あの日の夢をもう一度part1
思いっきりネタバレを含みます。
時系列的には作品の後です。
それでも関係ないよって方はどうぞ
「|Trick or Treat! ということでお兄ちゃん! お菓子をくれなきゃいたずらするよ」
朝、白の声で目が覚めた。
時計はまだ4時を指している。外もまだ暗い。
「はいはいハッピーハロウィン。おやすみ」
「寝ないでよ! お菓子!」
白が布団の中に潜り込む俺の体を揺らして叫ぶ。
まだ4時だぞ・・・・・・。あと1時間は寝られる。お菓子はその後でも・・・・・・。
「もう怒った! てい!」
頭に鈍痛が突き刺さる!
白を睨むとフライパンを構えて涙目になっていた。そんなに欲しいのか? お菓子。
朝の4時だぞ? 真っ暗なんだぞ? こんな時間に貰ってもしょうがないだろ。
「白、とりあえずフライパンを下してくれ。死んじゃう! お兄ちゃん死んじゃうから!」
枕を盾にしてフライパンの攻撃を防ぐ。
だが緩和しきれない衝撃で手が痺れてきた! ボフッ! という音を立ててダメージを減らしてくれる枕に感謝の念を抱きながら俺は反撃に出る!
「とりゃ!」
布団を捲り上げて白の視界を奪う!
布団にのしかかられて動きが弱くなった白に枕を振り下ろす!
枕と布団の柔らかい衝突音が部屋に6回ほど響いた後、布団の中の白の動きが止まった。
「やばっ! やりすぎた!? おーい、白? 大丈夫か?」
反応がない・・・・・・。枕だし布団に守られてるから怪我はない・・・・・・と思うけど。
おそるおそる布団を捲ると白が踞っていた。完全にやりすぎたな・・・・・・。
「白? ごめんな。ほら、お菓子あげる────」
「わあああああん! お兄ちゃんが殴ったああ!」
俺の謝罪をかき消して泣き叫ぶ白。
その声に釣られて部屋の外から足音が聞こえてくる。
これは・・・・・・怒られるな。
俺の覚悟が決まったと同時に部屋のドアが開け放たれた。
「小学生を殴るのは駄目よ。謝りなさい」
白から1通りの説明(誇張表現あり)を受けた赤髪の女の子────オーガス・アモンが指を俺に突き立ててきた。
「いや、でもフライパン────」
「関係ないわ。お兄さんなんだから少しでもくらい妹のわがままを聞きなさい」
まるで母親みたいなことを言うオーガスに抵抗を試みるがその全てが無駄と化していった。
このまま時間が過ぎていったら桜や理沙まで来てしまう。そしたらもっと立場が無くなる・・・・・・。
それだけは避けたい!
「ごめんなさい! はい、お菓子。これで許してくれ!」
お菓子を差し出して土下座をする俺!
そして白は────!
「やだ」
即答しやがった! そしてお菓子は食べるのか!?
半泣きしつつ枕を抱きしめてお菓子を食べる白を半目で見ながらオーガスに助けを求めると呆れた様子で言った。
「白? お兄ちゃんは謝ったわ。だから白も・・・・・・ね?」
オーガスの言葉に頷いて答えた白は枕を俺に力いっぱい振り下ろした!
衝撃を直に受けた俺は後ろに倒れてベットの角に頭をぶつけて床に倒れ伏す。
そして白はすっきりした様に言い放ってきた!
「これで許してあげる。お兄ちゃん」
「・・・・・・ありがとう」
偉そうな白に少しムカつきつつお礼を言った。
許してもらえたんだ。ちょっとくらい多めに見よう。
「ハロウィンかぁ。もうそんな時期なんだね」
買い物中、日向に今朝のことを話すと懐かしむ様に言った。
確かに言われてみればあっという間だったように思える。まあ1日1日を生きるのに必死だから時間の流れが早く感じるんだろうなぁ。
「Trick or Treat お菓子をくれないといたずらしちゃうよ?」
イタズラっぽく笑う日向の頭に手を置いて笑う。
「じゃあイタズラしてもらおうかな。お菓子手元にないし」
「えー。じゃあ────」
日向が目を閉じて顔を近づけてくる。
それに合わせて俺も────
「何をしているのですか? あなた達は?」
突然横から聞こえた声に体を飛び上がらせて叫んだ!
「さ! ささささ、桜!? なんでここに!?」
いつの間にか横にいた長い黒髪の女性、水無月桜は冷たい微笑みを浮かべて俺の疑問を無視して問いかけてくる。
「今、日向と何をしようとしていたのですか? まさか路上でキス・・・・・・なんて考えていませんよね?」
「は、ははは。そんなこと考えてないから大丈夫だよ! ね、春くん?」
明らかに動揺して答える日向。
バレたな・・・・・・。別に浮気してるわけじゃないから堂々としてればいいのに。
助け舟くらいは出してあげようか。
「ま、まあ全員揃ったんだから行こうぜ。遅れるとアザゼルさんがうるさいからさ」
「そ、そうだよ! 行こ行こ! 今日は何をするんだろうね?」
大袈裟に体を動かして話を逸らす俺と日向。そんな俺たちを見て桜は嘆息した。
「外では程々にして下さい。他の人に迷惑でしょう」
「・・・・・・はい。ごめんなさい」
軽く頭を下げてから今日の目的地、学校へと足を進めた。
俺達が高校を卒業してからしばらく時間が経った。学校の外見は凄く変わってしまったんだ。
なんというか・・・・・・廃墟? みたいになってる。ていうか実際に廃墟になってる。
ここに通う生徒はいない。それどころか近くを通りかかる人すらいない。
まあ、色々あったんだ。
「やあ、春。久しぶりだね」
すっかり錆びれた校門を眺めていると中から優男風のイケメンが出てきた。
「ああ、久しぶり。優」
「ちょっと遅刻だよ。アザゼル様が怒ってる」
「じゃあ走らなきゃな。言い訳も考えないと」
「ははは。変わらないね、貴方は」
「ああ。変わらないよ。俺は・・・・・・俺だけは変わっちゃいけないんだ」
優と笑いあって校舎を眺める。もうすっかり見慣れてしまった壊れた校舎。壁を這い回ってる虫と動物が混ざりあった何か。
見慣れたけど・・・・・・悲しくなる光景だ。
「よし、行こうぜ。理沙も待たせてるんだ。早くしないとアザゼルさんにつまみ食いされる」
「アザゼル様は人の奥さんを取らないよ」
笑顔で茶化してくる御剣に目だけで反抗して中へと急いだ。
荒れ果てた中で唯一綺麗なドアの前で深呼吸をする。何回来ても校長室は緊張するんだよな。
怒られるみたいで良い気分はしない。
2回ノックをしてドアを開ける。
中ではアザゼルさんが白衣を着た理沙と何かを話していた。
眼鏡で白衣・・・・・・。可愛い。大人ぽい雰囲気の理沙に白衣と眼鏡はぴったりだ。
「おお! 理沙ちゃん、すっごい可愛い!」
後ろから部屋を覗いていた日向が理沙を見て騒ぎだした! それに気づいたアザゼルさんと理沙がこっちを向いて言った。
「やっと来たか。早く中に入れ」
「一応仕事なんだから遅れたら駄目よ。5分は早く来なさい」
「ごめん。日向が寝坊したのが悪いんだ」
「えっ!? 春くんの方が遅かったじゃん!」
俺の言い訳に日向が頬を膨らませて反論する。確かに今日は俺の方が遅かった。でもいつもは日向の方が遅いだろ。
言い訳なんてどうでもいいと言うようにアザゼルさんが紙を渡してきた。
紙には板チョコと金色の杯の写真。そして「願いを叶える菓子」という文字が書いてある。
この時点でなんとなく察しがつく。要するに・・・・・・。
「この願いを叶える菓子を探してこい・・・・・・と?」
「そうだ。よくわかんねぇんだがその菓子には聖杯が使われた恐れがある。じゃなきゃ願いを叶えるなんて出来ねぇからな」
俺の質問にアザゼルさんは頷いて答えた。
聖杯・・・・・・奇跡を起こす杯。その奇跡は俺の全てを奪って、全てを救った。
今となっては昔の話だけどな。
「一応、人間界にあることは判明してる。頑張れば今日中に見つかるだろ」
「どこにあるのかわかるなら自分で探せばいいじゃないですか! なんで俺に────」
「バーカ。簡単に見つかったら面白くねぇの。黙って探してこい」
この野郎・・・・・・。見失ったんじゃなくてわざと見逃してるのか! 仕方ない。やってやろうじゃないか。さっさと見つけてざまあみろ! って言ってやる!
指で魔法陣を描く俺をアザゼルさんが声をかけて止めた。
「いいか。仕事はあくまでも入手だ。ぜってぇ使うなよ」
低くて重い声。でも心配してくれてるのはわかる。だから精一杯元気を出して答える。
「わかってますよ。じゃあ・・・・・・行ってきます!」
親指を立てて、魔法陣を光へと飛び込んだ。
次回は本編のまとめです。
これの続きはその後に掲載させていただきます。
今回の話を締めに行くと確実に本編の最終回がバレるんですよね。まあ気にしないでいただきたいです。




