<おまけ~勇者視点〜・あ、こいつ殺す>
「zzz………」
「…」
「zzz………」
「…」
「zzzzzz…」
「……」
朝4時。ユーステティ王国極悪囚専用監獄。王国が誇る技術者達の英智の具現化である最強の牢屋。中にいる死刑囚に一切の暇も与えず苦痛を味あわせ続ける作りになっている。
よもや中で寝ようものなら、炙獣石が顔を焼く。いびきのように少しでも音を立てようものなら、鳥鳴石の首輪が対象の耳を痛めつける。
「おい、起きろ」
「zzz………」
「おい」
「zzzz………」
「……おい」
「zzzzzz……」
なぜこんなに安らかに眠りについているんだこいつ。
『ガンガンガン』
檻を叩く。
「zzzzzz……」
「起きない…か…」
そうか、わかった。連れて行かなければならないが、もういい。これが最後の警告だ。
右手を軽く引く。
静かな城内に、ガチャリと鎧が音を立てる。思えばこんな今朝方に大きな音を出すのは忍びないと思った。が、別に気にしない。
身体を流れる魔力を右手に集める。どくん、と脈打つと同時に仄かな熱と青いオーラを纏った。
「バレット!」
ゼロフレームで右手を突き出す。この大陸一強固なメルキ鋼の檻に圧倒的魔力でコーティングされた拳が衝突する。
『ズドォオオオオオオン』
檻も拳も一切傷ついていないが、音はまさに爆発音だ。
これで流石に起きただろう。起きなければ、死刑の時間が早まるだけだが…
むくり。きょろきょろ。ぱたん
「zzz………」
「………………」