表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナインテイルス ~異世界九尾語り~  作者: クルマキ
二章 私たちの選択
22/102

昔とこれからと

-1-


「今日は重大発表があります、なんと!家族が増えます!」


いきなりそう言われて何がなんだか分からなかった。


母さんの妹が亡くなったらしい、それでそこの子を預かることになったみたいだ。


「シルバもお姉ちゃんだねー、女の子だから姉妹だねー」


「なんでそんなにやにやしてるの?」


「なんでもなーい」


いきなりのことで色々分からなかったけど、私がお姉ちゃんになるみたいだ。


お姉ちゃんが何をすればいいのか分からないけど、上手くやれるか心配だ。


「それとね、メルヴィアの方に引っ越すことになるんだけど」


「ん、分かった」


「聞き分け良いのはシルバの良いところだと思うけど、もう少し驚いて欲しいなー」


楽しそうに頭を撫でられるのは嫌いではなかった。




初めて見たとき、白い肌と赤い目がとても綺麗だと思った。


どこか普通の人とは違うような、そんな印象だった。


「名前はメイって言うんだって」


「えっと、お姉ちゃんになります、シルヴァーグです」


母さんに抱かれているメイに頭を下げるとそれがおかしかったのか、母さんが笑い出し


「そうそう、お姉ちゃんね、じゃあ抱っこしてみる?」


上手いやり方が分からなくてぎこちない抱っこをしてしまった。


母さんに教えられながらきちんと抱っこし直すとメイが私を見て笑ったような気がした。




少し遅い時間になって扉の開く音が聞こえた。


母さんが帰ってくるまで起きているつもりだったから、お互いうとうとしていたが音が聞こえてくるとお互い顔を見合わせ、メイが嬉しそうな笑みを浮かべて玄関へ走り出す。


「おかえり」


「おかえり!」


母さんがいなくて少し寂しかったけど、それはメイも一緒だ。


私はお姉ちゃんだから、私が寂しがったらダメだ。


私に心配掛けないように無理をしていたように見えたから私が弱いところを見せちゃダメだ。


「二人とも、ちょっといい?」


帰ってきた母さんは疲れた様子でしゃがみこみ私たちと目線を合わせるとそう言った。


「やらなきゃいけない事が残ってて、また行かなくちゃいけないの」


「……また、お留守番?」


メイが不安げに母さんを見上げると頭を優しく撫でる。


「うん、だから寂しくなくなるおまじない」


そう言って私たち二人を昨日とは違って優しく抱き締めた。



-2-


ぼんやりとした意識がはっきりとしてくる。


「意思を歪めたようとしたのか?洗脳、催眠、暗示……何にしてもなかなか思いきった事をするな、お前の妹は」


真っ黒い空間の中で見覚えのある女性が球のような物を手の上で弾ませながらそう言う。


楽しいと呆れが混ざったような、そんな声音だった。


「自己防衛のつもりだったんだがな、結果的に助けることになったらしい、助けたついでに頼みたいんだが、あれと一緒にいてやってくれないか、あんなだが楽しんでいるみたいでな、もう少し見ていたくなった」


そう言うとまた意識がぼんやりしてくる。


「それと、ちゃんと話し合えよ、そうでなくてはきっと繰り返すぞ」



-3-


目が覚めた。昨日の夜のことがはっきり思い出せない。時計を見れば昼を過ぎているみたいだ。


体を起こし、深く息を吐く。床でよかったのにベッドに寝かせてくれたのは有り難いが、メイがどこで寝たのか少し気になった。部屋を見渡してみてもメイは見当たらない。


しかし、あれだけ酒を飲んだのに二日酔いのような感じはない、メイが何かしてくれたんだろうか。


ベッドから下り、机の上を見てみると書き置きが一つ。


「もう大丈夫だから仕事に行ってくるね、冷蔵庫の中は適当に使っていいよ」


とりあえず昼飯の後は組合に行って……と、そこまで考えてから部屋の鍵が無いのに気付いた。


ラズリアにはもうしばらくティルの面倒を見てもらうことになりそうだ、明日もラズリアを頼ることになるだろうから、その時に謝ろう。


メイが事情を説明してくれていると助かるが、どうだろう。帰ってきたら聞いてみよう。


改めて部屋を見渡してみると少し散らかっているし洗い物もそのままだ。面倒をかけた代わりにはならないがどうせ出掛けられないし掃除は私の仕事だろう。


昨日からずっと気になっていたけどベッドの下の物を整理したい。


まずは昨日の残りで昼飯、次に洗い物を片付けて、それから部屋の掃除にしよう。


それが終わったら……ラズリアから借りた本でも読んでおこうか。



ベッドの前に座り、下に突っ込まれているものを一つ一つ引っ張り出し並べていく。


読み終わったらしい本が数冊、ぐしゃぐしゃに丸められたシーツ、脱ぎ散らかしていただろう服が何枚か、の下に紙が一枚。


「……刻紙?」


何故その刻紙から私の魔力を感じるのか、最初分からなかった。


中を見てみると見知った内容、私がラズリアに念のため持たせた報告書だ。


多分、ラズリアにエンブレムを渡しに行ったときに見つけたんだろう。


メイにだけは知られたくなかった。知らないまま事が進むならそれが一番だと思っていた。


次に会ったとき、何を話せばいいのか分からなくなった。


ごめんと謝ればいいのか、昨日みたいに仕事の愚痴とか世間話でもすればいいのか。


昨日メイがこのことを隠していた理由が分からない。


もしも、私がこのことを言い出さなかったら、メイはこのことを抱え込んだまま過ごすのだろうか。


「どうしたら……」


呟いても何も分からない。このままうやむやにするのは良くないように思った。


でも、ちゃんと話したとして、それからどうすればいいのか分からなかった。


考えても仕方ないことは無いだろうけど、どれだけ考えても答えが出てくる感じがしない。


……本でも読もう。


-4- 


報告


緊急時のため体裁を整えず箇条書きとする。


サピの森で異常な魔力を確認、原因は不明、それに伴ってかガルムが森の浅い所にまで出てきているため警戒の必要有り。


ガルムに襲われていた獣人の少女を保護、名前、出身不明、捜索届け等の照合願う。


調査中、きこりらしいミノタウロスの男と交戦、動機は不明、名前を名乗る直前まで友好的に接していたが名前を名乗ると同時に豹変、それと同時に前述の魔力が男から発せられているのを確認。


停戦を要求するも応じず、この男を放置するのは危険であると判断し殺害を実行するも失敗。


男は目視した魔法を使用できる可能性が高いため、交戦の際は魔法の使用を控えること。


立体魔方陣による物と同程度の治癒、魔力による加速、極めて高い強度の防壁、魔力を固めて放つ、等を使用。


殺害の際には治療されうるため一撃で仕留める必要有り。


尚、本報告書の伝達はシルヴァーグ・フラットワーズが死亡しているものとする。


以上

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ