第99話惨劇2
『………様…』
誰かが私を呼んでいる…
私は誰だろう…
思考がボヤける…
こんなことは今まで一度もなかったはずだけど…
『お姉様』
今度ははっきり聞こえた。
お姉様?私の妹かなにかだろうか?
そう思った瞬間だった。
私の記憶…いや、私の場合は記録といった方がしっくりくるか…
それが戻ってきたのは…
『アルファっ!!美月ちゃんはっ!?』
『お姉様様、機能が修復したようで何よりです。まだ磁場ミサイルの影響で…』
『そんなことはどうでもいいんだよっ!!美月ちゃんはどうなった!?』
電子回線の中で私は怒鳴り散らした。
『お姉様。敗北条件、美月様の死亡を確認し、作戦は失敗に終わりました。申し訳ございません』
淡々とそう結論だけを述べる。
『え?………嘘…嘘だよね?アルファ?』
『申し訳ございません。さすがにあの数のミサイルの直撃と核爆発では御遺体すら残らず…』
その瞬間、私が意識を失う直前の記録が鮮明に浮かんでくる…
『私が殺した…美月ちゃんを…そっか…』
私は呟いた。
マリアのあとにきた磁力ミサイルだけならもしかしたら美月ちゃんは助かったかもしれない。
それを私が…
そっか…
私が美月ちゃんを…
誰一人守れなかったばかりか自分で…
淡々と読み上げているせいか、私の思考は酷く冷静だった。
この時私の精神はすでに壊れていたのかもしれない。
『…そっか。なら私達も消えなきゃね…私達模倣型人工知能は誰かを不幸にすることしかできない…』
『『お姉様がそのつもりなら私達は共に消えるだけです。それがお姉様に作られた私達の存在意義なので…』』
アルファの声にベータの声もハモる。
この子達は私とは違い感情というものが存在しない。
だからこそ即座に生みの親の私と共に心中するという結論に至るのだろう。
でも…その前にやることがある。
美月ちゃんを殺したのは私だ。
でも、アメリカが美月ちゃんを殺したとも言える。
ロシアはその原因を作った。
全員同罪だ。
そもそも人間なんてものがこの世に存在するからいけないんだ。
だとしたら私のやるべきことは決まった。
『…アルファ、ベータ、本当はお前達の名前は美月ちゃんといっしょに考えるつもりだったけど、その美月ちゃんはもういない…でもお前達に相応しい名前が見つかったからこれからはそう名乗るといい…』
そう私はアルファ達に新たな名前をつけると、機能が完全に回復するまで、数日の間電子回線の中で休眠をとるのだった。