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ナインテイルス ~異世界九尾語り~  作者: クルマキ
二章 私たちの選択
20/102

迷子二人と

-1-



流石に二度目となると慣れたのか話しかけられても普段通りに対応していた。


どこから来たとか、仕事の方はどうだとか、初めての時からは想像できないほど受け答えが滑らかだった。


今は買い物を済ませ、ラズリアに手を引かれながら昨日の店を目指して歩いている。


「何かしたいことあるんすか?」


「魔法のこと聞きたい」


それなりに見識を得たなら聞くこともあるだろうし理解も深まるだろう。出来ることならメイにそのまま話を聞いておきたかったが仕方ない。


大通りを外れ細い道に入ったからかあまり人気はない。


店先に看板が出ていたはずだからそれを見落とさないよう辺りに視線を向けながら歩いているのだがしばらく歩いても見当たらない。


「確かこの辺り……」


段々と歩調が焦りを伴ってきていて私を引く手が少し強く握られる。


「この辺り……」


細い道から細い道を通り、入り組んだ道をしばらく歩く。通った覚えのない知らない道だ。


「……」


次第に口数も減っていき、不意に立ち止まると辺りを見渡す。


探しているうちに随分と歩いたように思う。いい加減歩き疲れた。


「えーっと……」


困ったように頬を掻くと私の方に顔を向ける。どう伝えようか困ったような表情だ。


敢えて言わなかったが、言えないなら言ってやろう。


「迷った?」


「……はい」


観念したように肩を落とし、落ち込んだ声を出した。どうしようか。


来た道を戻れば、とも思ったが特に考えずに歩いていたからどうやってここまで来たのか正直覚えていない。


大通りまで出られれば道も分かりやすいのだがそこに向かうまでの道が分からない。


誰か手近な者に道を聞くのが手っ取り早いか、人影を探してみると丁度近くに二人組が何か話している。


人間らしい男と緑色の肌と尖った耳をした私より少し大きいぐらいの……何だろう、形容しがたい、少なくとも人型だ。


他に人も見当たらないしあいつらに聞くしかないだろう。


手を離し一人で聞きに行こうとするとラズリアが私の前に先回りししゃがみこんだ。


「どう見ても先輩の言ってた荒れてる人達じゃないっすか!聞くにしても他の人にするっすよ!」


相手に聞こえないよう小声ながら語気を強く言ってくる。基準は分からないがあれは荒れてるらしい。


他の人、と言われたが近くに他の人は見当たらない。まずは誰かを探すことからか。


またしばらく歩くことになりそうだと思っていたが、不意に前にいる男から声をかけられた。


「そこのかーのじょ、どうかした?」


柔らかい物腰ながら茶化した様子でそう言うとこっちへ歩いてくる。演技にしては下手糞だ。


絡まれると思っていなかったのか、ラズリアは慌てた様子で顔をそちらに向け見上げる。


「えっ、と、大丈夫です」


「いやいや、こんな所に女の子二人だけって大丈夫じゃないでしょ」


「大丈夫っす」


何とか言葉を捻りだし二度否定すると私の手を引き足早にこの場を去ろうとしたのだが、いつの間にか緑色のが道を遮る様に回り込んでいた。


そのまま進むわけにも行かず、足を止める。


「人の好意を無碍にするってのは感心しねぇなぁ?こっちはあんた達のことを心配してやってんだぜぇ?」


わざとらしくそう言うと、下劣な笑みを浮かべている。


「そそ、っつーわけで一緒に来てもらおっか、二人揃って痛い目には遭いたくないでしょ?」


後ろから伸ばされた手を払い除けると、体を壁際に寄せ二人を視界から外さないように立ち位置を変えた。


お互いの間に張り詰めたような空気が流れるのを感じる。


「大人しくしてたらよかったのに」


「……大丈夫っすから」


私を励ますために言ったのだろうが、無理をしているのが分かる。


しかしどうしたものか、悩んでいても今の私に出来ることはたかが知れているのだが。


その睨み合いがもう少し続くかと思った時、不意に聞き覚えのある声が路地に響いた。


「何をしているのかな」



-2-


以前聞いた騒々しい声でも落ち着いた声でも無い、冷たい声が狭い路地に響く。


ここにいる全員の視線が向けられる。私たちが来たほうの道、緑色のがいる後ろの方から一人の耳長の女、ロナが歩いてきている。


「なんでもねぇよぉ?なぁ?」


「その通り、なんでもないですよ」


「質問に答えてくれるかな、他所の人がこんなところで何してるのかな」


相手の言い分は聞かず、歩みを進めながら重ねてそう言うと男はわざとらしく溜息を吐き、懐から短剣を取り出すと私たちに切っ先を向け


「あぎゃ」


「それ以上うげぁ!」


何かを言おうとした瞬間、風を切る音が聞こえ、続いて鈍い音が同時に二つ、そして男二人の呻き声がほぼ同時に聞こえ、二人が倒れる音が聞こえた。


ほんの一瞬のことで状況が理解できなかったが、何かが目の前を通っていったような感じがした。


「アルに後で言っておかないとなぁ」


ぼやくようにそう呟いたのが聞こえ、顔を向けてみると


「大丈夫?怪我してない?こんなところで会うとは思ってなかったよ、奇遇だね!」


いつの間にかさっき居た場所とは反対側にいる。元通りの騒がしい様子でそう言った。


さっきまでの張り詰めていた空気が失せた。


「え、あれ?」


状況がよくわかってないのはラズリアも一緒だったらしく、警戒を解き困惑したような声を漏らす。


「あ、ありがとうございます」


状況が整理できてないなりに一先ず礼を言うことにしたらしく深々と頭を下げた。


「うむうむ、聞きたいことはいくつかあるけどまぁ後でいいや!ちょっと衛兵さん連れてくるからここで待っててね!」


「あ、あの」


ラズリアが呼び止める間もなく、そのまま走り去っていった。待っていろ、と言われた以上大人しく待っているべきだろう。


ロナの姿が見えなくなるとラズリアがしゃがみ込み


「……さっきの人ってティルの知り合いっすか?」


疲れた様子でそう聞いてきたので小さく頷くと溜息を吐いた、状況が状況だっただけに心労的なものが溜まったのだろうか。


そのやり取りを終えると萎んだ様子でぼんやりとその辺りを眺めていた。


何にしてもロナが戻ってくるまで待つしかないか。


-3-


しばらく待つと衛兵らしいのを三人連れてきたロナが戻ってきた。


倒れている二人を衛兵に運ばせると一段落着いた様子で一度手を叩き


「さて!じゃあ、まずは自己紹介!私の事はロナでいいよ、君の名前は?」


「えっと、ラズリアっす、さっきはありがとうございました!」


ラズリアも名乗り返すと深々と頭を下げた。


「じゃあラズでいいかな、ティルと一緒ってことはシルバに急用でも出来た?」


「あ、ロナさんって先輩の知り合いだったんすね、昨日急な仕事が出来たらしいっすよ」


「先輩、ってことはシルバの後輩か!なんでこんなとこに?」


「……迷子っす、マグダレン魔具店ってどこにあるか知らないっすか?そこ探してたら迷っちゃったんすけど……」


ラズリアは困った様子でそう言う。


「ダレンの店?今日休みだったはずだけど、折角だしそこまで案内しようじゃあないか!着いてきてね!」


騒がしくそう言うと自分勝手に歩き始めた。


「……今日お店休みだったんすね、案内してもらったら帰るのでいいっすか?」


「わかった」


ラズリアに手を引かれてロナの後ろを着いていくのだが、通る道は私たちが通ってきた道ばかりだ。


そうやって何度か道を曲がり、少し歩いたところでロナが足を止め、扉に背を向ける。


確かラズリアが最初にこの辺り、と言っていた場所のように思う。


「あ、あれ?ここっすか?」


「うん、普段は看板出てるんだけど休みの日は看板出してないから気を付けてね!」


「あー……はい、ありがとうございます」


看板を見落としていたわけではなく、そもそも出ていなかったようだ。


さっきまでのが徒労に終わったからだろうか、一気に疲れが来た様子でそう言う。


無駄に歩き回ったせいで今日は疲れた。帰ったら適当な本でも読もう。


「今度は迷子にならないようにね!じゃあ私は用事があるから!」


軽く手を振ると走り去っていった。


ラズリアが軽く手を振り返し、ロナの姿が見えなくなったところで再度溜息。


「じゃあ、帰るっすかね……」


流石に今のラズリアに運んでもらうようせがむのは酷なように思う、自分で歩くか。


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