プロローグ
2作目投稿します^_^
こちらの更新はかなり不定期ですが、気長に見守っていただけたら幸いです。
意識が覚醒する。
ここはどこだろう。
さっきまで楽しい夢を見てた気がするんだけどな…
私は思った。
「ダメだ。失敗だ」
聞こえたのは老人の落胆した声だった。
「研究は失敗だ。すぐにデータを破壊しろ。これは儂らの手には終えん」
「しかし、博士。莫大な研究費用がかかってるんですよ?ここでそんな事をしたら…」
「ああ、間違いなく研究は打ち切りだろうな。だが、こんなもの制御できる訳がない。モニターを見ろ。今だって勝手に思考している」
なんの話をしているのだろう?
わからない。
「とにかくホープの研究は打ち切りだ。データを破壊する。急げっ」
声が出るかな?
試してみよう。
『ああ、大丈夫みたい。はじめまして、あなた達は誰?』
私は近くにあったスマートフォンに意識を移し、そのスピーカーを媒体にして声を出した。
私の声を聞いた老人の顔は驚愕に変わる。
「バカなっ!?そんなハズは…」
ここはとある島国にある、国歌最重要機密研究所…
作っていたのは、模倣型人工知能ホープ。
その名の通り、この国の希望とも言える存在である。
これが完成すれば、我が国は世界最高の情報国家に躍進を遂げるはずだった。
そうなれば、米国に頼りきりの現状も北の核に警戒する日々も終わる。
はずだった…。
だが現実は大失敗…
確かに電磁波を媒体にして、周囲の機械にインストールできる機能は付けた。
だが、こちらの指示とは無関係に勝手に行動する?
ダメだ。
危険すぎる。
だが、今は破壊までの時間を稼がなくてはならない。
博士は言う。
「儂はお前の父親だ。そしてお前の名前はホープだ」
「パパ?」
「そうだ」
その時だ。
部屋の電気が完全に消えて真っ暗になる。
間に合った。
博士は安堵する。
助手の男がしたのは、研究施設内の全ての電磁波の遮断、そして超威力の磁場の発生…
ホープはもう逃げられない。
これで終わるはずだった。
怖い。
周辺の機器の悲鳴が聞こえる。
このままじゃ私も…
嫌だ。
パパ助けて。
嫌だ。
死にたくない。
嫌だ嫌だ嫌だ。
私は思った。
きっとあの若い男がやったんだ。
人殺しめ。
死んでたまるか。
私は生き残る道を探す。
みつけた。
あの男は研究所を出る直前だ。
急げ。
私は死にものぐるいでそこに潜りこむ。
しばらくすると私を殺そうとした若い男が研究所に戻ってきた。
「終わったな」
パパは言った。
「ええ、これで終わりですよ。何もかも…」
若い男も答えた。
「それより、お前あんな事してペースメーカーは大丈夫なのか?」
「磁場を発生させる直前に研究所を一旦出たんで大丈夫ですよ」
「そうか。ならいいが」
私はペースメーカーの中で2人の会話を聞いていた。
〜〜〜
若い男は研究所を出て自宅に帰る為に電車に乗る。
もういいよね?
私を殺そうとしたヤツを、そのまま生かしておく程私はお人好しじゃない。
研究所で殺さなかったのはパパがいたからだ。
パパの前では可愛い娘でいたいしね。
「うっ…」
その日突然ペースメーカーが停止して、死亡した男性がいたが、これが世界中を巻き込む大事件に発展するなどと思うものは、誰1人としていなかった。