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奈落ノ先、深淵二消エル

 真夜中の森の中、そう表現するのが相応しい闇の中をペルソナは進んで行く。何かは分からないが、弱々しい月の光のような明かりを遮る何かが蠢いているのは分かる。辺りには誰も、何の気配もない。気付いたときには追いかけてくる魔物すらいなかった。

 時折ささやくように聞こえる誰かの笑い声。どこから聞こえてくるのか、後ろから聞こえて振り返れば果ての無い暗闇が広がるだけだ。しかしその闇の中からは確実に追いかけてくるナニかがある、逃げるように足を動かし続けた。どこから来てどこに向かっているのか、その道筋は分からない。

 それでも帰るべき場所がある。待っている人が居る。

「……寒い」

 気温が下がってきている。

 一歩を踏み出してザクッと、音はしないが氷のような感触を踏み砕いた。

 闇の中に煌めきが舞う。手を伸ばせば届きそうで、しかしそれは彼方で光る地上への穴。どこかに登っていける場所があるはずだ、あの奈落へと。深淵からさらに下はさすがに無いと思いたい。これ以上は落ちたら上がっていける自信がない。

「……不味い」

 体が警告を発してる。寒さで身体能力が低下している、戦闘行為に支障を来すほどに危険だと。

「嫌だ……帰る、約束が」

 踏み出した足から力が抜け、膝をついた。立ち上がろうと地面に手をついて、力が入らなかった。指の感覚が無くて、顔の前で動かそうとしたら動かなかった。そのまま顔に触れたら氷のような感触。

 おかしい、自分はまだ動いている。でも音が聞こえない。闇の中でも分かるほど視界が霞んでいた。

「まだ……嫌だ……」

 膝をついた姿勢のまま動けなくなって、意識が消えていく。

 最後に頭の中に浮かんだのは〝神殿〟でスコールと戦った時のこと。一緒に戦いたかった、それでも命令されたから、禁じ手だと分かっていて逆らえなかった。

 このままではまた同じ事を繰り返す。

「嫌だ……こんなの」

 体が凍っていた。

 もう動けない。

 終わりだ。


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