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騎士団ト妖精ノ舞ウ空

 騎士団、オーダー1配下の追跡部隊が六人一組で二組。計十二人は哨戒用の編隊を組んで敵が潜んで居るであろう領域の上空へ侵攻する。山を越えれば、眼下には真っ白に焼けた純白の砂漠。

 海も見えず、本当に乾燥した砂漠地帯だった。湿った空気も、流れる雲も山ですべての水分を降らせ、乾いた空気が流れ込んでいる。そんな砂漠の砂の下、隠れている存在を追跡部隊の更に上を飛ぶレイアが感知した。ギラギラと照りつける日差し、紫外線が襲い来る人が住む場所ではない高空で半袖短パンという軽装。彼女の背には青い魔法陣が広がり、そこから妖精の翅のような光の帯が三対伸びていた。後ろの翅には小さな筒のような物が多数装備され、手には小柄な体躯に似つかわしくない長大な〝ライフル〟があった。

「全部で五百十一、戦力過剰じゃないかなぁ」

 追跡部隊は各方向から囲むように旋回しながら包囲の輪を狭める為に、三十六人。見つけた後の本命、攻撃部隊は十四人ほどだ。オーダー1が別方面に行ってしまったが、あちらはあちらで〝対応される〟だろう。こっちはこっちで確実に騎士団を〝指揮〟してスコール相手に〝全滅〟させられなければいけない。団長からの依頼はそれで、騎士団からの依頼は高高度早期警戒管制任務。

「レイアから各機、地中に反応あり。データ転送」

 管制下には十二人。他も管制者二人がいるのだろうが、兵器としての〝性能〟ならレイアには敵わない。おそらく見つけたときには懐に入られて、緊急支援要請が飛んで来た次の瞬間には接続が切れる。

『種別と兵装は、それになんだ、輝点が多いが違う物まで探知してるんじゃないだろうな』

「デコイ、対空魔法、地対空ミサイル、小型召喚獣他多数。動いた、起動六、来る」

『クソッ、攻撃部隊へ支援要請、時間を稼ぐ』

 砂の中から黒い結晶が飛び出て、砕け、黒い人影のような物が襲ってくる。追跡部隊は敵を追いかけて位置を常に把握するのが任務であるため、攻撃部隊ほど潤沢な兵装は持ち合わせていない。黒い化け物と白い騎士が入り乱れ、格闘戦に入る。その隙に支援要請を無視した攻撃部隊五名が超低空飛行で突破。攻撃部隊にレイアが送りつけるデータが変化する。それを攻撃部隊が認識したときには、もう手遅れだった。一隊が急速上昇して逃れようとしたが、地表広範囲を巻き込む爆発に呑まれて消えた。

『なんだ今のは』

「二人離脱、生存確認できず」

 遅れていた二人が吹き飛ばされるだけで済んでいた。もっとも、空中でその衝撃をまともに受けた以上、感覚が狂って体への損傷も無視できる物ではない。まだ動けるうちにと、反転していく様子が見えた。

「アタッカー、指定ポイントへ移動。スカウト、自力で残りの障害を排除しろ」

 とくに無茶な命令ではなかった、追跡部隊が交戦に入ってから数秒で攻撃部隊が敵を蹴散らしている。数も少ない上にただ突っ込んでくるだけの化け物は、数さえ居なければ脅威とは呼べない。

 再び編隊を組み直して上昇した追跡部隊には隙間が一つ。部隊長にはその一人がどういう動きをして、どの時点で落とされたのか、分からない。しかしレイアは高高度からしっかりと、すべてを観測して記録していた。この位置からなら十分に〝狙撃〟できる。支援していれば攻撃部隊など必要なく、十分に対応できていたが、しなかった。言われていないことまでやってやるつもりはない。あくまでも、依頼は高高度早期警戒管制任務なのだから。魔術によって弾丸を撃ち出す銃と、大量の小型誘導魔術弾はすべて自衛のための武装でしかない。彼女にしてみれば、下で戦う連中が頼りなさ過ぎるから仕方なく、管制任務なのに武装してきているだけなのだ。

 スコールが相手となれば、話が言っていようがいまいが試験だとか言って仕掛けてくる可能性が高い。そうなった場合、対抗手段無しではシャレにならないというのもある。

「アタッカー、ウェイポイント追加、パワーダイブ」

『アイズよりレイアへ支援要せ――えっ』

「反応が遅い、よく見ろ」

 こちらの索敵範囲外ではあるが、作戦領域全体の状態は把握している。事前に向かわせた攻撃部隊がちょうど飛び出した敵と接触し、余所の追跡部隊への被害が押さえられる。

「アタッカー、六、三マージ。一隊はアイズ指揮下へ移行、一隊は指示したポイントへ三十秒で移動、待機」

『ごめん、助かった』

「そんなんじゃ帰れないよ」

 元から生きて返す気は無い。管制者は戦闘状況の記録まで行う、だから、場合によっては彼女自身が撃ち落とす。馴れ合いなんてものは不必要だ。

「レイアから各機へ、地表に人工物確認、一カ所ずつ潰せ」

『人工物? 視認できないが、どこにある』

「アプローチコース指定、支柱に布掛けて砂で埋めてある。そのコースで見えなかったらだいたいの位置で突け」

『さっきみたいな爆発はないだろうな』

「指示に従え」

 円滑な作戦行動は、上から下へ命令が下りるだけで達成される。下から上は邪魔なだけだ。

「アタッカー、待機位置からスカウトへ随伴、敵性発見次第撃破せよ」

 短い休憩を終了させられた攻撃部隊が、真下を飛んでいった追跡部隊の後ろにつく。まだ兵装に余裕がある、予備の魔力も十分に。

『セイよりレイア、シェルター潰したら二人ほど炙り出せた。特徴一致、こっちにアタッカー回して』

「レイアからアイズ、指揮下アタッカー動かせるか」

『アイズよりレイア、指示出した。大丈夫』

 微弱な索敵ではそこに居るのは分かっても、誰が、何が居るのかまでは識別できない。しかし分かる、それは囮だと。近づけば地中に仕掛けられた術が作動して、さっきみたいな爆発に巻き込まれるだけだ。分かっているが、自分の管轄外、しかもそこまでの長距離索敵は〝出来ない〟ことにしているから言えないし、言わない。

 一部仲間内では最弱と言われ、役立たずとして扱われているが、実質凄まじい戦闘能力と対魔術解析能力を持ち合わせていながら魔力保有量が極端に少なく、予備の魔力なしでは本当に役に立たない。

「一方面壊滅確認っと」

 衝撃波が空気を伝って届いたときには、地上では煙と降り注ぐ砂の雨が見える。セイの管制下にある部隊が消し飛んだ、呆然と飛んでいるセイに向かって言うことはない。下で戦う連中とは違って、上の管制者たちは敵の欺瞞を見破り的確に勝利への指揮を執ることが仕事だ。その指揮で勝利を掴み取ろうと、はたまた全滅させてしまっても、ただそれに対して思うのは「その程度実力?」という軽い物だ。

『アイズよりレイア、ブレイクブレイク!』

「えっ、どこっ」

 索敵範囲内には向かってくる脅威はない。目視で、ぐるりと見回すが何もない。だったら疑うべきはアイズの索敵機能だ。管制下の部隊もありもしない脅威から逃れようとしているのか、無駄な動きをしている。

「レイアからアイズ、及び指揮下へ補正データ送信、ジャマーを壊せ」

 途端に動きが変わる。が、すでに遅かった。

「レイアから全部隊員、急速上昇、急げ」

 ジャマーを探知した。だがそんなものは最初、なかった。だったらなんだ、あれがあった場所には召喚術が埋められていなかったか。

 砂の中から、炎の尾を引いて多数の魔術弾が上昇してくる。こちらの機動限界速度など比ではない、数秒で追い付かれことごとくが撃墜される。飛び散った人体の破片が砂漠に降り注ぐ。

『そんな、全滅って』

「レイアから管制者二名へ、現空域からの離脱を提案」

『私たちだけじゃ無理だしね。こちらセイ、帰投します』

『アイズ……帰投します』

「ミッションアボート、RTB」


 ---


 レイアは空気の薄い高空を巡航。合流地点を目指して飛んでいる。眼下にはセイとアイズが編隊飛行をしていた。なにやら話しているようだが、通信を切っているためなにも聞こえてこない。

 視線を正面へ、夕焼け空が濃紺に押しやられて夜が広がる。ほとんど黒だ、その中に星が瞬く。地上の明かりがないだけで、ここまで夜空が綺麗だったのかと思う。照度を最低にして、自身の周囲に仮想的に投影した計器類へと目を移す。特に異常も無く、風切りの音は何もない、静かだ。

「FCS、RUN」

 両手に抱える〝ライフル〟を下へ向ける。

「自動捕捉モード、シーカーオープン」

 緊急接続の警報が響く。二人は広域警戒モードで飛行していた、当たり前のことだ、いきなり味方からロックされたら文句を言う。

『レイア、なにいきなり!』

「照準補正、クリア」

 引き金に指を掛け、広域警戒レーダーが警告を発する。真下、セイとアイズよりも更に下から。

「詳細不明? なにこいつ」

 二人からロックを外し、しかしレーダー範囲内に捉えたまま接近するものを狙う。舌打ちした、ロックできない、目測で撃った。命中、レーダーから消えるが警告は消えない。

『敵? あ、レイア正面』

 誤解してくれたか。それでも、正面? 何もない。

「後方、2アンノウン、アプローチ」

『2フレンドリー、白騎士』

 違う、二人にはそう見えていても、レイアにはそれが何なのか分からない。

「識別、応答無し、急速接近……アンノウン、先に離脱した二人? 違う、コードが同じ? このアプローチは攻撃……」

 残存魔力を確認。戦闘出力を出したとしても帰るまでの余裕分がある。

「エンゲージ」

 進行方向に反応。見えない、しかしそこに居る。

『レイア正面、敵! 分からないの!?』

 送られてくるデータを見て、修正した。正面、敵を味方に、後方、味方を敵に。

「シーカーオープン」

 体を反転させ、背面飛行に移行して降下しながら円を描いて、ロック。両翼からそれぞれ五発ずつ発射。真下から撃たれた。落とされた。

『何してるの! 気でも狂った?』

 それを最後に、通信を強制遮断。自身の認識した状況で戦域を構築。

「4エネミー1フレンドリー、交戦開始」

 目を閉じてパワーダイブ、追いかけてくる敵二人、後方をロックオンして発射。同時に下から狙って来る敵二人へ向けて射撃。

「回避確認、追撃開始」

 加速しながら降下して、すれ違いざまに全弾リリース、そのまま下まで突き抜けて反転、ライフルを構え回避機動を予測して撃ち抜いた。

『索敵範囲内、敵影は』

「ピクチャークリア」

 見えないそれが迷彩を解除する。スコールの姿が現れた。

「良く当てたな」

「まぐれ……わざとでしょ」

「さてな。キサラ、管制者を回収して帰投」

『りょーかいでーす』


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