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任務終了

「ちょいマジで!? 戦闘訓練って聞いたのにこれどこが訓練!?」

「いやぁぁぁーーーーー! 訓練っつうかマジ実戦なんですけどー!」

「訓練だと思いますよー。こんな地下なのに、灯りまで用意して道も指定されてて武器もあって」

 女の子が三人、キャーキャー言いながらゴブリンの群れから逃げていた。それぞれが持つのはクロスボウと矢がぎっしり詰まった筒だ。

 ペルソナはそれを見下ろしながら地底湖の壁を走っている。走るといっても、壁面を垂直にではなく出っ張りを伝って少しでも踏み外せば落下するような危険な走り方だ。

「あれ捕まったらどうなんの!?」

「貰った資料じゃ――――――――だって」

 追ってくる群れの先頭、そいつの足を撃ち抜いて地面に縫い付けてやる。殺さず、しかし確実な足止めを。

「そんなの絶対やだぁぁぁぁぁっ! 最初くらい好きな人に……」

 開けた場所に出ると、今までと違った冷たさと水のにおい。地下水脈だろう、地下なのに滝があって削られた岩が橋になっている。ここを駆け抜けてしまえば合流地点、仕留めたゴブリンの数に応じて報酬が支払われる約束なのだ。

「うわぁ来たよ前から」

「なんでえぇぇ……囲まれたぁ……」

 後ろに向けて矢を放つが、次を装填するまでの間にどんどん距離を詰められる。

「どうします? 飛び降り……」

 下はどう見ても飛べば死ぬ高さ。

「……ますか?」

「いやいやユキちゃん……死んじゃうってさすがに」

「でもーさすがにここでゴブリンにやられるよりか……」

 飛び降り自殺のほうが楽に死ねるか、と。遥か下にある地底湖に視線を落とす。

「スコールが助けに来てくれるでしょ。さすがに訓練生ほったらかしとかさぁ」

「お前ら伏せろー!」

 どこからか男の声が響いてくる。

 ペルソナもゴブリンの群れを見ながら開けた場所に出て、

「うわっ――っと」

 そのまま飛んでいたら遥かしたの滝壺に落ちるところだった。進む道がないし降りるなら下のゴブリンの群れの後ろしか……。

「ほら来た」

「ってか伏せなくて――」

 いいの? その言葉を言う前に進む先、橋がいきなり崩れ落ち後ろから迫るゴブリンの群れをさらにその後ろから襲う人影があった。

 群れの中に飛び込んで低い姿勢で太刀を振るい、ゴブリンを切断していく。彼女たちの足元にもヒクヒクと動くゴブリンの体が飛んでくる。

 彼女らにとっては、小柄な鬼という表現が一番しっくりとくる。身の丈は高くとも百四十、腰回りを何かしらの物で隠している個体やそうでないのやら、刃物やら弓矢を持っていたり魔術を操る個体まで様々。とにかく、醜い、数が揃うと怖い。そしてなにより、こいつらに捕まると……。

「あれ誰さん?」

「知らない」

 あっという間にゴブリンの群れを排除したペルソナが警戒しながら少女たちに近づく。

「どこの所属? スコール以外は進入していないはず」

「私たちは……そのぉ」

 どう答えようかと迷っていると音もなくスコールが降ってきた。

「ここで死ね!」

「あっ――」

 蹴り飛ばされて空中に放り出されて、伸ばした手は何もつかめずに――

「よし、十分だ。帰ろうか」

 カランと音を立てて落ちたペルソナの三尺刀を蹴り飛ばし、近場のいかにも重そうな岩を持ち上げて落ちていくペルソナを狙って落とす。

「スコール……今の人は」

「気にするな」


 ---


 どれだけ流されただろう、流れの中で何かを掴み水から上がる。井戸の水よりも凄まじく冷たく、容赦なく体を冷たくする流れから解放されても冷え切った体は思うように動いてくれない。

「いっつぅ……あの、やろ」

 真っ暗闇の中で水の流れを聞きながら震えている。濡れた体は僅かな風の流れにも体温を奪われ、どれだけ震えてもどんどん冷たくなって感覚が消えていく。

「はっ……あははっ、なんで、こんな……」

 どうやって帰ろうか……登ってもいいが、そこまで体力が持ちそうにないしこのまま流されて行けるとこまで行ってみる? でもその前にもう、冷えた体が先に諦めそうだ。


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