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24、タンホイザーゲート

 意識が瞬間的に飛んだ。

 まるで、頭から脳をすっぽり抜き取られたように、記憶がない。


 クロトが気付いた時には、取り囲む浮遊島は、元のブロトケラトプスに戻り、モルタは髪は輝く青から、落ち着いた黒に変わっていた。


 現実を超えた出来事が多すぎて、自分が現実に生きてる実感が薄れて来る。


 クロトはブロトケラトプスの石像に、目を落とし、呟くように聞く。


「いつ起きるの…………その戦争」


「もう備えは出来ておる」


 その答えに少年は凍りつく。

 モルタは続ける。


「戦を起こさせぬ為、先達せんだって、ディキマのヤツとやりあったが、町1つを溶かす結果になった」


「町を溶かした? ま、まさか、ポイントブレザントは、君とディキマの戦いで溶けたのか!?」


 今度はモルタが驚く。


「なんと? 海の向こうで起きたことも知っておるのか? 現世はそこまで文明が進んだのか…………さよう。主も知った、海の向こうの出来事はワシとディキマの戦いによるものだ」


「ウ、ウソだろ……」


「少し違うのが、あの町は、たまたま別次元と通ずる門だ」


「門? また訳わかんないのが出て来た」


「主らの住む星は球体ではない。ジャガイモのように、山とへこみがある」


「地球が、ジャガイモ?」


「住む世界がジャガイモのようなら、その場所に働く重力も、ジャガイモのように出来ておる。ポイントブレザントと呼ばれる、あの場所は、パースが集中している場所だった」


「えーと、釣りで言う。爆釣ばくちょうポイントみたいなもの?」


 モルタの真っ白で平らな眉間にシワがよる。


「現世の言葉は解りにくいのぉ。おそらく、その解釈で良い。弦の集中が異次元の引く力を強くし、局所的な重力は、空間に穴を開け、門のようになっおる」


「門? てことは、地球と異次元を繋ぐトンネルみたいな感じ?」


「うむ。異次元との繋がりがあるため、あの場所では怪異なことが起きていたのじゃ」


「じゃぁ、モスマンやUFO、スレンダーマンも異次元人なの?」


「古来より、魑魅魍魎、妖怪変幻の類いは、この門を通じて現世に来ておる」


「妖怪…………」


 クロトは、目の前で青き髪を輝かせる少女を、改めて見て、少し抵抗を示す。


「君は…………平気なのか? 大勢の人を殺して」


「ワシら無限の時を生きるドミネーターにとって、人の寿命は一瞬。瞬きしている間に、人は天寿を全うする」


「ま、待ってよ! ただ死ぬのと殺すのとでは、全然違うだろ?」


「さっき申したはずじゃ、長い時を流転しておれば、いずれ同じ姿、同じ心で転生が起きる」


「それは君達の話だろ!? 僕ら人間は、死んだら終わりなんだ!!」


 クロトは甲高い声で反論するが、モルタにはその熱量が伝わらない。


「主の申し立ては解る。だが人は地を這うアリに気を使い、道を歩くのか?」


「それとこれとは話が違う!」


「何が違う? 今の押し問答で、主も人とアリの命に優劣を付けたではないか?」


 クロトは咄嗟に切り返しが出来なくなる。

 モルタは攻め立てるように聞いた。


「主ら人は、自らの命をつなぎとめる為に、植物の息吹を摘み取り、鳥や牛の肉を食らう」


「た、食べないと死んじゃうし……」


「そう、生きる為のことなら、いた仕方ない。じゃが、道楽で生き物を狩るではないか? 魚を釣り、山の鹿を殺しては剥製にする」


 もはや、クロトに反論する材料は無い。


 女神と自称しながら、放つ言葉に慈悲が感じられない。

 彼女は冷たく言い切る。


「人は同じ人の命すら、もて遊び、生きる為に他者の命を切り捨てる…………生命倫理など、人が自分可愛さに定めたにすぎん」

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