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神々の住まう土地へ



魔法陣の先に見える世界。そこは大きな樹がそびえ立ってるだけの高野だった!


「これが・・・・・・ユグドラシル?」


見上げてみても枝らしき物が一切ない。それ程までに大きいのか。それともただ枝ないだけか。

ボーッと上を見てる俺にヒルデ先生が言う。


「本当ならここから樹に登り、アーガルズ────つまり、神の住まう土地へと向かいます」

「これを登るんですか? 手をかけられる所なんて無さそうですけど」


樹の表面を撫でて掴む場所を探してみても特に成果はない。スベスベしていて掴めなそうだ。


「あの人、頭悪すぎませんか? そんな事見れば分かるでしょう」


セラが指を指して俺を嘲笑した。昨日の優しさなんて欠片も存在しない! くそっ! なんかちょっと見直したのに、台無しじゃん!


「まあまあ。転生悪魔ですから、知らないのも無理ないですよ」

「ん、レヴィ、教えるから、大丈夫」


ヒルデ先生が苦笑しながらセラに言う。そしてレヴィは俺の隣に移動して手を握ってきた。────ってレヴィ!?


「何でいるの!? 連れてこなかった気がするんだけど!」

「魔力、感じた、から。入った」


手をグッ! と握るレヴィ。誰に似たんだよ、こんなところ。魔王様! しっかり教育してあげてください。随分とアグレッシブな女の子になってますよ!


「なあ、レヴィ。ここからはさ、神様の世界なんだ。だから悪魔のレヴィが行くと危ないかもしれないぞ?」

「悪魔、なら、ハル、も、そう」

「俺は龍の力があるから大丈夫なんだよ、多分な」


大丈夫だよな? 確か前神の力を使った時に、龍の力が守ってくれたって言われた気がするから大丈夫なはずだ。うん、大丈夫だ。

レヴィは頬を膨らませてユグドラシルに手を置いた。


「なら、大丈夫。レヴィ、強い、から」

「そういう問題か!? 悪魔なら強弱関係なく消えるって聞いたぞ!」

「レヴィ、普通、じゃない、から。ハル、が、信じる。それで、勝てる」

「いやいやいや、そんな気持ちでどうなるかって話じゃないんだって! だってほら────」


ユグドラシルに触れてるレヴィの手を指さす。その手からは煙が上がっている。初めて見たけど多分これが《浄化》ってやつだ。

神の力は例外なく悪魔を消し去る。その《浄化》がある限り悪魔は絶対に神には勝てない。こればっかりはどうしようもないんだ。

レヴィの手を離そうと掴んでもビクともしない! 力強っ! てか────


「意地張ってないで離せよ! 死ぬかもしれないんだぞ!」

「大丈夫。ハルが、信じて、くれれば」

「それが意味分からないんだって! 信じてどうにかなるものなのかよ!」


レヴィは答えない。代わりに辛そうに呻き声を上げるだけ。このままじゃほんとに死ぬ・・・・・・! 信じるって言ったってどうすればいいんだよ!


『ったく、うっせーな。簡単だろうが、テメェの中であいつが神に打ち勝つ姿を思い描けばいいだけだ』


ヴリトラの声が聞こえた。

打ち勝つ姿って、悪魔は神に勝てないんだろ! そんなのに勝つって言われても────


『誰も勝てねぇなんて言ってねぇよ。触れたら死ぬだけだ』


それを勝ち目が無いって言うんだよ! 今だってレヴィが死にそうなのに・・・・・・。


「・・・・・・おかしい。何故浄化が終わったのですか!?」


ヒルデ先生が驚嘆の声を上げた。レヴィを見ると煙は消えていて腕も回復している。なんでだ?

驚いてるのはセラも同じらしい。口に手を当てて目を見開いてる。

何が起こった? ただ押さえつけただけ? それが《浄化》を止めたって? マジかよ・・・・・・。


「レヴィ。お前────」

「流石、幻想体ファンタズマと言ったところかな。・・・・・・サナ」


背筋が凍る程の冷たい声。それは・・・・・・俺の後から聞こえた。体が凍りついたみたいだ。動かせない。指1本すらも・・・・・・。

でも声の主は分かる。前も聞いたから。和平の時も聖杯の事を聞いた時も。そう────


「魔王様・・・・・・」

「有名なのも困ったものだ。声だけで気づかれてしまうからね。ねぇ、転生悪魔」

「なんでこんな所にいるんですか? なんで俺達がここに来るって────」

「アザゼルから聞いた・・・・・・と言ったら?」

「荒野先生から?」

「ああ。さて、そろそろ追いかけっこも終わりにしようか」


背中に走る悪寒。その全てが一気に熱に変化した! その熱は炎になって明確に死を告げる!


「ヴリトラ────!」


漆黒の刀を抜いて振り向きざまに切りかかる! 刀の軌跡は炎を払って魔王様の影を両断した!


「まだまだ・・・・・・甘い」


下からの声! 魔王様が屈んで刀を避けていたんだ。襲い来る回し蹴り。脇腹を固めてガードする。だが────

魔王様の足は俺を掠めて空を切った。・・・・・・フェイント!? 気付いた頃には遅すぎる。目の前に魔王様の踵が迫ってきていた! 俺の頭に魔王様の踵落としが炸裂する! 骨が砕ける音。口に広がる血の味。そして揺れる視界。

地面に倒れた俺の髪を掴み上げて魔王様は言う。


「安心して死ね。1週間後には主も逝く」

「────春さん! 防御を固めて!」


ヒルデ先生の叫びと共に空が光った。体が震える程の大きな魔力・・・・・・。それにそれ以外の何かがある・・・・・・。


『ルーンか! おい! 死ぬ気でテメェの身を守れ! シャレになんねぇぞ!』


頭にヴリトラの声がガンガン響く。守れって言われても頭真っ白なんだよ! 魔法なんて使えないぞ!


『チッ! ったく手がかかる!』


俺の体を黒い炎が覆う! その瞬間────空の光が爆発した! 降り注ぐ光! 凄まじい爆音と共に地面は光の中に消えていく。

なんだよ! 怖っ! ヒルデ先生ってこんな魔法使えたのか!?


『ルーン魔術。神の力と魔力の複合魔法だ。当然浄化も働いて悪魔には効果的な力を発揮する。あの女、テメェ事消し去るつもりで発動させたな』


だったら無言で撃ってるよ。あと多分力も抜いてる。それに────。


「無駄すぎるな。俺を狙うなら《圧縮》を利用しろ」


光の中で魔王様の声がする。やっぱりまだ生きてる! 回りは煙が酷い。気付いてる俺が何とかしないと────。


「あっ、────あああああ!」


痛みを訴える頭を無視して黒炎を刀に走らせる。叫びは爆音にかき消されて魔王様に届いてない。これから確実に・・・・・・当たる!


黒炎の刃を魔王様の首目掛けて突き刺す! ここまで来れば────


「うるさいぞ、雑魚が」


魔王様が体を横に翻して刀を躱した! 標的の消えた目の前にあるのは見たことない黒い魔法。それは黒炎と衝突して魔力を飲み込んで消えていった。


「外しました。撤退です!」

「分かってます。第二波、放射します!」


再度、空が光出した。さっきより強く、光を放ち俺達へと降り注ぐ!

こんなの防ぎようがない・・・・・・。

回りに鳴り響く爆発音。俺はそれを身を丸めて防御する。


「何やってるんですか! 早く行きますよ」


セラの声が俺の手を掴んで走る。光の当たらない所を正確に走り抜けるセラを追って走った先にレヴィがいた! そして魔法陣もある。


「ヒルデ先生が攻撃の合間に描いたものです。貴方達は先にヴァルハラに向かってください」

「なっ! でもセラ達は────」

「聞いてなかったんですか! オーガス様が1週間後に殺されるんです! 迷ってる暇なんてないでしょう!」


1週間後には主も逝く。魔王様はそう言った。それってやっぱり・・・・・・。うん、セラの言う通りだ。今は────


「ああ。信じるから。絶対ヴァルハラでまた会おうな! レヴィ、行くよ」


俺の言葉に頷いたレヴィと一緒に光の中へと駆け出した。






光の先に見えた景色。それは言葉通り雲の上の世界。天界と作りは似てるけど体にヒシヒシと感じる力。《浄化》が働いてるせいだ。悪魔である俺達には存在すら許されない世界。正しく神々の住まう土地ってか。

そしてヒルデ先生の気が利くのか知らないけど目の前には白い髭を生やしたお爺さんとゴツいおっさんが酒を飲んで俺達を睨んでいる。


「ふむ。我ら神に何のようだ? 悪魔」

「がっはっは! これは面白い! 英雄の集うヴァルハラに悪魔が招かれたとはな!」


明らかに不機嫌な顔をしてるお爺さんは槍を持っている。今まで見たどんな武器よりも強い。そう言い切れる程の力を持ってる槍だ。

そしてもう1人。武器を使うより拳で戦いそうな程、ゴツいおっさんは錫杖しゃくじょう? を持っている。これも強い力を感じる。あの槍ほどじゃないけど俺達なら簡単に消しされそうだ。

この2人には悪いけど時間もない。さっさと説明して目的を達成させよう。


「あの! 話を聞いてください。俺達はヒルデ先生────戦乙女のブリュンヒルデと知り合いで、そのツテでここまで来ました」


まずは、ヒルデ先生の事を。そして今の状況。ユグドラシルの枝が必要なこと。その全てを話した。

だが、白髭のお爺さんは言う。


「くだらんな。和平と女を守る力のために世界樹の枝を欲しいとは・・・・・・。欲が過ぎる」


そしておっさんが相槌を打つ。


「ふむ。確かにな。だが、俺は気に入った! その欲の深さも、主を思う気持ちも! 愚かだが、真っ直ぐだ。なあ、ヴリトラ? お前もそこが気に入ったのだろう?」

『チッ! 気づいてやがったか。力は弱いくせに勘だけは冴えやがる』


ヴリトラは心底不愉快そうに答えた。どうやらおっさんとヴリトラは知り合いらしい。あれ? でも、ヴリトラとヴァルハラって関係ないような気がした・・・・・・んだけど?


「お前も物好きが過ぎる。悪魔なぞに力を貸しては堕ちるのが関の山だぞ、インドラ」

「がっはっは! それも面白い。悪魔には力を貸して様子を見るのもまた一興。《浄化》に耐えられる悪魔がいる。それだけで俺は力を貸してやりたくなったぞ! オーディン」


オーディン? インドラ? ・・・・・・はっ? 酒を酌み交わしてる2人の神はオーディンとインドラって名前ってことになる。槍を持ってる方がオーディン。錫杖がインドラか。そして何故かインドラには気に入られたらしい。


「お主が気に入ったのなら仕方あるまい。酒が不味くなるのも嫌だしの。おい、悪魔。主は何が欲しい?」


オーディンが問うてきた。そんな質問今更だ。


「さっきも言いました。ユグドラシルの枝を貰いに来たんです。それ以外は────」

「そうじゃない。力が欲しいのかと聞いておる」

「力・・・・・・? はい、力が欲しいです。世界の皆も、俺の大切な人も、全て守れる力が」


昨日セラと話して決めた。多くの人を助けたいから。例え人を殺したとしても沢山の人を助けて、罪を背負って生きるって。

だが、オーディンは俺の答えを嘲笑で返す。


「やはり、くだらん余興じゃ。身の程も分からん餓鬼の戯言に付き合う暇もない」

「なっ! なんですか、それ! 戯言って、俺は本気で言ってるんです! だから────」

「なら、我が神槍を耐えてみせよ」

「なんでそうなるんですか! 俺は枝を貰いに来ただけなんですよ」

「主の成そうとする事は神を背負うという事だ。ならば、神の一撃を受け、耐えてみせればいい」


槍を持ち構え始めるオーディン。この人が何言ってるのか分からない。神を背負う? 荒野先生の事だって話したのに。なんで俺が背負うことになってるんだ。


『お前も見ただろ。ユグドラシルも1種の神だ。アレを使うなら《浄化》を受けても動ける肉体を示せって事だろうな』


なるほど。確かにそう言われればそうだ。だったらもう一度力を貸してくれよ、ヴリトラ。


第二段階セカンド・ギア────二重起動ツインドライブ


二振りの刀。漆黒の着物と肌。そして機械が作り出す魔力の鎧。それを見たインドラが感嘆の声を上げた。


「おお! アザゼルの奴、こんな物を作ったのか! これは神殺しも夢ではないな。そしてヴリトラ! お前も見たことのない進化を遂げたな! 第二段階でそこまで力を伸ばすとは」

「いくぞ。神槍────グングニル」


インドラの声をかき消すかのようにオーディンは槍を投げてきた! 刹那────槍は鎧を抜け、鱗を裂いて俺の体へと突き抜けた。


「ごぼっ!」


口から溢れ出る血を押さえようと体に力を込める。だが、無慈悲に体は地面へと倒れ伏せた。


「ハル。レヴィ、が、守る、から」


一拍遅れてレヴィの声が聞こえた。レヴィの体を水が包み出す。その瞬間────!


「それ以上は寄した方がいいぜ。「お前だけ」が死ぬことになる」


聞き覚えのある声が耳元で響く。ずっと頭の中で語りかけてきてた声。それが今隣から聞こえる。


「感謝するぜ、オーディン。これで馬鹿も少しは身の程を知るだろう」


目の前で笑う黒い男を睨んだまま俺の意識は闇へと落ちていった。


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