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不安の波紋



「まさか白の友達になってるとは思わなかったな」


暫くしてアルマロスを部屋から連れ出して言った。


「別に・・・・・・。人間界にいるならある程度の関係は築いておいた方がいいと思っただけ」


アルマロスが興味なさげに答えた。こいつほんとに小学生か? 大人びてるっていうかなんというか・・・・・・。

まあ大人しくしてくれるなら問題ないんだけどさ。


「そうか。それでもいいや。白の友達が増えるなら」


白にはいろんな人と触れ合ってほしいからな。でも男と付き合うのは嫌だ。これだけは絶対に譲れない。


「お兄ちゃん! 魔法の宿題教えて!」

「ちょっと待ってろ! すぐ行くから!」


リビングから顔を出した白に答えてアルマロスの頭を撫でる。


「人間界で天使1人って心細いかもしれないけど。なんかあったら言ってくれ。できる限り力になるから。じゃあ部屋に戻ろうぜ 」


部屋に入る直前にアルマロスが呟いた。


「あなた・・・・・・おかしい」

「おかしいって悪魔だから?」

「そう。悪魔なのに他人のことばっかり考えてる。だからおかしい。悪魔は・・・・・・」

「自分の欲望を満たせればそれでいい?」


アルマロスが俺の言葉に頷いた。なんとなくはわかる。だって俺の見てきた悪魔にもそういう奴はいたから。


「俺は契約悪魔なんだよ。だから元人間。ちょっと色々あって死んで悪魔になった。それに後悔はない。悪魔になったおかげで沢山の人に出会えたから」

「人間の敵になって殺されるかもしれないのに?」

「それでも俺を理解してくれる人がいた。支えてくれる人がいた。だから大丈夫だ。たとえ人間に殺されそうになっても俺は・・・・・・人間を守るために戦うよ」


俺はそう言って精一杯の笑顔を見せた。て言ってもまだ俺は弱いから難しいんだけど・・・・・・。今度シグムントさんに戦い方教えてもらおうかな。


「契約・・・・・・。そう。契約だったんだ。本当だったんだ、人間って話」

「当たり前だ。白だって人間なんだから兄の俺が人間じゃないわけないだろ」

「・・・・・・人間? あれが?」


怪訝そうな声を上げるアルマロス。何かおかしいこと言ったか?


「違うのか? 俺には人間にしか見えないけど」


アルマロスは俺を無視してリビングに入っていった。話くらい聞いてくれ・・・・・・。これだから最近の若者は。

俺も若いけどさ。


リビングに戻るとアルマロスが白の宿題を纏めて渡してきた。


「これ、白が1時間で終わらせた。しかも全部暗算で。人間って全員そんなことできるの?」


宿題は算数のプリントと理科のプリントだ。冊子になってるのかよ。20ページくらいあるし。俺なら途中で諦める量だ。

中は綺麗に纏められていて途中式も書いてある。2桁の掛け算まで暗算でやってあるあたり頭の良さがわかる。

・・・・・・あれ? 白ってこんなに頭良かったけ?


「白、これ答え見た?」

「ううん。見てないよ。問題見てたら答えが頭の中に浮かんできたんだ。桜さんが教えてくれたおかげかな?」


白の様子を見る限りじゃほんとに見てないか。よく考えたら桜と理沙に教えてもらってるんだから出来て当たり前なんだよな。

2人に効率の良い暗算の方法でも教えてもらったんだろう。


「この程度の問題なら白と同学年でも1時間で出来るだろ」


アルマロスに宿題を返した。アルマロスは納得のいかないような顔をしてるけど気にしない。

算数と理科。合計で40ページだと仮定しても1ページ1分とちょっとあれば達成出来るんだから少し頭の回転が早い子なら出来るはずだ。・・・・・・多分。


「まあ・・・・・・そうかもね。お兄さんの頭がおかしいんだから妹もおかしいか」

「おいこら、白は普通の子だ。俺の頭はおかしいかもしれないけど白まで巻き込むのはやめろ」


顎に手を当てて勝手に納得したアルマロスの頭をグリグリする。

うめき声を上げて離れようとするアルマロスがなんとなく可愛く感じる。毒吐くけどな。


「分かった、分かったから離して。痛い。グリグリ痛いから!」


泣きそうになったアルマロスの頭から手を離して言う。


「変なこと言ってないで宿題をやれ。じゃないと遊ばせないからな」

「やっぱり悪魔だ。宿題なんて最終日にやればいいのに」


お前は天使らしくないな。

文句を垂れるアルマロスに言いそうなったが我慢した。これを言ったらまた何か言われそうだ。


「それで? 何がわからないんだ?」


宿題に手をつけたアルマロスを見届けて白の隣に座った。

白が見ているプリントには「一属性の魔法を使えるように」と書いてある。魔法が使えるようになることが宿題か。


「礼装持ってないから出来ないんだ」

「学校で支給されたのは?」

「夏休み前に回収された」


つまり、礼装も自分で用意しろってことか。うわぁ、予想外の出費だ。

白と2人でため息をついた。だってこんなの絶対・・・・・・おかしいよ。宿題の為に金を使うなんて。


「しょうがない。俺のを貸してやるよ。白はそれで我慢してくれ」

「うん、分かった。じゃあこれは後回しね」


宿題が1つやらなくて済んだからか嬉しそうにする白。

学校も結構危険な宿題出すんだな。暴走とかしたらどうするつもりなんだろう?


「ねぇお兄ちゃん。宿題終わったら皆で海に行こ。スイカとか持って行って」


白が手で大きなスイカを作って言った。スイカは駄目だろ。他の人に迷惑になるし。


「皆って・・・・・・。ああなるほど。保護者の代わりになれってことか」


周りの小学生を見て確信した。だって俺を見て笑ってんだもん。すぐにわかる。


「はいはい分かったよ。俺の宿題が終わったらな」

「お兄ちゃん補習あるからまだ先のことになるね」


ため息をつく俺に白がため息を重ねた。補習は終わってるよ。白には言ってないけど。

海に行くのは魔界から帰ってきた後だ。白泉とか香那を連れて行くか。そうすれば俺も暇じゃないし約束も果たせる。


アルマロスが拳を握る俺に気づいて近づいてきた。


「よくわからないけどまた暴れるんだ」

「またって。俺のこと知らないだろ」

「天界でヴリトラが暴走したのは知ってる。この前のバアルのことも」


マジかよ。結構有名なんだな、俺って。・・・・・・いや、普通に注意しろって話か。龍の力の暴走なんてシャレにならないんだから。


「今度は魔界でちょっとな」

「それは悪魔も敵に回すってこと?」


アルマロスの質問に少し首を傾げる。どうなんだろう? 魔王の調査をするんだから敵に回すんだよな。でも和平が成立した今、戦う理由なんてないはずだ。


「わからないけど魔王様がやばい隠し事をしてるらしいんだ。だからそれの調査をな」

「ふーん。大変だね、和平派っていうのも」

「まあな。でも関係ない人たちが沢山死ぬよりマシだろ」


英雄兵器もそうだけど。魔王様やサタナキア、そして前バアルの人たちの考えてること。英雄兵器が関係してるならろくな話じゃないと思うから。


「いつの間にかお兄ちゃんとアルマロスが仲良くなってる!」


耳打ちし合う俺とアルマロスを白が指さしてきた。確かに言われてみればそうだ! 懐かれてるぞ! 契約悪魔だって言ったからかな?


「別に仲良くなったわけじゃない。ただ人には言えない関係なだけ」


アルマロスがはっきりとそう答えた。それは・・・・・・誤解を生むのではないでしょうか。実際場の雰囲気が凍ったよ。


「いや違う! 普通の関係だ。友達? 違うか。えっ・・・・・・となんて言えばいいんだろ」

「あった! お兄ちゃんの・・・・・・バカー!」


白が棚からトンカチを取り出して投げつけてきた! それが腹に直撃して悶える。

薄れていく意識の中で最後に見えたのはアルマロスと言い合いをしてる白だった。




更に時が過ぎて魔界に来た。

今日は魔王に接触する為にアモンの家と交渉する日だ。

アモンと言うと火野村先輩の悪魔の名前と一緒だ。つまり、先輩の実家ってことになる。


「先輩、顔色悪いですけど大丈夫ですか?」

「え、ええ。大丈夫よ。じゃあ行きましょうか」


先輩が明らかに無理して微笑む。止めた方がいいと思うんだけど今日は先輩がいなくちゃ話すことすら出来ないんだ。無理して頑張ってもらうしかない。


先輩の後に続いて中に入った俺たちを迎えたのは先輩とは似ても似つかない・・・・・・人型ですらない2体の悪魔だった!

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