思い出のレトロゲーム
Web文芸部がリレー小説をして作った作品になります。
「好きです!」
ずっと秘めていた想いを、告げて。
君の表情は、オレンジの逆光で見えない。静寂が流れる学校の屋上。治まらない胸の鼓動。
一羽の鳩が空を飛んで。
君の声が、聞こえた。
「実は私、魔王なの……」
……聞き間違いだろうか。
返ってきたのは答えではなく恐らく人生で一度も聞きそうにはない言葉。
火照っていた身体はいっきに冷め、冷静な自分が戻ってくるのを感じる。己の心へ改めて自分の想いを問う。
ああ、好きだ________。
「それでも構いません。答えを、くれませんか?」
君がゴクリとつばを飲み、驚いた表情で目を見開き固まる。
その表情がとても愛らしくて、こんな愛らしい生き物が魔王だなんて世界はなんて平和なんだろうとつい笑みが零れる。
「あの、その──」
しどろもどろになった君が手をギュッ握り、雫で瞳を濡らしながら口を開く。
「でも……」と君は渋る。なぜだ。何がいけないんだ。
うつむいた君の頬に、幾筋もの涙が伝う。
ああそうか、そうなんだ。
僕は一人、合点する。
君の抱えてきた秘密。
魔王であるが故の苦しみ。
たった一度の告白で、それを覆すことなどできっこなかったんだ。
君は何かを言おうと口を必死に動かしている。
僕はそれをゆっくりと待った。
僕の気持ちは変わらない。いくらでも待ってやる。そんな心意気だった。
その言葉は、震えていたが、確かな意味を持って僕の耳に届いた。
「……私も、好き!」
魔王だとか、そんなの些細な問題だった。
好き、という言葉は頭の中で反響する。胸が高鳴る。
ずっと待っていた、その一言。
君は赤に染まった顔でこちらを見ている。君の肩を優しく掴み、二人の距離が縮める。そして、唇と唇が重ね――
突然、目の前は暗くなった。
「デ、データが!」
僕は悲鳴を上げた。これだから中古のゲーム機は!