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20、ゲシュタルト悶絶

 遠い目をした少年に、美神モルタは、ことさら思い出しように聞く。


「そうじゃ、主の名を聞いておらぬ」


「あぁ、そういえば」


「主の名は?」


「クロト……那由多なゆた・クロト」


「ほう? クロトも女神の名じゃのう? 広大な世界を意味する那由多に、女神の名。これも運命かの……」


 モルタは聖母のような優しい顔で、考え深く言った後に付け足す。


「うむ、ではワシは、馴染みのあるクロトと呼ぼう」


 しばらくして、消防車や救急車のサイレンがひっきりなしに通り、近隣住人も騒ぎ始めた。


 しかし、それよりも、身を潜めるクロトには、聞きたいことが山のようある。


 人知を超えた存在が、今、目の前にいるわけだ。

 世の天才や革命家だったら、凡才には理解出来ない難題命題を聞いたに違いない。


 が、クロトにはこの質問がもっとも重要だった。


「美智……あの赤い髪は、何で僕を襲って来るの? 僕が創造主の生まれ変わりとか言ったけど」


「ほう? ディキマは、そこまで話していたか」


 モルタは平然と返す。


「読んで字のごとくじゃ。ぬしは神の生まれ変わりじゃ」


 足腰に力を取りも出したクロトは、立ち上がり、彼女に詰め寄る。


「だから、それが解らないんだよ? 僕は今日まで、普通の人間だった。なのに、いきなり神の生まれ変わりって言われても、理解出来ないんだよ」


 モルタは眉を潜め、少し悩む。


「解らぬと申すか? 記憶を取り戻してはおらんのだな」


 モルタはおもむろに、クロトの前に手をかざす。

 しかし、神と呼ばれる存在は、些細なことでも逐一、下界の人間を驚かせる。


 モルタがかざした手には、関節を曲げるシワ以外、手相も無ければ指紋も全くない。

 驚くことか多すぎて、気が休まらない。


 CGだったらリアリティーを持たせる為に、細かく曲線を書き加えるところだが、その必要性が彼女には無いなんて、女神は手の平すらも美しいとは、容姿も含め、つくづく見惚れてしまう。


 と、その見惚れた神の右手をから、線が放たれ、クロトの頭を貫通し後頭部から抜け出た。


「うわぁ!?」


 少年は軟弱な叫びを上げ、後ずさる。


「モモモ、モルタ!? 何にしてんの?」


「パースの線は物体をすり抜ける。頭に線が通れば、貫通して脳神経に線が触れ、その触れた線から記憶を操作出来る」


「ちょっと! 記憶を操作って止めろよ!?」


「考えるな感じろ。この方が手っ取り早い」


「ヤダよ! 止め――――ぐあぁ!!?」


 脳神経が焼き切れたのかと思うくらい、頭の中が熱くなり、クロトは尻もちを付いて倒れる。


 それを見たモルタはため息を付く。


「困った。主の頭に抵抗が見られる。どうやらノーナが記憶の解放を拒んだようじゃ」


「そのノーナがどうとかじゃなく、僕が嫌だって言ってるだろ?」


 不機嫌なクロトは立ち上がり、ズボンに付いた砂を払いながら、ある疑念を思い出し、モルタに聞いた。


「そうだ、君が記憶を操作出来るなら、ディキマも同じことが出来るよね?」


「無論、造作もない」


「今と似たことが学校でもあった。ディキマが友達の頭に手をかざした時、みんな知らないはずの彼女を最初っから、知ってたように話してたんだ」


「ディキマの傀儡くぐつにかかったのだな」


「僕も同じことされたけど、みんなみたいに記憶を操作されなかった」


「主に眠るノーナが、ディキマの傀儡を拒んだのだ」


「でも、僕、昔、事故に合ってから記憶が無くなる時があるよ?」


「ノーナが主の記憶を操作してると見た方がいいな」


「な、何で、自分で自分の記憶を操作するのさ?」


「不都合な記憶を、意図的に伏せる為じゃろうて。主の記憶が無くなるのは、事故ではなく、ノーナの力による副産物じゃ」


「そのせいで、こっちは生活に支障を来してるんだけど?」


「それは主の中にいるノーナの力じゃ、ワシにはどうにもならん」


 きっぱり言い切る彼女は、うつむき策を練る。


「しかし難儀だのう……なら、主らの言葉で説明しよう」

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