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日常の中に



三時間目は特にやることはなく自習の時間になった。


俺は桜や日向と話すことにした。

悪魔になってからゆっくり話す時間も少なかったからこういう時間は大切にしたい。


二時間目も美奈は郁奈の手助けもあって契約したし由紀は余裕でクリアした。

他の皆も御剣や火野村先輩、ヒルデ先生の手助けがあって全員契約できた。


ちなみに理沙は狸と契約したって言ってた。

化け狸らしくぬいぐるみみたいだと喜んでた。


「桜は何と契約したんだ?」

「私は兎です。臼と杵を持っていましたからお餅をつく兎でしょうね」

「・・・・・・なんか、個性的な兎だな」


それしか言えない。

兎はいいんだけど・・・・・・臼と杵ってどうなんだろう。


日向が話に割り込んで言う。


「私はね! ふふふ、熊だったんだよ! 小熊! もう、凄く可愛いいんだよ!」

「それは戦力として駄目だろ。まあ戦うことなんて考えなくていいか」


その分だけ俺が頑張ればいいんだから。

そもそもこいつらに戦力はいらないんだ。

余計なことは考えさせなくていい。


「マスター! あの人が怖いです! 助けてください!」


ジャンヌさんが駆けてきて抱きついてきた。

いい匂いがする!

しかもおっぱいが当たってる!

柔らかい感触が────ってノーブラですか!?

なんて役得! 今が最高の時期だと思いますよ、俺は!


「あなた・・・・・・自分で戦えますよね? 何故戦おうしないのですか?」


少ししてリンがレイピアを持って走ってきた。


戦ってたのか!? この二人!

でもジャンヌさんに傷はない。それに対してリンはボロボロだ。

かなり一方的な勝負だったんだろうな。


「まずはレイピアをしまおうか。怖いから」

「そうですよ! しまってください! 危ないです」


俺の声に続けるジャンヌさん。

この人もなかなか変な人だな。

大丈夫なのか? 結構心配だぞ。


「御主人様、少し話があります。そこのジャンヌ・ダルク擬きについて」


レイピアを消したリンがジャンヌさんを指さして言った。




場所を変えてリンと二人で話す。


「絶対おかしいです。私は裏があると思います」

「裏って・・・・・・。あの聖女が?」

「それが偽者の可能性もあります。聖女と呼ばれた人があんな振る舞いをするとは思えません」


確かに・・・・・・リンの言うことも一理ある。

俺もイメージと違うと思ったし。


「でも仲間になってくれるなら嬉しいだろ。例え裏切られるかもしれなくても俺は信じるよ。少なくとも今は仲間だからな」


リンに笑って答える。


正直に言うと美人が近くにいてくれることが嬉しくてしょうがないだけなんだけど。

あとリンを圧倒できるくらい強いなら俺の師匠になってくれるかもしれない。

リンとか御剣は戦闘スタイルが違いすぎて参考にならないんだよな。

脳筋の俺にテクニックで攻めるのは難しいんだよ。


「じゃあ戻るから。リンも仲良くしようぜ。いがみ合うより笑い合ってた方が楽しいだろ。じゃあな」


そう言ってその場から離れた。



戻るとそこに桜たちはいなくてジャンヌさんだけが残っていた。

何か考えてるみたいだ。

俯いて目を瞑っている。


邪魔しない方がいいよな。

でも少し話したいこともあるんだよな。


協力関係の話とか詳しいことは聞いてないし、ミカエル様が言ってた天界からの補助っていうのも気になる。

それがジャンヌさんなら本物だと思う。

ミカエル様が偽者を送ってくる理由がわからないからな。


やっぱり話そうか。

リンの言ってたことに白黒つけたい。


ジャンヌさんの肩を叩いて話しかける。


「ごめん、ちょっといいか? 話したいことがあるんだけど」

「ッ! ・・・・・・マスターですか。お話・・・・・・ですか? 私に答えられることだと嬉しいのですが」

「普通の雑談だから大丈夫だよ。天界の話とか聞きたいなって思ってさ」

「天界ですか? そうですね、良い所だと思いますよ。優しく厳しい人が多く祈りも真っ直ぐで美しいです」


祈りが真っ直ぐで美しい・・・・・・? 姿勢の話か?

俺にはよくわからないな。

でも・・・・・・楽しそうだ。笑って、誇らしそうに話してるからわかる。


「やっぱり天界って綺麗な人多いのか? 四大天使のガブリエル様とか」

「ええ、ガブリエル様はとても美しい方です。偶にお茶目なところもあって可愛いんですよ」

「おお! いいな、見てみたい。でも悪魔の俺じゃ無理か。はあ、いいなぁ天使は。悪魔なんて人ですらない奴とかいるからな」


綺麗な人もいるんだけどね。先輩とか、リンとか。

でもサイクロプスとか見るとちょっと違うなって思うんだよな。

前なんか闘技場の受付にサイクロプスがいてビビったぞ。


俺のぼやきにジャンヌさんは微笑んで答えた。


「天使にも人型でない者もいますよ。有名なところだとアルマロスと呼ばれる天使は犬のような姿をしています」

「犬・・・・・・? 耳とか?」

「はい。尻尾も生えています。あとは毛深い者もいますし四足歩行の方もいます。これは人それぞれですね。人に近しい姿を持つ者は力も強いと聞きます」


おぉ、犬耳。まさかの犬耳!

天使で犬耳って・・・・・・。やっぱり見てみたい!

一回でいいから行けないかな、天界。


今度レナに頼んでみようかな。

でもレナは学校だとあまり話してくれないからな、家で頼もう。


「他にはいませんか? そういう軽く動物と混ざった人」

「そうですね。アラエルという天使が鳥の姿をしているくらいでしょうか。他は魔物と同じような扱いをされているものばかりです」

「鳥ですか・・・・・・。程度によるな・・・・・・」


ジャンヌさんに聞こえないように呟く。


ハーピィって魔物はかなり人間に近いって聞いたな。

それと同じくらいかな? だったらいける!

話を聞けば聞くほど行きたくなる。

もうやめといたほうがいいな。

わがまま言いそうになる。


「そうだ。ジャンヌさんって人間の魔力から生まれたんですね? 他にいるんですか? そういう英雄で天使の人」

「はい! 沢山いらっしゃいますよ。とても尊敬の念できる方ばかりです」


俺の質問にジャンヌさんが嬉しそうに答えた。


こういうところを見るかぎり偽者だと思えないよな。

明るくて話しやすい人だしいい人だってことはすぐにわかる。


「聖王と呼ばれているアーサーを始めとする円卓の騎士の方々達やアキレウスなど。人間界に名を残した大英雄です」


円卓の騎士・・・・・・。人間界にもあるんだよな、円卓の騎士団ナイツ・オブ・ラウンドって組織。

全くいい思い出ないけど。

聖剣を使うことといい元はアーサー神話から来てるんだろうな。


「その人たちはやっぱり熾天使セラフでしたっけ? の人たちと一緒にいるんですか?」

「いえ、基本的に英雄の方々は熾天使様方の下に付くことはありません。ですが、今回のように特別な理由がある場合に限って命令が従い動くことになっているんです」


「つまり・・・・・・今天界で緊急事態が起こってるって考えてりゃいいのか? 聖女ジャンヌ・ダルク」


横から荒野先生が歩いてきてジャンヌさんに問うた。


今帰ってきたのか、汗だくだ。

どんだけ急いできたんだ?

聞いたら文句言われそうだから黙ってるけど。


「私は和平に協力しろと言われただけですが。どうかしたのですか?」

「・・・・・・そうか。ならいい。だがミカエルの命令ならわかるがウリエルだと・・・・・・」


荒野先生がブツブツ呟いて俺の肩を掴んだ。


「ミカエルが何言ってきても無視しろ。絶対だ。いいな?」

「えっと、何言ってるかわからないんですけど。ミカエル様が俺に用があるんですか?」

「ねぇよ。とにかく、ミカエルに何か言われたら俺に即報告だ。ミカエルには考えておくって言っとけ。いいな!?」


妙に強く念を押してくる荒野先生に頷く。

すると荒野先生がため息をついてまたブツブツ言い始めて姿を見る消した。


「なんだったんだろな」

「すみません、私にはわかりません」


まあ、当たり前だな。


何かが始まりそうな三時間目だった。




昼休み。

いつものメンバーにジャンヌさんとヒルデ先生を交えたよくわからないメンツで昼ごはんを食べることになった。

おかげで白泉しらいずみは他の男友達と食べてる。

御剣は自分のクラスで友達と食べるらしい。

この時点で悪魔関連の話ではないことが確定してる。


つまり、俺のお説教の可能性が高い。

俺が何をしたんだよ・・・・・・。


誰も喋らない気まずい空気の中、最初に口を開いたのは火野村先輩だった。


「春、今日からヒルデ先生が家に泊まることになったわ」

「そうですか。・・・・・・はっ!? 泊まるんですか? 何日?」

「今のところ未定です」

「それは住むの間違いだと思いますが・・・・・・」

「ちょっと待ってください。住むって困ります。ただでさえジャンヌさんが来ることが決まってるんですから!」


リンの言葉を聞いて更に焦る。


食費がさすがにやばい。

レナって意外と食べるんだぞ。

他にも先輩も、理沙だって。

白にだってこれ以上貧しい思いはさせたくないのに、更に養えっていうのは無理がある。


ヒルデ先生が申し訳なさそうに言った。


「ちゃんと食費や光熱費は負担します。それに・・・・・・一応アザゼル先生からの命令です」

「荒野先生から? 和平関係ですか? でも俺は────」

「龍の力を持つあなたとミカエル様の子の護衛。及び貴方方の生活管理を任されました」

「・・・・・・つまり?」

「桂木さんに家事の負担がいかないように補佐と卯月さんとの不順異性交遊を止める為です」


余計なお世話だ!

・・・・・・っていうかしてないって言ってるじゃん。

嘘だけどさ・・・・・・。


でも確かに理沙に泊まり込みで手伝ってもらわなくても良くなるんだよな。

他にも食費や光熱費を負担してもらえるなら白に食べさせる料理も少し変えられる。

ついでにトレーニングできる時間も増えるしルーンの魔法陣を教えてもらえる可能性もある。


メリットが果てしなく大きい。

特に家事とトレーニングが大きい。

白の勉強だって桜に頼ってる。それをヒルデ先生にしてもらえれば桜の迷惑にもならない。

先輩がやってくれれば嬉しいんだけど。怖いんだよな、何をするかわからないから。


逆にデメリットは理沙のことだな。

正直、住人が増えたことによって家事の負担が半端じゃない。

それを理由に理沙と会える時間が増えたり話したり出来てたこともある。


第一自由時間が増えたら俺自身のトレーニングに使いたい。

あの英雄の動きの模倣をもっと素早くできるようになりたいし体への負担も減らしたいからな。


それを考えると家にいてもらった方が嬉しいよな。


「あの、それって和平にも関係あるんですよね?」

「それはどうかわかりませんが、個人的に動くつもりではあります。桂木さんには迷惑をかけるつもりはありませんから安心してください」


ヒルデ先生って結構無茶する人だな。

話を聞いて思った。


だって家事をやって俺たちの生活管理をして護衛もやって和平の為に働いて、更に教師としても働くって言ってるんだ。

いつ寝るんだよ。倒れるぞ、ほんとに。


「私は反対です」


そう言ったのは理沙だ。


和平のこととかわからないから黙ってたんだろうけど、俺が何も言わないからそういうわけにいかなくなったんだろう。

俺が断る理由がないことも分かって言ってると思う。


「だって教師と生徒が同棲なんておかしいじゃないですか」

「おかしいと言うのなら。桂木さんの状況の方がおかしいですよ。小学生と二人暮らしなんて許されることではありませんよ。それに年の近い異性を平気で家に泊めているのですから。教師として放っておけるわけないでしょう」


ヒルデ先生の言う通りだ。

そもそも白と二人暮らしができてる時点でおかしい。

そのおかげで先輩たちと暮らせるんだけどさ。


監視役がいるなら教師としても安心できるって考えなんだろうな。

ヒルデ先生はそういうの厳しいから信頼もされてると思うし。


まあ、しょうがないことだよな。


「わかりま────」

「桂木君、少しお話いいですか?」

「えっ?」


窓の外が光ってミカエル様が現れた。


朝も来たのに昼も来るのか・・・・・・。

大変だな、熾天使って。


現れたミカエル様に跪いてジャンヌさんが言った。


「お久しぶりです、ミカエル様。大天使ジャンヌ・ダルク、ウリエル様の命令に従い悪魔桂木春に付くことになりました」

「はい、話はアザゼルから聞きました。そのことも話したいのですがもう一つ大事なことがあるのです」


ミカエル様が微笑みを消して言った。


さっき・・・・・・荒野先生に言われた。

────何を言ってきても無視しろ。

それの意味はわからない。でも危ないことなのは肌で感じる。


英雄兵器ロンギヌス。一部の天使が開発した人型兵器が人間界で確認されました」


その一言で教室内の空気が一変した。


火野村先輩は唇を噛んで体を震わせて、ヒルデ先生が舌打ちと共にお弁当を魔法陣の中にしまう。

リンとジャンヌさんは微笑みを消して警戒したように息を飲んだ。

一番変わったのはレナだ。

遠目でもわかるくらいに怯えてる。


俺でもわかる。

ロンギヌス・・・・・・遥か昔に神を殺したとされる槍。

ニュアンス的に別の物なんだろうけど凄い危険な物なのはわかる。


俺の背中に冷たいものが走ったような気がした。





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