来襲
「なんかさ。よく分かんないんだよ」
「分かんないって、昨日は好きだって言ってただろ」
「かもしれない・・・・・・な。なんか、思ってた「好き」とは違うんだ。よく聞くだろ? ドキドキするとか、苦しいとか。そういうのじゃなくてさ────」
「安心する?」
「そうかもな。でもさ、感謝とか。色々考えると日向がいなかったら今の俺はなかったんだなーって考えてたらさ。好きなのかなって思っただけ」
「ふーん」
次の日の朝、俺は白泉と一緒に学校への道を歩いていた。やっぱり惚れた腫れたは早いのかな。周りの話を聞いたりすると羨ましいとか、俺も欲しいとか、色々考えちゃうんだ。焦らずにって思ってたんだけど偽彼氏とかやってるよりは悩んでる方がマシな時間を送れると思うから。
少し考えてた白泉はこう続ける。
「まっ、いいんじゃね? なんかお前らしいだろ、グダグダしてるのとか。一応、応援してやるよ」
「一言余計な気がするけど、ありがとな。早速今日言ってみようかな」
「早っ! そういうのはさ、もっと考えろよ。下手したら関係ぶっ壊れるんだぞ」
「相手は日向だぞ? そんなこと気にする性格じゃねえよ。それにウダウダ悩むのはそれこそ俺らしくないだろ? 考えるより動けだ!」
そう言って学校へと駆けた。鳥達も応援してくれるらしい。うるさいくらいに鳴いている。ってほんとに多いな!
無駄に多い鳥達の鳴き声の中俺達は走った。
時は流れて昼休み。流石に鳥の数が多すぎる。何かがおかしいと皆気付き始めていた。
「確か「空襲」の時も鳥が鳴いてなかったけ?」
「じゃあまた悪魔が襲ってくるの・・・・・・」
皆の中の不安は恐怖へと変わり大きくなっていく。悪魔が襲ってくる。何もおかしいことはない。だって、悪魔はこの世界にいる。餌が目の前をウロウロしてたら食うのは当然のことだ。
窓を睨んでも何も見えない。ここからじゃ悪魔なんて見えないか・・・・・・。
諦めかけたその時、早乙女先輩が教室に駆け込んできた!
「桂木くん! 悪魔、いるよ!」
早乙女先輩の指さした方向、真っ直ぐに黒い何かが見える。あれが悪魔だってよく分かったな。俺には完全に米粒にしか見えない。でも────
「見つけたらこっちのもんだ! 行くぜ!」
「待ちなさい!」
走り出した俺の手を誰かが掴んだ。火野村先輩だ。いつの間にか横にいて俺の手を掴んでいる。こんな時に・・・・・・!
「邪魔しないでくださいよ!」
「今の貴方じゃ勝てないわ。諦めなさい!」
「諦める・・・・・・? ふざけんな・・・・・・。誰かが死ぬのを指をくわえて見てられるかっての!」
先輩の手はどうやっても振り払えない。こんなことしてる時間なんてないのに!
「離してくださいよ・・・・・・。このままじゃまた人が死んじゃう・・・・・・」
「行かせるわけにはいかないわ。今の貴方は弱すぎる。次の為に今は抑えて」
先輩の声は優しくて力強い。まるでそれが正しいかのように言う。今は見殺しにして次の人を確実に助ける? それもいい。ああ、正しい選択だろうよ。でも、でも!
「俺が助けたいのは明日襲われる人じゃない。今襲われる人なんだ。だから・・・・・・ごめんなさい!」
ポケットにある刀を抜いて先輩目掛けて薙ぐ。後ろに飛んで躱す先輩。でも手は離された!
自由になった体を回転させて走る。窓の縁を蹴って教室から飛び降りた!
痺れる足は無視だ。とにかく走る! 学校を出て塀を登り、屋根を駆け走る。
走り続けてやっと追いついた。近くで見ると無茶苦茶デカい! 俺なんて一呑み出来そうだ。
「ギィアアアアアアアアアアアアアア!」
大きな叫び声が町に響く。どうやら俺に気づいたらしい。鳥は俺を上をぐるぐる飛び回っている。
さて、どうやって攻撃しようか。なんて考えるのは昨日までの俺。今日からの俺は一味違うぜ!
ベルトに引っ掛けてある銃を手に取って空へと魔法を放つ! 放たれた氷の刃は鳥の羽へと当たって砕けていく
どうだ! 昨日貰った礼装を治して改造した新しい武器! まだまだ威力は低いけど、これで遠距離でだって戦える。
雄叫びを上げて突っ込んでくる鳥。それを躱して刀を突き刺す! だが鳥は羽を羽ばたかせて空へと逃げた!
でも逃がす気なんてない! 銃を撃って追撃する!
空で旋回して俺の魔法を躱す巨鳥。普通にやっても当たらない。じゃあどうすれば当たる?
幸いにも鳥の動きは遅い。攻撃は避けられるし、反撃もできる。ただ、タイミングが合わない。もっと動きを小さくして、もっと・・・・・・、もっと────!
────3秒後、右に5歩だ。
突然頭に声が過ぎった。知らない男の声。信じるか、信じないか。そんなこと・・・・・・。
突貫してきた鳥を右に動いて避ける! 体に羽が掠ったけど大丈夫だ。痛くない。これなら!
刀を振り上げて方翼をぶった斬る! 完全に刃が入らなかったらしい。翼は鮮血を飛ばすだけ。
「もう1発!」
巨鳥の体に炎の追撃を加えて更にダメージを与えた・・・・・・はず。何故か傷は浅い気がする。血ももう止まってる。
これが悪魔か。傷が再生する前にもう一度傷口を広げないといけない。それか早乙女先輩みたいに一撃で倒すか。
「それが出来たら楽なんだけどな」
「じゃあやればいいだろ」
「へっ?」
またこの声だ。今度はもっと近い。横から聞こえるって錯覚するくらいに・・・・・・。
横を見ると半裸の男がそこにいた!