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潜入! 脱出!


アーサーが剣を構えた。

たったそれだけで体中に悪寒が走る。


これが・・・・・・英雄かよ。

・・・・・・っていうかなんでバレた?

暴れすぎたか?


「天界には結界が張ってある。故に異物が侵入したら対応できる」

「・・・・・・結界? あれは和平が組まれた時に解かれたはずでは?」


アーサーの言葉に怪訝そうな声を上げるジャンヌさん。


「それに貴方がここにいることも不自然です。貴方は王城キャメロットから動かないはずではなかったのですか?」

熾天使セラフから緊急だと言われてな。駆けて来たのだ。だがジャンヌ・ダルク、お前が裏切るとは想定外だ」

「何を言ってるかわかりませんが・・・・・・貴方は和平に仇をなす者であるというのですね。なら・・・・・・倒します!」


ジャンヌさんは剣を抜いて構える。

そして俺を見て微笑んだ。


「北に進めば雲の宮殿が見えます。そこでミカエル様に協力を仰いでください。私はここで彼を倒してから行きます」

「でも、ジャンヌさん────!」

「ご主人様。賢明な判断をお願いします。ジャンヌ・ダルクが勝利することを信じ先に進むか、ここで足を引っ張って全員死ぬか」


俺の言葉を遮ってリンが選択を迫ってくる。


アーサーには勝てない。

三人で戦っても・・・・・・だ。でもジャンヌさんを見捨てて逃げろって言うのか。

それは・・・・・・嫌だ。


「マスター。約束です。また会いましょう。そして今度はゆっくりお話をしましょう」


変わらず微笑むジャンヌさんに返す言葉は────


「わかった。絶対一緒に帰ろうな」


ジャンヌさんに背を向けて壁を壊す。

そして羽を広げて空に駆け出した。




暫く飛んでると雲が多い土地へと入った。


雲というより綿菓子みたいだ。

モフモフしていて柔らかい。


それを避けつつ目の前にある宮殿に向かう。

その前に広がってる天使の群れが俺たちの状況を嫌でもわからせてくれる。


だからと言って立ち止まるわけに行かない。

第二段階セカンド・ギアを纏い群れの真ん中を突っ切る。


「ご主人様、お願いします!」


目の前に出現する魔法陣。

それに魔力を流して黒炎を発動する。


天使と同じくらい発現してる魔法陣から黒炎が溢れ出して天使を飲み込んでいく。


ヴリトラ、頼む。


『了解だ、主人様』


ヴリトラの呪いは天使の羽を蝕んで地に落としていった。

力任せの大技だけど時間稼ぎにはなるだろう。


「流石です、ご主人様」

「リンのサポートが無かったら出来ないよ。じゃあ急ごうぜ。早く終わらせて帰ろう」


隣にいるリンにそう返して宮殿へと入る。


雲の上に立てるとかの驚きはない。

それどころじゃないからな。


「お前、誰────」

「ごめん、時間ないんだ。後でな」


駆け寄ってきた天使を昏倒させて先へと進む。


とにかく真っ直ぐに進む。

すると広い部屋に出た。会議室みたいな場所だ。

そこに真っ白な六対の羽を広げた男がいた。


男は拍手と共にこう言った。


「君の「感情」は素晴らしいな。君より強い者を揃えたつもりだったのだが時間稼ぎにすらならないとは」

「誰ですか? 俺、ミカエル様に用があるんです。ここにいないなら────」

「熾天使ウリエル。それが俺の名だ。一応和平を掲げているから君の力になれると思うが?」


ウリエルと名乗った男は黒く逆だった髪を揺らして歯を覗かせた。


ウリエル・・・・・・。

ジャンヌさんを贈ってくれた人。

それに和平を掲げている。なら・・・・・・味方か。


「すいません。外にいる天使は全て俺がやりました。時間が無かったので」

「ああ、見ていた。ミカエルが面白いと言ったのも頷ける。人間も中々良いものを作り出す」


頭を下げる俺にウリエル様は笑って言った。


見ていた? さっきも「感情」がどうのって言ってたな。

闘技場みたいにカメラが仕掛けられてるのか。

熾天使が集まる場所なら当たり前か。

侵入者おれが入ってきたからここに避難してずっと見ていたのか。


「冷静ですね。普通は増援とか呼びませんか?」

「和平が組まれた今、悪魔の客に兵で迎えるのは無礼だろう。それに殆どの天使は別件に当たっている。お前程度に構ってる時間はないんだ」


「別件・・・・・・ですか。 和平が組まれたとはいえ無断入国をした挙句、熾天使の場(セラフィム)に乗り込んできた悪魔より大事なことがあるのですか?」

「ああ。天界に不死の力を持った悪魔が来てな。そいつを警戒して見張らせている」


リンの質問にウリエル様はそう答えて愉快そうに笑う。


「ミカエルもそいつに手間取っていてな。留守にしているんだ。だがお前に時間はないんだろう? 来い、少しなら手を貸してやる」


ウリエル様が部屋を出ていってリンと二人になった。


「おかしいですね。天界にシユウ・ルシファーがいることも。ご主人様に手を貸すことも」

「そうか? 和平側についてるならおかしくないと思うけど。シユウのことはしらないけど」

「初対面の侵入者ですよ。一国を預かる者が侵入者相手に協力するなんてどう考えても裏があります」


確かに・・・・・・言われてみればそうだ。

って言っても考えてもわからないんだよな。

今は・・・・・・いい方向に転がったって思っておけばいいか。


シユウのことは気にしない方がいい。




「なんですか、ここ?」

「書庫だが」

「見ればわかりますよ! なんで今書庫にいるのかを聞きたいんです」


ウリエル様に連れてこられたのは言われた通り書庫だ。


しかも何故か見張り付き。

見張りはしょうがない。乗り込んだ俺が悪いんだから。

だが書庫はなんだ!? 勉強しろってか! 馬鹿でごめんなさい!


英雄兵器ロンギヌスを壊すならそれの知識を持っていた方がいいだろう。俺も準備がある。その間に目を通しておけ」


ウリエル様が机の上に本を置いて書庫を出ていった。


本はどれも分厚いものだ。

これに目を通さなきゃいけないのか?

無理だろ。


とりあえず本を手に取って開く。

英雄兵器の仕組みやらが書いてある。

それは置いといて・・・・・・後ろから会話が聞こえてくる。


「やっと見つかったらしい。これから保護だってよ」

「堕天したのに保護するのか。・・・・・・ああ、そういうことか」

「これでやっと完成するな。聖王と聖女の戦闘データも取れたからな」


なんの話をしてるのかはわからないけど、聖王と聖女の戦闘データが取れたってことは決着ついたのか?

大丈夫だよな、ジャンヌさん。


リンが指で机を叩いた。

リンと視線を交わして小さく呟き合う。


「話を聞きましたか?」

「うん、まあ。どういうことなんだろうな。戦闘データって」

「話をちゃんと聞いてください。堕天、保護。この二つの単語が出てきたということは私達にとって不利な状況になったということです」


・・・・・・? どういうことだ?

堕天と保護・・・・・・。

堕天したってことは天使だよな。それで保護するってことは動物か。それとも大事な人か。

駄目だ、さっぱりわからない。


考え込む俺を見てリンがため息をついた。


「人間界の時間は午前11時です。私達が失踪したことはオーガスさん達にバレてるはずです。だとしたら・・・・・・」

「動く・・・・・・か。ってことはレナも一緒に動くことになるのか」


先輩たちだけだと天界に入ることは出来ない。

不法入国になるからだ。

レナは堕天してるしミカエル様の子だから保護って言葉に違和感があるわけじゃない。


「英雄兵器には龍の力が備わっているとミカエル様は言っていましたから龍の力を持っているレナさんが狙われるのも頷けます」

「でも完成したんだろ? だったら必要ないんじゃないのか?」


トントンとリンが指で本を叩いた。


リンが叩いたページには英雄兵器の簡略化と強化のことが書いてある。


「龍の力のデータは多ければ多い程良いということです。それにもう一つ気になることが・・・・・・」

「龍の力のデータのことだよな? どこから手に入れたのか」

「はい。天使に龍が宿ることは稀ですし。前に発見されたのと今回の姉妹は70年くらい間があると聞いています」


姉妹・・・・・・?

いや、察しつくけどさ。

あそこまで似てるとさすがにな。


それにしても70年は大きいな。

第二世代が完成したのは30年前だから英雄兵器はそれより後になる。

しかも完成したのは10年前だ。

英雄兵器の「素材」に龍持ちがいたのか。それとも・・・・・・。


「しかたないか。行こう。天使より先にレナと合流するんだ」

「はい、了解しました」


一回深呼吸して腹を抱えて叫ぶ。


「痛てぇ! 腹が痛てぇ! トイレ行ってきていいですか?」

「ちっ! お前が付いて行け。男のトイレなんて見たくない」

「いや、お前が行けよ。俺も見たくない」


言い争いをする天使二人。

くそっ、なんか悲しいな。


でも・・・・・・作戦通り!


第二段階セカンド・ギア


龍を纏って天使の頭を掴む。

そしてぶつけ合う。


気絶する天使の服を脱がせて体を縛る。

これで動けないはずだ。


「リン、行こう・・・・・・どうしたんだ?」


リンはファイルを手に取って固まっていた。

見たことあるファイルだ。

昨日も見た・・・・・・第三世代の研究レポート。


「い、いえ。なんでもありません。先に行きましょう」


閉じられたレポートに少し見えた文字。


龍王。

作られし機械神。

不必要な感情。

そして聖王「カツラギシキ」


それは俺の父親の名前だった・・・・・・。




襲ってくる天使の間を駆け抜ける。


「ご主人様、ウリエル様はどうしますか?」

「そっか、事情を話して協力してもらおう!」


そう答えて足を止める。

駄目だ、場所がわからない。

俺たちを囲む天使はさっきより強い。

なんか・・・・・・おかしい。


「でも、進まないとな。熾天使に協力してもらわないと成功は難しくなる」

「では・・・・・・一気に倒します!」


リンの魔法陣から剣閃の雨が降り注いで天使を貫いていく。


「多分、生きています」


いや、死んでるだろ。

血の海と化した廊下を見て思う。


余計な犠牲は出したくないんだけど、しょうがないか。

ウリエル様を探そう。




「これで・・・・・・全部ですね」


リンの言った通り最後の部屋を開ける。

ウリエル様の姿はない。

・・・・・・どこ行ったんだ。


「準備・・・・・・か。魔法陣で外に移動したのかもしれないな。待っててもしょうがないし、俺たちは先に移動しよう」

「はい、了解しました。ご主人様」


リンと共に窓から飛び出した。


龍の力は共鳴する。

力を使えば自然と出会う。


体を黒い炎で包んで目を閉じる。

いた・・・・・・龍の力を持ってる奴。しかも近づいてくる。

この感じは・・・・・・。


「何故ここにいる。桂木春」

「ちょっと用があるんだ。そっちこそなんで天界なんかに?」


目の前に飛んできた白い蛇を纏う男、シユウ・ルシファーに問う。


「英雄兵器、それを作り出した奴と戦う。そいつは俺を殺せそうだ」

「そうか。じゃあ俺と似てるな。俺は英雄兵器を壊そうとしてるから」

「あれを壊す? お前じゃ無理だ。あれは神を超える代物だ。龍を扱える程度の悪魔じゃ犬死するだけだ」


「ご主人様、ボーッと話してる時間は無さそうです」


リンの声を聞いて後ろを振り向く。

天使の大群が押し寄せてきてる。


この時間がない時に・・・・・・。


「とにかく逃げようぜ。そしてレナを探そう」


シユウを横切る。

シユウは大群を見て笑っているようだった。


「逃げないのか?」

「逃げる理由はない。あいつらが殺してくれるならそれでいい」


やっぱり変な奴だ。

俺にはよくわからない。


「じゃあ思う存分戦ってくれ。出来るだけ死人は出さないようにな」


そう言い残して俺とリンはシユウから離れた。




雲を抜けて半堕の町へと出てきた俺たちを出迎えたのは一人の天使だった。


この人も六対の羽だ。

会いたくなかったのに・・・・・・。


「初めまして、わたくしメタトロンと申します。侵入者ハル、今ここで命を散らすか。それとも大人しく捕まるか、選びなさい」

「死ぬ気はないし捕まる気もない。俺はお前を倒してでも先に進む!」


黒炎を纏う一撃をメタトロンの腹にぶち込む。

それを手で受け止めたメタトロンは笑う。


「この程度で熾天使に歯向かうと? 笑わせますね」


地面に叩きつけられて追撃の光が降り注いでくる。


「修行を思い出せ・・・・・・。手に纏った炎を前に薙ぐ!」


腕の軌跡を黒炎がなぞるように燃え盛る。

黒炎の壁は光を防いで消えていく。


体に黒炎を纏うように展開して飛ぶ。


黒炎を撒き散らしながらメタトロンとぶつかり合う。


光を受け止めて刀を作り薙ぎ払う。

砕ける刀を囮にして背中に回り込んで一撃を与える!

それさえも受け止めるメタトロン。


「だが・・・・・・俺の勝ちだ」


空を舞う黒炎の火の粉から魔法陣が展開される。

リンの逃げ場のない攻撃がメタトロンを襲う!


次々と致命傷を与えていく攻撃の合間に呪いを発動する。

それはメタトロンの動きを止め、体を蝕んで崩していく。


粉のように散っていく体でメタトロンはほくそ笑む。


「もう・・・・・・終わっている。レナ様は再び英雄兵器の糧になった。セラ様も直にそうなる。ジャンヌ・ダルクさえもな」

「どういうことだ? おい、ちょっと待て!」


問い詰める頃には遅く体は消えていった。


「急ぎましょうか」

「ああ、そうだな。レナが気になる」


それにしても体が散る呪いなんてあるのか?

いや、倒したんだ。気にしないでいいだろう。


不安をかき消すようにレナの魔力を感じ取る。


もう・・・・・・すぐそこにいる。

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