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今日から学校と仕事、始まります。①莞

因縁の戦い

作者: 孤独

誰にだって、戦わなければいけない瞬間がある。

勇気を込め、心を奮わせ、心を持って自らの肉体を動かす。

戦うの原点は、勝つか負けるかではなく。まず、己が動くことから始まるものだ。


「負けねぇ」


誰だって生きていれば、戦うことは当然。それを特別に思うかどうか、その人次第。そんな人が今ここにいた。男の名は出雲安輝いずもやすてる

疾風の如く駆け、影の如く静かに陣地に入り、岩砕く拳闘を持って制圧する。その強さ、まさに”超人”。彼の拳、彼の脚、彼の心によってこれまで数多くの敗者が生まれた。

だが、出雲の強さを持ってしても、上には上がおり。生きてきた経験を持ってよく知る事となる、己の能力とは無関係な戦いがいくつもある。


科学的な強さ、不可思議な強さ、ずば抜けた強さ、弱き者の勝利の在り方。


何かを達成するという事はいくつの何かがある。そう、今この時。



ジュウウゥゥッ


「衣付けて揚げれば、いける。ぜってーいける……」


見るからに身体に悪そうと言える、鍋の中の油。やたらむやみに揚げ物にするのは良くない。

だが、出雲の戦いはまだ始まってすらいないところ。

標的はしっかりと油で揚げられ、殻に包まれたようになった。敵を閉じ込めたとも言えるが、今回の戦いではこんなクソ野郎、見たくもねぇという意味が強い。その相手とは


「ピーマンなんてこれで楽勝だ。ぜってーいける」

「お前、ピーマン食べるだけでどんだけ大袈裟なんだよ」

「天草組長は黙ってください!」


食うぐらいなら、自分の上司に強気を見せるくらいだ。

目をつむって、標的であるピーマンを鍋に入れるくらいだ。見たくもない。しかし、


「俺だって、なんとか苦手を克服しようと思っているんですよ!明確な弱点はいけないって言いますし!」

「それお前が食わず嫌いなだけだろ。肉詰めピーマン上手いぞ」

「なんであんなアホな食材が肉を挟んでいるんですか!?バカじゃねぇの、考えた奴!!肉だけでいいんだよ!」


ピーマン農家さん、ごめんなさい。


「野菜炒め、チャーハン、肉詰め、……ウンザリなんです!食べないよう、食べないよう、箸でどかしている俺の身になれってもんです!」

「お前が食えば解決だ!」


天草はため息をもらしながら、出雲と似たようなことを話し始めた。


「俺からしたら、タコとイカを最初に食った奴はすげぇと思うな。あーいう気味悪い生物を食えると判断した奴、ホント尊敬するわ」

「苦手なんですか?」

「むしろ好きだぞ。ただ、よく調理できたなって話だ」


最初の一歩を踏み出した者にはなんであれ、尊敬したいものだ。こうして様々な工夫を凝らして、食わず嫌いを直そうとしている出雲にも、ほどほどに思っている。

まぁ、小さいし、どこ向いて踏み出しているのか、分からんけど。


「よし、揚った」

「衣しかねぇじゃん」

「味わう前に飲み込める小さなピーマンにしました!」

「それ意味ねぇじゃん!!」

「それでもこれは俺の因縁の戦い!ピーマンを乗り越える戦い!」


ぜってー、乗り越えてねぇ。ビビッてる。誤魔化すだけだろ。


それも戦いの仕方。決着の付け方。引き分け、不戦勝、そーいうオチで人を思い留まらせるのも、戦い。



サクッ……


「……うん!克服した!!ピーマンの味はしない!」

「味してねぇなら克服になんねぇよ」

「ピーマンの食べ方が分かるのも、一種の戦い方ですよ!」


食べた瞬間、油の塊。衣と塩だけの味。これならいける。これでいい。ピーマンはこんな味で良い。


「わりぃっ、手が滑った」

「ぎゃあああぁぁっ!!?」


もうこれでいいやと思ったところで、天草は油が入った鍋を徐に出雲の方へぶっかけるように投げ、軽い火傷を負わせるのであった。


「戦いにはいつも水を差す出来事がよくあるもんだ」

「油差されたんですけど」

「戦いは一つだけじゃねぇ、注意しろ」


その注意しろを、出雲は大胆に指摘。


「床、拭いてくださいね。油まみれで滑ります」

「俺がやるのかよ!?」

「天草組長が床にこぼしたんでしょ。手、冷やしてこよー」

「元はと言えば、お前がピーマン食えなくて、克服したいとかでー。うぉっ」


天草、油に滑って転ぶ。



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