アノ日ノ夢ヲモウ1度part2
光の先に見えるのは暗い空。そして崩れた建物。
そう、魔界だ。当然だけど悪魔の姿はない。代わりに人間がこれでもかってくらいに多い。
今日はハロウィンだから仮装パーティでもやってるのか? お化けの姿をした人が沢山目に入る。
「あの人のことだから何か考えがあるんだよなぁ」
頭を掻きながら呟く。願いを叶えるお菓子なんて物を場所だけ突き止めて人任せ・・・・・・なんて普通はありえないだろ。
しかも・・・・・・ご丁寧に紙には魔界に行けだの、次は天界だ! だのゲームみたいに目的地が書いてある。
これで何も疑わないで探しに出たら馬鹿だ。
とにかく目的地が設定されてるなら協力者がいるはず。ということは俺は知人を探せばいいんだよな。
「いや無理だろ。どうやって探せばいいんだよ」
この人混み! どうすんだよ・・・・・・。
ため息を吐いて空から人混みを見渡す。人! 人! 人! 人しかいない・・・・・・。
なんで魔界にこんなに沢山人間がいるんだよ。
「なあ。おい、あれって・・・・・・」
「悪魔・・・・・・? なんで!?」
俺に気付いた人間が指さして騒ぎ出した。仕方ない。逃げようか。
大きくなる下の騒ぎを無視して空を翔ける。どんどん空へと舞い上がる俺の周りには光が展開された!
光は円を描き模様を作り出していく。魔法陣か!
撃ち出される炎を身を翻して避けて俺も魔法陣を描く。飛び出てくる刀を手に取って次々と作り出される炎を切り裂いて躱す!
敵の姿は見えない。でも・・・・・・近くにはいるはずだ!
縦横無尽に空を飛び魔法を避け続ける俺の頭の上に巨大な魔法陣が描かれた。
その中から出てきたのは巨大な岩。下の魔界ごと押しつぶされそうな程でかい!
「この力・・・・・・乗り越えられますか!?」
上から女の人の声が聞こえた。その声に答えるように叫ぶ!
「第二段階!」
俺の体は黒炎に包まれる。
皮膚は黒く変色して龍の鱗を作り出す。悪魔の羽は龍の物へと変わり雄々しく広げられた。
腕に纏った黒炎は巨石とぶつかり合い破壊する!
粉々に散っていく岩の上から手を叩く音が聞こえて白銀の羽を生やした女の人が降りてきた。
「流石・・・・・・と言うべきですね。あの巨石を痕形もなく消すとは」
「俺はあなたが攻撃してくるとは思いませんでしたけど。ヒルデ先生」
真っ白な長髪の戦少女。ブリュンヒルデさんはレイピアを抜いて構える。
龍の力を解いて刀を構える俺にヒルデ先生が言う。
「力を使わないんですか?」
「はい。もう・・・・・・誰かに使いたくないですから」
そう答えた俺に氷の魔法が放たれる! それを刀で弾いて力をイメージする。
救世の奇跡を砕いた力・・・・・・。神の力を────。
戦友の力のように俺の体を雷が伝う。そして主の力のように体が黒くなり炎を纏い始めた!
「それが貴方の────」
ヒルデ先生の言葉を遮って雷が轟音を鳴らす。空を蹴って炎を刀に纏わせる!
俺の動きに反応してヒルデ先生が魔法陣を描く。だが遅い!
繰り出される魔法を躱して一閃!
「今の俺は・・・・・・悪魔じゃないんです。人間でもない。昔しか知らないヒルデ先生が勝つことなんて出来ませんよ」
手に持った刀はヒルデ先生の血を吸って赤い雫を垂らしていた。
赤く染まった羽を握りヒルデ先生は微笑んで言う。
「それが・・・・・・貴方の望む力ですか? 貴方の求めた・・・・・・未来ですか?」
「関係ありませんよ。俺が求めたって・・・・・・奇跡に呑まれるだけなんですから」
雷と炎の握り拳がヒルデ先生の腹へと突き刺さる。拳は刀の切り傷へとめり込んで広げていく。
柔らかく硬い感触。そして体を貫いた拳は風を切り裂いた。
終わった・・・・・・。多分、もう魔界にいる意味はないだろう。
「天界に着いたのはいいけど・・・・・・」
どうすればいいんだ? 天界は魔界と違って天使がいるようだけど・・・・・・。
とにかく知り合いに会ってみようか。天使といったらあの人だよな。
天界で1番大きな建物────熾天使の場へと足を進めた。
「願いを叶えるお菓子・・・・・・ですか? 聞いたことありませんね。すみません、力になれそうにないです」
「知らない・・・・・・ですか? アザゼルさんが知ってるから知ってると思ったんですけど。すいません、変なこと聞いて」
軽く頭を下げるミカエル様に俺も頭を下げて答える。
ミカエル様が知らないなら────
「願いを叶える菓子とはこれのことじゃないのか、?」
ミカエル様の横で書類を眺めてた男、ウリエル様が指で紙を叩いた。
黄金の城下町にて売ってるらしい。セール品のチラシに写っていた。ていうか・・・・・・書類じゃなくてチラシ見てたんですね。
「うーん。これじゃない気がします。売ってるなら買ってこいって言われると思いますし」
それに天界に売ってるなら魔界に行かせる理由がない。魔界に行っても何も無かったけど・・・・・・。
顎に手を当てて考える俺にミカエル様が思い出した様に叫んだ。
「そういえば! セラが不思議なことを言っていました。聖杯の欠片がどうのこうの・・・・・・と」
「絶対それだな。あのクソ堕天使と結託して変なこと考えてるんだろ」
ウリエル様がミカエル様への相槌と共にアザゼルさんの愚痴をひけらかしてるのは置いといて・・・・・・。
セラか。やっぱり知り合いだったか。しかも聖杯の欠片って。嫌がらせかよ!
「ありがとうございます。じゃあ・・・・・・行ってきますね」
「少し待ってください」
部屋を出る俺をミカエル様が呼び止めた。そして振り返る俺に問う。
「もう・・・・・・あの時と同じ無理だけはしないでください。あれは奇跡ではありません。呪いです。貴方には────」
「なら、その呪いも背負って生きていきますよ。それが全てを受け入れた俺の使命ですから」
ミカエル様の言葉を遮って部屋を出る。次は・・・・・・セラの所だ。
「お菓子が欲しいなら城に来い! さらば! ・・・・・・なんだこれ?」
セラの家の扉に張り出された紙を見て苦笑いを零す。無駄足かよ。ていうかこんなキャラじゃないだろ!
なんだよさらば! って! わけわかんねぇよ!
「行くしかないんだよな。一応仕事だし」
紙を剥がして丸めて捨てる。こんな面倒なの断れば良かった。絶対怒られるけど。
「ふっふっふ。ポイ捨ては良くないぞ! 悪魔くん!」
めんどくさいのが来た・・・・・・。
透き通るような水色の髪をした巨乳で白衣の女性────シエラ・ガブリエルが俺が捨てた紙を持って笑っていた。
昔、この人には色々とお世話になった。今は聖杯戦争と呼ばれる悪魔と天使の間で起こった聖杯を巡る戦いの時にな。
「あと無視は止めて・・・・・・。お願いだから」
答えない俺の腕に抱きついてきた。天界にはブラジャーという概念はないらしく服の下のおっぱいの感触が直に伝わってくる!
やっぱり柔らかいなぁ。そして大きい。あの人を思い出す。絶対に守り抜くと決めたあの人に────
「ってあなたの相手をしてる暇はないんです。セラを探さないと・・・・・・」
「知ってるよ」
「えっ?」
腰に手を当ててえっへん! と偉そうに息を吐くガブリエル様。大きな胸が揺れた! プルンって! 流石ノーブラ!
────っていうのは置いといて・・・・・・知ってる? いや、天界の城っていえば1つしかないんだけどさ。
「キャメロット・・・・・・ですよね」
「ええ。アーサー王が統べる黄金の都。そして天界が誇る最強の騎士団が住む場所でもあるわ」
あの騎士王と呼ばれる大英雄の幻想体とその臣下、つまり円卓の騎士達。これからそれらの人達に会って話す・・・・・・。
いや、もしかしたらヒルデ先生みたいに戦うかもしれない。そしたら殺すしかない。だって────
「俺の邪魔をするなら誰であろうと・・・・・・殺すって決めたんだ」
全てを失ったあの日に。全てを救った・・・・・・あの時に!
「まだ迷ってるの? 悪魔くん」
キャメロットへと体を向けてガブリエル様の問に答えた。
「迷ってなんか・・・・・・いませんよ」
そう。全部を殺すって決めたから。
騎士王アーサーが住むキャメロット。そしてその城下町は黄金の都と呼ばれてるくらい豊かな地域だ。・・・・・・って言ってもただ単に上流階級の人達が多いってだけの話だ。
そのせいか知らないけど、ここは強い人が多い。警備の人だったり、円卓の騎士団だったり。熾天使もここに住んでるって聞いたことがあるくらいだ。
そんな所に足を踏み入れた俺を出迎えたのは甲冑を着込んだ人達。つまり・・・・・・護衛騎士団、簡単に言うと警察の人だ。
敵意は感じない。でも警戒されてる。うーん。 戦って進め────つまり・・・・・・全員殺せってことか。
「死にたくなかったら・・・・・・ちゃんと逃げろよ」
俺の体を炎が包むのと同時に1人の騎士の頭を掴んで他の騎士に叩きつける!
倒れ込む騎士の腰に刺さる剣を抜いて薙ぎ払い3人の首を落として叫ぶ。
「来いよ! 邪魔するなら・・・・・・殺してやるよ!」
「うああああああ!」
騎士達の咆哮と共に四方から剣撃の嵐が襲ってきた!
羽を広げ空に逃げる俺を我先にと追ってくる。
それじゃあ駄目だろ。実力で勝てないなら数で来なきゃ。
体に雷が走る。刹那────地面に降り立った俺に血の雨が降り注いだ。
追ってきた騎士に10人。まず、1人の首を落とす。そして2人目の頭を握り潰して3人目に剣を刺した。三人目の腰の剣を引き抜いて4人目の頭に突き刺す。後は刀を抜いて切り裂く。
少し前ならこの人達には勝てなかった。でも今は違う。実力も、能力も、存在の在り方すら俺は変わったんだ。
だから・・・・・・もう誰にも負けないし、傷つけられることもない。
「流石・・・・・・世界を救った英雄様だ」
「10人で一瞬で・・・・・・」
残った騎士達が何かを言ってるけど気にしない。今は邪魔をするのか、しないのか。そのどっちか興味はないんだ。
「お久しぶりだ・・・・・・と言えばいいかな? それとも初めましてかな? 英雄」
俺を囲む騎士達を掻き分けて出てきたのはブロンドの髪。そして腰に刺す黄金の剣を持った────
「初めましてでいいんじゃないですか? アーサー王」
そう。アーサー王だ。聖杯戦争の時に俺が殺したアーサーは消滅した。だけど人間の想いっていうか妄想によって幻想体としてまた生まれたらしい。
「じゃあ初めまして、英雄。君の齎した「救済」の話は聞いてるよ」
「俺は誰も救ってませんよ。俺は殺して、そして殺されただけです」
「・・・・・・だが君は確かに救ったんだ。私達天使と人間をね」
「俺が守りたかったのはそんな大きな物じゃない! 俺は────」
「オーガス・アモン。火野村桜花を守りたかっただけ・・・・・・と?」
アーサー王の問に頷いて答える。守れなかった。絶対に守ると決めた、たった1人の人を。
だから今度は────
「蘇生を望むのか? この聖杯の欠片を使って」
アーサー王が手を広げて何かを見せてきた。金色の破片だ。あれが・・・・・・聖杯の欠片。あれが・・・・・・俺の贖罪。
もう1度先輩に会って・・・・・・謝るんだ。守れなくて・・・・・・ごめんなさいって。
「だから・・・・・・邪魔をするなら誰だって────」
アーサー王の首を目掛けて刀を薙ぐ! だがそれは空から出てきた光の槍によって防がれた。
やっぱり全部仕組んでたのか。
「アザゼル!」
「お前の考えなんて全部わかってんだよ。オーガスを作り上げた理由だって、英雄で在り続けた理由もな」
舞い降りるアザゼルさんを睨んで刀を構える。もう迷わない。全部殺すって、そして先輩に会うって決めたんだ!
バアルの雷と共にアザゼルさんに切りかかる。光の槍とつば競り合い火花を散らす!
「死人を復活させるだ? ふざけんな! お前自身が否定したことだろうが!」
「あの時は・・・・・・何も知らなかった。だから言えたんだ。実際に失って何も無くなって・・・・・・。俺は・・・・・・俺は────!」
魔法陣を描いてもう1本刀を抜いて振りかぶる!
アザゼルさんも2本目の槍を作り俺の猛攻を凌いでいく。
「アザゼルさんだってやればいいじゃないですか。会いたいんでしょ。あなたを堕とした人間に!」
2本の槍を砕いて肩口に刀を突き刺す! そしてもう1本の刀を頭へと────
「第一段階」
アザゼルさんの周りに嵐が巻き起こった。それは俺の体を吹き飛ばしてアザゼルさんの体に鎧を形作っていく。
メカメカしいというか。ゴツイ鎧を纏ったアザゼルさんが叫ぶ!
「今度は俺がお前を止めてやる! それが主の・・・・・・親の役目だ!」
アザゼルさんが機械の羽を羽ばたかせて迫ってくる! 手には本物の槍。本気モードかよ・・・・・・。
三叉の槍を刀で受け止める。重い。今までの誰よりも強い。
「会えるなら・・・・・・会ってみてえよ。あいつに会って地面に頭擦り付けて謝りてえさ」
「だったら────!」
「でもな! お前が言ったんだ。お前が教えてくれたんだ。過去を見てても何もならないって。土下座して謝る俺より誰かと笑い合う俺を見たいんじゃないかって。そのお前がなんで俺と同じ過ちを犯そうとするんだ!」
俺とアザゼルさんの攻防は周りの家を壊し、雲で出来た地面を抉っていく。そして刀が弾かれて顔に槍が突きつけられた。
「オーガスだって同じだろ。いつまでもうじうじしてるお前より仲間と馬鹿やってるお前の方が良いって────」
「そんなの・・・・・・俺が納得出来ない!」
俺の体に龍の鱗が浮かび上がる。手には黒炎の爪が生えてアザゼルさんの槍を握り潰した!
「言えなかったんだ・・・・・・。一言も。好きだって・・・・・・。名前すら呼べなかったんだ。その気持ちが・・・・・・あんたなんかにわかるかよ!」
俺の拳がアザゼルさんの鎧を貫いて腹に突き刺さる! 確かな手応えと共に血の匂いが鼻についた。
アザゼルさんの顔を、腹を、腕を、殴りつける! 骨が折れる音が耳に響いて血の匂いが強くなっていく。
このまま続ければアザゼルさんも・・・・・・。
「・・・・・・わかんねぇよ」
パンチが受け止められた。俺の拳を握る手は強く引き離せない。
「お前が教えてくんなきゃ・・・・・・お前の気持ちなんてわかんねぇんだよ。だから教えろよ。全部。お前の悔しさも悲しさも、全部受け止めてやる。だから・・・・・・こんな下らねぇこともう止めろ」
「もう・・・・・・遅いですよ。沢山殺したんです。ヒルデ先生もここの騎士の人達も。だから・・・・・・もう────あぐっ!」
俺の言葉をアザゼルさんのデコピンが遮った! なんであの人ピンピンしてんだ!? 結構ボコボコにしたのに!
「じゃあ死ぬ気で償え。天使とワルキューレ。何よりお前を思い続けた奴らに一生償い続けろ」
「思い続けた奴ら? ・・・・・・えっと・・・・・・心当たりがないんですが?」
普段の調子に戻った俺に呆れたようにアザゼルさんが言った。
「オーガスが死んでから何年経ったと思ってんだ」
「・・・・・・そうですね。ざっと────2000年?」
指を折って数える俺。あれから2000年。ふむ。だとすると・・・・・・あれ?
「なんで日向達が生きてるんだ?」
「お前・・・・・・嘘だろ? 今更かよ・・・・・・。まあいい。とにかく今は謝りに行くぞ」
アザゼルさんが俺の首を掴んでアーサー王の元へと歩く。すごく近くにいるんだけどね。
ガッ! と頭を掴まれて地面に叩きつけられた。簡単に言うと無理矢理土下座させられた。
「悪い! 被害が凄いことになった。修復はこっちで何とかするから許してくれ。ほら、お前も何か言え」
「えー。アザゼルさんのせいじゃないですか」
「いや、お前が暴れたせいだからな」
小声で促してくるアザゼルさんに文句を言いながらアーサー王に言う。
「ほんとにごめんなさい。騎士さんの方は・・・・・・何とかなりませんよね。でも家の方はアザゼルさんが何とかしますから!」
「お前もやれ!」
アザゼルさんに殴られつつアーサー王を見る。ああ、笑顔が怖い。
「だったら講師として働いてもらおうか。あの名高い英雄に戦闘訓練をしてもらえるんだ。兵士の戦闘能力も上がるだろう」
「えっ? いや、あの・・・・・・ちょっと待って────」
「償うんだろう? 一生掛けてでも」
「それとこれとは話が違う気が・・・・・・。いえ、喜んでやらせてもらいます! はい! やりますよ! 喜んで!」
結局無言の圧力に負けて請け負う事になった。
その後の話。
「今日はお仕事お休みなんだよね? じゃあデートだ!」
天界での仕事に休みを貰った俺に日向が抱きついてきた。3週間働いて1日休みってどこのブラックだよ。そしてそれをつぶすのか、お前は。
最終的に俺は熾天使の補佐って役割についた。政治的なことはよくわからないからスケジュール管理とか、熾天使にお茶を運んだりとか・・・・・・要は召使いだ。
しかも毎日キャメロットに呼び出されて騎士達と戦闘訓練をしてる。それだけで終わるわけもなくアザゼルさんの研究の手伝いとか魔界の復興支援とか。まあとにかく色々やってるんだ。
「ねぇデート。久しぶりに遊びたいー!」
「うるさい! 少しは静かに出来ないのですか?」
段々とうるさくなってくる日向の頭を桜が叩いて黙らせた。実力行使ですか・・・・・・。
そして桜はこっちを向いて咳払いをして提案する。
「美奈や郁奈を迎えに行くというのはどうでしょうか。彼女達もアザゼル様のお手伝いで世界を飛び回っていますから」
「うんうん。そうね。そろそろ専業主婦っていうのもいいわね」
桜の意見に頷く理沙。ただ楽したいだけだな、この人達。っていうか美奈達も生きてたんだ。ほんとに皆生きてるんだな。
「じゃあアザゼルさんに場所聞きに行かないといけないな」
「皆で行こうね! 皆で!」
「はいはい、わかってるよ。じゃあ行きますか」
部屋を出る直前、布団の中に白を見た気がした。もうハロウィンは終わったぞ・・・・・・。まだ怒ってるのか?
「いいの? 人間を許しても。人間が悪魔を殺したのに」
布団の中の白の声は小さくてか細い。聞いただけで白がどんな状態なのかわかる。
あの時の悪魔と同じ。消えるんだ。
「許すつもりはないよ。人間が聖杯に願ったから悪魔は消えた。人間が先輩達を殺したんだ。でも、もう疲れたんだ。戦うのも殺すのも」
今はまだそれ以外の道があるわけじゃない。でもいつか見つかる気がするんだ。悪魔も天使も人間も皆で笑える道が。
「難しいよ。だって今のお兄ちゃんが見えてないなら、その道は存在しないってことなんだから」
「もしかしたら神様だって知らない道があるかもしれない。それを探してみるよ。もう少しだけな。だから────」
白に似た何かを布団ごと抱きしめて言う。
「ずっと俺の側にいてくれ。もう誰にも渡さないから」
「実の妹にプロポーズ? お兄ちゃんの変態」
もぞもぞと布団の中を動く白。そして這い出た白の唇が俺のものに重ねられる。
「うん。ずっと一緒にいるよ。だって・・・・・・家族だもん」
「ああ。そうだな」
「それにしても・・・・・・私を1番使ったのはお兄ちゃんだよね。桜花さんに会いたいって何回も言ってきて。挙句の果てに御剣さんまで出して欲しいなんて」
「偽物しか出さなかった奴が何言ってんだよ」
「出さなかったんじゃなくて出せなかったの。所詮は私も偽物だからね」
イタズラっぽく笑う白。嘘なのか、ほんとなのかわからん。本物の白じゃないってことはわかるんだけどなぁ。
「アザゼルさん今学校にいるって────えっ?」
日向が勢いよく部屋に入ってきた。まあ、なんというか・・・・・・俺と白は抱き合ってる状態なわけで・・・・・・。
「春くんの・・・・・・変態! 妹萌え!」
「違う! ちょっと待て! 誤解だから!」
「一生側にいろって言ってくれたのは嘘だったの?」
「こら、白! 余計なことは言わなくていいから」
「プロポーズ・・・・・・? 春くんなんて・・・・・・もう知らないから!」
日向が勢いよく部屋を出ていった。結局今日も忙しくなりそうだ。
思いっきりハロウィン設定を忘れてた作者です。ついでに落とし所がわかんなくなった・・・・・・。
この作品はラスト辺りでメインヒロインが死ぬ(予定)なんでその体で進んでます。あくまでも予定なんで気分でころころ変わります。
皆死んで(予定)神様になった(予定)主人公が殺すことに躊躇わなくなった世界の話・・・・・・ですかね。多分。
暇つぶしくらいになってくれれば嬉しいです。




