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22、星の弦

 神の目線から観察するクロトは、ついさっきまで、真紅の悪女ディキマに腕を溶かされたことを思い出し戦慄を覚える。


「ぼ、僕。ディキマにパースを切られて、腕が溶けた。あのままほっとかれてたら、僕もこんな風に……」

 

「それは、あやつの悪戯じゃ。ディキマが、主の命を奪うことはせん」


「何で、そう言い切れるのさ?」


 疑うような眼差しでモルタを見ると、彼女自然に話す。


「それは主が、この世界を造った神だからじゃ」

 

 少年は、その言葉が飲み込めず動揺する。


 彼女が浮遊島の上に手をかざし、手を上段へ引き上げると、無数の線で繋がった浮遊島の表面が水飴のように引き伸ばされ、みるみると、島の地表にビルやマンションが芽吹いたように生え、人工的な生活圏を構築した。


 モルタは神妙な顔付きで補足する。


「この世界は、原子の結び付きや粒子の流れが支配しておる。原子粒子は役目を終えると、自然と崩壊を起こし消滅する」


 モルタは目の前の浮遊島を、パースの線で操演し

マリオネットのように動かすと、浮遊島から指の大きさの人々が、忙しそうに徘徊する。


「現世は億千万もの結び付きが溢れておる。同じ人間がこの世にいないように、同じ原子粒子の結び付きはない」


 1人の小指大の人間が、車に引かれ倒れ込む。

 クロトはその様子を見て息を飲んだ。

 引かれた事故現場に、わらわらと、虫の群れのように人が集まり囲む。

 クロトは、この悲劇を演出した青髪の女神へ、目線をズラして様子を伺う。


 モルタは硝子のように冷たい表情で、尚も話を続ける。


「しかし、主らが知る限り宇宙は無限じゃ。過去に存在した原子粒子の結び付きが、再び起こりえるのじゃ」


「再び?」クロトには、とても気がかりなキーワードに思えた。


「うむ、例えるなら不老不死の人間が、百のサイロコを投げ、全てゾロ目の1を出したとする。果たして、同じ目がもう一度出せると思うか?」


「不老不死でも無理だよ」


 クロトが愚問だとばかりに切り返すと、モルタはさも平然と返す。


いな、百のゾロ目は出せる」


「はぁ!?」


「宇宙の時間も無限なら何億年……いや、兆、京、垓。さらに先の那由多なゆた年かけて、百のサイコロを振り直し、もう一度、ゾロ目の1を出すこは可能」


「そこまでサイコロ振って、ゾロ目の1を出す必要あるの?」


「そのゾロ目の1を出すことで、二度と手に入らない物が得られるなら、どうじゃ?」


 その問に、クロトは言葉を詰まらせる。

 クロトにとって、過去に無くし二度と手に入らないモノに心当たりがあった。


 モルタが言う、百のサイコロを振って、ゾロ目の1を出した特典が"死んだ人間を蘇らせる"ことだったら。

 何回でも振るかもしれない――――――――。


 あまりにも次元を超えた解説に、クロトには脳神経が絡まり痙攣している錯覚を覚える。


 クロトはシンプルな疑問を投げた。


「どうして僕は、力が使えるになったの?」


 モルタの透き通った、アクアマリンのような瞳が、こちらに向けられる。


「弦。つまりパースを知ったからじゃ」


「知った?」


「道具は使い方を知るまで、それが何なのかは解らない」


 近々で思い当たる節が、少年にはあった。


「あ! 専門学校で、パースの授業を受けたから、線の使い方が解るようになった。てこと?」


「さよう。しかし、根本はそこではない。主の中に眠る、ドミネーターが目覚めようとしておる」


「僕の中にドミネーターがいる?」

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