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ナインテイルス ~異世界九尾語り~  作者: クルマキ
五章 その手を取って君の名を呼ぶ
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小洒落た魔具を作ろう!

-1-


ぱっと見た限り家族連れが多い印象だ、苦戦している様子の人もいれば慣れた様子で作っている人もいる、部屋の隅には飾りつけに使うだろう小物が固まって置かれている。


「こちらの席にどぞー」


係の人に大きめの作業机?みたいな所に案内された、私が席につくとラズリアも隣に座る。


机の上には製作に使うらしい道具、材料、説明書、それから白紙の紙束とペンが二セットずつ、綺麗に並べられているけど見慣れない物が多い。


「解説とか説明って要ります?」


「いえ、この子二級の免許持ってるので、教えてもらいながらやってみます」


「では、何かあったら係の者まで連絡お願いしますー」


そう言いながらそそくさと席を離れていくと、改めて正面の道具に向き合う。


「専門知識言われても分かんないからよろしく」


「案外雰囲気で分かるっすから大丈夫っすよ!」


私に教える側になるからか張り切ってるように見える、一先ずは説明書を手に取りざっと目を通しておく。


説明書に載っている写真を見るにランプが作れるようだ、見た目の自由度がかなり高いみたいで簡素な物から手の込んだお洒落な物まで色々載っている。


説明書に書かれてるのは大きく分けて明かりの部分と外装部分について説明、ほとんどは明かりの作り方だ、どう線を引くかとか、魔法陣をどう並べていくかとか、明かりに使う形状ごとに書かれている。


「大体はそこに書いてある通りなんすけど、まずは明かりの所に魔動線ってのを引いてそれに沿って魔法陣を足していくって感じっすね、ちょっとややこしいんすけどこういう小さいのも魔法陣なんすよ」


「呼び方もうちょっと何とかならなかったの?」


「まぁ、魔法陣って魔法的に意味のある形って括りしかないんで……先にどんなのを作るか書きます?」


紙とペンを手に取り私に差し出す。


「あぁ、この紙はそういう、ある程度想像出来てるけどやっぱりあった方がいい?」


「迷走しない用なんで別に無くてもって感じっすね、決まってるんなら作っちゃいましょうか、先に魔動線引いちゃいましょう、これが魔法陣を彫るのに使う刻印棒っす、先の違うのが何個かあると思うんすけど今使うのは平べったい奴っすね、ここは説明書通りに線引くだけで大丈夫っす」


使う予定の円柱状の明かりの上下と中央に一周するように三ヶ所線を引き、次にその線と交わる縦の線を真っ直ぐ引く、表面に薄くそれらしい線がついてるのが見えるけど彫られているようには見えない。


「まだ下書きって感じだけど」


「ちゃんと彫り込むまではやり直せるっすよ、一応この状態でも魔法陣としては機能するんすけど確認用って感じで長持ちはしないっすね、で、今度はこれを判子みたいな感じで線の上から押してって下さい、組み合わせで光り方とか変えられるっすよ、その辺の細かいのは説明書見た方が分かりやすいかもっす、あ、線が交わってる所は別の奴押すんで押さないようにしてください」


光り方、要するにはランプで一番大事な所だ、説明書に書かれてる魔法陣の組み合わせ方の一覧を眺めてるけど光の色と光の強さの度合いが文字でしか書いてないからイメージが掴みづらい、何となくは分かるけどあくまで何となくだ。


「これぐらいのにしようと思うんだけど、どれか分かる?」


説明するために手のひらの上にイメージしている光を浮かべる、明るすぎず目が痛くならない程度の白い光。


「それだと……これが近いと思うっす、文字だけだとやっぱり分かりにくいっすよね、実際の写真でも載せてくれてたらいいんすけど」


ぱらぱらと説明書をめくり、すぐにそれらしい物を指差すとラズリアもそう思っていたのかそう漏らす、何となく企画者側からの調節に苦労してほしいみたいな意図を感じないでもない。


「の割には近いのがすぐに分かったみたいだけど」


「直感というか、どれがどのぐらいの奴かは何となくで分かるっすよ」


「へー」


単に経験の違いか、適当に相槌で話を流しておきながらラズリアに教えて貰った組み合わせで魔法陣を彫り込んでいく。


「……そう言えばだけど、前明かりを改造した時ってあれ結構凄いことしてた?」


ぽつぽつと線に沿って魔法陣を彫っていてふと思い出した。


今こうやって魔具を作れてるのは専用の道具や説明書、ラズリアの解説があるからだ、それ無しでやっていたと考えるとなかなかの技術や知識が必要な筈。


魔具検定の二級を持っているから、とはいえそこまで出来るのは流石に凄いんじゃないかと、そう思って聞いてみたけど返事はない。


不自然に思って顔を向けると、にやけないように頑張ってるけどそれでも少しにやけが漏れてる、言い終えてからそういえばこうなるんだった、って気付いた。


「いい加減慣れなって」


「え、いやぁ、だって褒められたら嬉しいじゃないっすかぁ」


照れ照れとわざとらしく間延びした声でそう言う、褒められたら嬉しいのはそれはそうだけど、一度話題を変えようか。


「晩御飯何食べたいとかある?奢るけど」


「……奢ってもらってる身で言うのもあれっすけど先輩いつも奢ってくれてません?」


「後輩に払わせるのもね、奢りって言われたら気が楽だし嬉しいし、で、ご希望は?」


「えー、そう言われると悩んじゃうっすね」



-2-


「じゃあ、ちゃんと明かりがつくか確認っすね」


分からない所やふと疑問に思った事をラズリアに聞きつつ、何とか魔法陣を彫り終えた、細々とした作業で言ってしまえばかなり地味な作業だったけどその割には意外と楽しめた。


「直接でも大丈夫?それとも何か器具とか必要な奴?」


「直接やるのでも魔法陣が機能してるかの確認は出来るんすけど、それだと魔動線がちゃんと繋がってるか分からないんで、今回はこれ使います」


そういって手にしたのは何かを調整するための小さい摘まみがついた棒、自分の分を手にとって眺めるけど見慣れない道具で使い方が想像出来ない。


「魔力の流れを確認したり流量を絞る時に使う魔具なんすけど、こっちの方が実際使った時にどんな感じになるか分かりやすいんすよ、こんな感じで」


試しにと言った具合にラズリアがその棒の先を明かりの下の方に触れさせると縦に引いた線が縁取られてはっきりと見えるようになっていく、それが上に向かって伸びていき、横の線と交わると明かり全体がぼんやりと光始めた。


横の線を越える度に光が強くなっていき、三本目と交わるとさっき見せた光と同じ程度に光り始めた。


「大丈夫そうっすね、後は刻印したら明かりの部分は完成っす、次は……配線先に作った方がいいっすかね」


そう言って今度は細長い管と手のひらに収まる大きさの四角い箱を手元に寄せた。


「こっちの管が導管で、こっちの四角いのが貯蔵機っすね、導管の端を貯蔵機に噛ませて明かりに繋げたら配線は終わりっす、明かりと繋げるのは最後にした方が長さの調整とかはしやすいっすかね」


「簡単すぎると何か不安になるんだけど」


「大事なところはもう作り終わった後っすからね、こんなもんっすよ」


作り終わった明かりの配線一式を邪魔にならないように端に寄せ、今度は半透明の……土?みたいな物が入った箱を手元に寄せた。


「これ不完全霊鉄って言うんすけど、この状態だと粘土みたいな感じで好きな形に出来るんすよ」


粘土みたいとは言っていたけど触ってもべたつかない、触り心地はすべすべしていて少し弾力がある。


「後で固まる感じの奴ね」


「そうっすね、作るときなんすけど、先に明かりの配線置く所から作った方がいいっすよ、見映え的にかなり邪魔なんで、それから色付けたいところにはこれ塗ってください」


凝った作りにするのもそれはそれで面白そうだけど、初心者がやるべきではないだろう、最低限とまでは行かないけど簡素な作りの物、自分の力量に見合った程度には凝ってみようか、一先ずは塊から拳程の大きさに千切って薄く伸ばして土台の部分を作ろう、イメージとしては底の深い皿を裏返したのを作る感じで、貯蔵機はその内側に貼り付けてそこから……。


集中してると黙々と作業してしまっていた、邪魔しないように気を使ってくれたのか説明することが無くなったからか、ラズリアも自分の作業に集中していたみたいだ。


「ふぅ……」


そんなこんなでようやくそれらしい物が出来上がった、我ながら初めての割には出来てる方だと思う、自分の力量だとこれが限界だろうというのもある、少しずんぐりとした印象があるけど、まぁ使う分には問題ないだろう。


「あ、出来上がった感じっすか?」


「初めてやったけど結構楽しいね、ラズリアのは?」


自分の作業に集中していたのもあってそこはあまり見ていなかった。


「結構良い感じに出来たとは思うんすけど」


シンプルな作りのランタンみたいな形だ、シンプルとは言ったけど細かい所のデザインが凝っていて素人目に見ても店で売っていてもおかしくないような出来だと思う。


「洒落てる」


「えへへ、そうっすか?じゃあ最後に固定化しましょうか、見てて気持ちいいっすよ」


そういって今度はこの机の上で一番大きい、扉のついた円筒に箱を乗せたような形の器具に手を付けた、円筒の部分は半透明になっていて中に皿みたいなのが入っていて箱の部分には色々操作できそうな物がある、そこに操作に必要な手順が書かれた紙が貼りつけられている。


「この中に入れて……まぁ書かれてる通りに操作するだけっすね」


言われるまま作ったランプの外装を中に入れ、順番にボタンを操作すると筒の中が薄緑色に光り始めた、少し経つと元々半透明だった外装が水が凍っていくみたいに少しずつ内側から色づいていく。


「これ他のボタンは?」


「中に入れる材料毎に魔力変えるのと、魔力抜く用のボタンっすね、この状態からさっきの粘土みたいな状態に戻せたりもするっすよ」


「へー」


聞いた理由は時間つぶし、生返事で返すと丁度終わったらしい。


中を取り出しランプの笠の部分を爪で軽く叩くと、コン、と硬さのある音が返ってきた。


「……さっきの魔力形成だっけ?とは違うんだよね?」


傍目に見ると違いが分からない、触った感じでは魔力形成で作ったコップより少し硬いか。


「あれは魔力そのものを固めて形にしてるんで霊鉄使ってないんすよ、確か去年の交流会で優秀賞取ってたっすよ」


「へー、今までそういうの無かったんだ」


魔法で同じような事が出来る人はいるだろう、長持ちするかはともかく私もやろうと思えば出来る自信はある。


「さっきも言ったっすけど、魔法を魔具に落とし込むのってほんとに大変なんすよ、そもそも魔法自体が原理も何もあったもんじゃないって言うか……」


急に声のトーンを落として愚痴る雰囲気になってきたからそれを無視して説明書の次の段取りを確認する、もうそろそろ終わりらしい。


「最後に明かり取り付けたら終わり?」


「……そっすね、受付に持っていったら縮小梱包してくれるみたいっすよ」


気を取り直して、という程でも無いけどすぐに切り替えて受付の方を指差す。


「一回それで鞄破裂させた事ある」


「……ぶはっ」


状況を想像するような間の後堪えきれなかったのか噴き出した。

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