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ナインテイルス ~異世界九尾語り~  作者: クルマキ
五章 その手を取って君の名を呼ぶ
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最北の街

-1-


門の前には外壁に沿って仮設の住居らしい物がいくつも並んでいた、早朝だからか人はほとんどいない、大きな寸胴鍋で料理を作っているのが目についたぐらい、近くの村から避難してきた人達なんだろうけど表情から暗い様子は見えずむしろ明るく感じる。


「着きましたよ」


一応声を掛けてみても頭からシーツを被ったまま反応がない、無理やり起こすのでもいいけどわざわざトライクを止めてまでやるのは面倒に感じた、別に何か問題がある訳じゃない、このままでもいいか。


ここがクルクスの南大門、巨大な外壁とそれに見合う巨大な門、ほとんどの人はこの門から中に入る、東と西がそれ以外、北は開拓域、通るのは二十年ぶり。


速度を落としながら門の横の受付まで乗り付ける、手続きに必要な物の準備は昨日のうちに済ませてある。


「クルクスにようこそ、避難民か?」


「いえ、魔物の卸し先を探してまして、何日か滞在する予定ですが……何かあったんですか?」


「まだ何かあった訳じゃない、嵐の兆候と魔物の活動が活発になっているのが重なった結果だ、宿は決まっているか?決まっていないなら希望にあった宿をこちらで紹介しよう」


「じゃあお願いします」


世間話を手短に済ませると受付の下から紙を取り出し私に差し出す、希望要件のチェックリストみたいだ。


項目としては大きく四つ、値段と食事と部屋と風呂、色々細かい所まであるみたいだけどこれといった要望は別にない。


出来れば安上がりで食事は無くてもよくて部屋もそこそこで良くて、シャワーは……まぁ欲しいか。


手早くリストに印をつけ、最後に備考欄があったから近くにトライクを停めておける場所希望と書いて受付に返す。


他の街でも似たような事をやってるのを何度も見てきた、紹介状があると安く泊まれたりサービスが少し良くなったりする。


リストに目を通すと慣れているのかすぐに


「この道を真っ直ぐ行った所に観光客向けの宿がある、そこで構わないなら紹介状を書こう」


「ではそこをお願いします」


「荷物はそこに、武器等があるならそれもそこに」


「これは試験品です、書類はこれで」


宿絡みのやり取りを終えた後、ディブニハールでやったのと同じように荷物を指定された場所に置く。


予め受け取っておいたビバさんの指輪と自分の分の試験品、それから書類をまとめて受付に置く。


一瞬面倒くさそうな顔をすると渋々といった様子で書類に目を通し始めた。


そのまましばらく書類と試験品とを見比べ、最後の書類を読み始めて少しして不意に私の後ろ……ビバさんの方に目線を向けた、目線からは軽蔑のような物を感じる。


「何か?」


「何も、不審物無し、通行を許可する」


「……どうも」


乱暴に試験品の塊と書類、それから紹介状とを押して返してきた、さっさと行こう。


目線の理由は察しがつく、書類の中には当然だけどビバさんの事も書いてある、竜人だからっていうのと、ビバさんの試験品は魔力を使うための補助具みたいな物だ、竜人がそれを使っている、その辺りだろう。


……初めは気にしなくていいと言われた、もう随分経つ、気にしてないって言うと聞こえは悪いけどもう受け入れた。


早朝のクルクスの雰囲気は人通りがほとんど無いのもあってメルヴィアの物とあまり変わらない、他に違う所といえばここからでも見える北側の外壁ぐらい。


荷物を置いたら情報収集の前に一旦シャワーを浴びたい、朝食は……これからの予定を考えながら門を通った時微かに違和感を覚えた、何に対しての違和感なのかははっきりしない。


「で、これからどうする感じ?」


「起きてたんなら反応してくれません?」


「起きたのさっきだし」


「……二度寝しないでくださいね、すぐそこなんで」


小言を言いつつビバさんの試験品を返す。


紹介された宿の対応はまぁマシな方だった、不満はあるけど言ってたらキリがない。


簡素な作りの二人部屋、部屋毎にシャワーとトイレもある、掃除も行き届いているみたいだしなによりすぐ近くに専用の駐車場もある、要望通りだ。


「先にシャワー使いますね」


「うい、ちょっと調べ物しとくよ」


ビバさんの言う調べ物が何なのか分からないけどこの口振りだと後で共有してくれるだろう。



-2-


「それで調べ物って何調べてたんです?」


シャワーと着替えを済ませ、ベッドに座っていたビバさんに話を振る。


「魔力調べてた、ここに来た時に何か変な感じしてさ」


部屋の外に出た訳では無さそうだからこの部屋の中で調べられる事、となるとそういう事に限られるか。


ビバさんがこういう時は間違いなく何かある、少なくとも今まで外した所は見たことがない。


「確かに違和感みたいなのはありましたけど、それでどうだったんですか?」


「シルバもそう感じたんなら間違いないかな、こういうの得意だしね、とりあえず事故とかそういう感じじゃないね、そうだったらもっと分かりやすいから、それに規模もかなり広いみたい、まだ全部調べた訳じゃないけどもしかしたらクルクス全体かも」


「そこまでの規模だと誰か気付きそうですけど」


念のため自分でも確かめてみるが正直あまり分からない、ただ何故か懐かしい感じがした、違和感といえば確かにそうか。


違和感、要するには何かと比べておかしいと感じる事、誰もこの事に気付いていないならその理由は……


「……これ、いつからこの状態になってるんだと思います?」


突然今の状態になったのではなく、誰にも気付かれないように、少しずつ今の状態に変わっていったのだとしたら変化に気付けないとしても無理はない、これが何かの前兆なのだとしたらそんな大掛かりな事をしてまで何をしようとしてる?


「そこなんだよね……どんな影響があるのかは分かんなかったけど、長い間この状態なんだとしたらクルクスの人に何か影響が出てるかもしれないし、本人たちはそれに気付いてないかもしれない、そうだとして目的は……なんだろ、規模が大きすぎて読めないな……とにかく調べてみようか」


そう言うと反動をつけて勢いよくベッドから飛び降り


「の前にー、わったしもー」


「はいはい」


ビバさんがシャワーを浴びてる内に改めて今の状況を確認しておこう。


ビバさんははっきり、私はぼんやり感じた魔力の異変、目的も原因も不明、そんな状態で分かる事はほとんど無い、こういう時はどうすればこうなるのかから逆算していく事になる。


街全体がそうだとすると手口も一気に絞れる。


考えられる手口としては二つ、一つはそれを引き起こす魔法陣や魔具が設置されている場合、ここまでの規模で見つかっていないとなると広範囲にいくつも隠してあれば出来るか、この場合は原因の魔力がそこから出てる訳だから近くまで行けば気付ける、それを見つけられれば犯人の目的も少しは見えてくる筈、問題は数が分からない事、ここまでの規模だ、少なくとも私たちだけで全てを取り除くのはまず不可能だ。


もう一つは街の炉心に何か細工した場合、大元に変化があったなら時間を掛ければ今の状態にする事も出来るだろう、とはいえこの場合は間違いなくバレる、定期点検とかもあるだろうしそもそも警備もいる筈だ、警備が犯人もしくは共犯なら可能と言えば可能か。


考えて分かるのはこんな所。


「とりあえず炉心の近く調べようと思うんだけど、どっか場所知ってる?」


「二十年前の場所で良ければ」


「じゃあ大丈夫だ、とりあえずそこ行ってみよう、何か被った方がいい?」


「隠してるとバレたときに面倒なことになるしれないんでそのままのがいいですよ、それとちゃんと着替え終わってから出て来てください」


「えー」




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