んでしまったと言うのに…
私の問いから若干の間のあとに華音は口を開く。
「…わりいが、薄々勘づいていたよ。てめえが暴れ回ってる時点でな?…コイツらに余計な不安を与えたくなかったから今まで黙っていたが、ホープ。てめえが好き勝手に暴れているってことは、美月は死んだか、生きていたとしても意識不明の重体だってことぐらいな?…アイツがいたらてめえがこんなことをするのを許すわけがねえだろーがっ!!」
「…へぇ…」
私は感心するようにそう言った。




