決意を込めて
あれから博覧会の会場を出て晩飯を食べて屋敷に戻ってきた、ラズリアが酔い潰れるまで飲むものかと思っていたけど抑えていたらしい。
本人は『いい加減先輩のお世話になる訳にはいかないっすから!』と意気込んでいたけどその意気込みは今更なところがあると思う、マーチェスに来てからだけでも一度やってる。
「えっと、明日の朝にはクリミナに行くんすよね」
「そうだね、アルティアの冒険者が来る予定だから引継ぎお願い、それからは現場の指示に従ってもらえると」
「……先輩以外の人と一緒にやるの、何か緊張するっすね」
「最初の頃なら駄目だったと思うけど、今のラズリアなら大丈夫だから」
「えっ……えー、えへへ……」
「はい、言いたいこと言ったらさっさと寝る」
「……今日は誘ってくれてありがとうございます、先輩、楽しかったです!」
「私も普段しない事ばっかりで楽しかったよ、あんまり無理しないようにね」
………
……
…
部屋に戻るとラズラさんに頼んでおいた荷物がベッドの横に置いてあった、自分のとティルの荷物の整理は昨日終わらせてる。
念のため荷物を確かめようと思ったけど、荷物の上に頼んだ覚えのない布に包まれた細長い物とそれに添えられていた封筒と書置きが乗っていた。
書置きには
『使用感に変化はない筈、何かあればヴィーヴァルに、空いた鞘は部屋に置いておけ』
と走り書きの字でそう書いてあった、文字が汚くて読むのに少し時間が掛かった。
大きさから察するに棒の方は試験品の鞘で封筒の中身は試験品の証明書だろう、試験品を持ち運ぶ時には必要になる物でメルヴィアでは顔パス、カンネースとマーチェスの時はダレン爺がやってくれていた筈だ、念のため封筒の中身を確認しておくと鞘の分と足環の分の二枚、内容に不備もない。
七日分の食料と水、簡単な野営用の設備、魔動機の点検結果と修理箇所の記録……頼んでいた物も問題なさそうだ。
クリミナの国境までは二日もあれば着く、そこからハーリングまでは一日、後を追うにも限界がある、組合を拠点に情報を集めていく事になるか。
きっと見つけられる、必ず見つける。
そう自分に言い聞かせ続けてもう十二年も経つ、今度はこれまでと違う、そんな気がする。
ティルは……母さんはそこにいるんだろうか?




