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1、幻想の溶解

 石造りの雨風を寄せ付けない家々――――――――熔けた。

 のこぎりのように鋭い葉をまとう林――――――――溶けた。

 そこに住む人々――――――――解けた。




 その様子を照らす満月は、まるで灼熱の太陽のように思えた。

 人々はヘドロの沼から這い上がり、月を掴もうともがいている。


 しかし、掴もうと伸ばした手が目の前から崩れ、溶けて混ざり合った泥沼に流れて行く。


 溶けた家、自然、人々は、七色の絵の具をかき回したよに、不気味な模様と色に変貌していく。

 重力に逆らえず、全てが地に溜まった一つの塊になると、静寂が月夜を支配した。

 

 その沼の中心が盛り上がる。

  

 それは、5本に別れ、扇型に広がると、そのまま地上を突き出てきた。

 伸びた腕は沼の水面に倒れ込むと、力を入れ一気に沈んだ本体を引き上げる。

 

 どす黒い液体にまみれた半身が這い出ると、液体から片足を出し、満月に向かうように立ち上がる。

 細身の人形を思わせるシルエットは、月の光に当たり、全身の汚れを洗い流している様相を見せた。

 全身にまとわりつくヘドロが流れ落ちると、透き通るような白い肌が、月光を反射させる。

 

 砂時計のようにくびれた腰。

 頭から腰まで蓄えた長い髪は、淡い水色に染まり、 上部から下部にかけてグラデーションを形成していた。

 水色の髪には模様が描かれ、白い糸のような線が、放物線状に広がり、線だけで表現された地平線のようだった。

 彼女は、磨かれたアクアマリンのような瞳で、久しく目にする満月を見たのだった――――。

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