使い魔
サタナキアとのバトルから一週間。
六月に入って雨が続いてる。
おかげで洗濯物が乾かないから最悪だ。
ストーブを引っ張り出して使ったりコインランドリーに走ったり・・・・・・。
とにかく色んなことをして生乾きを凌いでいる。
透けブラは嬉しいけど生乾きは嬉しくない。
透けるのを気にしない日向は見放題でありがたみが薄い。
逆に桜はセーターを来てるから全く見えない。
「誰か俺にブラジャーを見せてくれ・・・・・・」
そう呟く俺にリンが若干引き気味で答えた。
「御主人様、少し黙って。今食事中だから」
「リンが寝坊したのが悪いんだろ。もう八時過ぎてんだよ。もう俺たち二人しかいないぞ」
「昨日の御主人様が悪いんだよ。下手なくせにネチッこく攻めるから・・・・・・」
「食事中だぞ」
「じゃあ言わせないでよ」
・・・・・・何この会話。
しかも蔑まれたぞ。相変わらず主人の扱い酷いな。
「じゃあ俺、先行くから。合同授業よろしくな」
「はい。私としては御主人様のミスの方が心配ですが」
うるせっ。俺がミスる可能性の方が高いとしても、主人にそういうこと言ったら駄目だろ。
「と、とにかく遅れるなよ! 俺が怒られるんだからな!」
そう言って家を飛び出した。
「お前は一回ミスればいいんだ。その後にリンが成功させる」
朝の教室で荒野先生が俺に説明する。
合同授業の内容は使い魔との契約らしい。
使い魔っていうのは簡単に言うと魔物だ。
魔物と契約して主従関係を築くのが今回の授業の目的らしい。
「俺も成功させたいです。っていうか成功だけ見せればいいじゃないですか! 失敗を見ける意味は? 見せしめですか!?」
「人間に魔物の恐ろしさを見せなきゃならないだろ。お前なら自衛も出来るし大丈夫って判断しただけだ」
「あと桂木君が召喚するのは間違いなく変な魔物ですからね」
魔法陣の光と共に現れたミカエル様が付け足した。
完全に余計な補足だ。
しかもなんだ? 変な魔物って。
褒め言葉ではないのは確かみたいだけど・・・・・・。
そんな俺の様子に気づいたミカエル様が続けた。
「使い魔の召喚は呼び出した者に近い性質を持った魔物が出てくるのです」
「エロいことばっか考えてるお前が呼び出すのは変な奴だってことだ」
「俺だってまともなの呼ぶかもしれないじゃないですか!」
ミカエル様の後に続けた荒野先生に叫ぶ。
いくらなんでも失礼だろ。
別にエロいことしか考えてないわけじゃないからな。
「とにかく忘れんなよ。じゃあな」
そんな俺を無視して荒野先生は教室を出ていった。
「そもそもなんで使い魔なんて使わなきゃいけないんですか? 人間に悪魔と暮らせって無理だと思うんですけど」
俺の疑問にミカエル様が答えてくれた。
「和平は組めましたが戦争の過激派が残っています。人間界を刺激して和平を崩されては困りますから。アザゼルは人間を守るための手段として使っているのでしょう」
「あの人も考えてるんですね。正直嫌がらせの為にやってるんじゃないかと思ってました」
でも見せしめに俺が使われるのは納得いかない。
こうなったら意地でも成功させて悔しがらせてやる。
「桂木君。良かったら使ってください」
ミカエル様に本を渡された。
その本は「召喚術」と書かれている。
察するに使い魔召喚の本だ。
なるほど、これを使えば荒野先生に一泡吹かせられるかもしれないな。
「私の親友からのお礼だそうです。和平が組めたのはあなたの働きも大きいですから」
「親友・・・・・・ですか? とにかくありがとうございます! これであの人の度肝を抜かられる・・・・・・」
強くてかっこいい使い魔を召喚して驚かせてやるぞ。
しかもそれを操れたらモテるかもしれない。
「桂木、お前気持ち悪い顔してるぞ」
俺の顔を覗いた白泉が呟いた。
余計なお世話だ!
授業開始のチャイムが鳴った。
演習場では使い魔の説明がされている。
俺はそれを控え室で見ていた。
ミカエル様から貰った本に書いてある魔法陣は見たことないものばかりだ。
天使と悪魔の魔法陣って違うのかな?
でもルーンの魔法陣っていうのもあるんだよな、確か。
種族が違う魔法陣で威力が変わるのか試したいな。
今度やってみよう。
付箋が貼ってあるページを開く。
簡単な魔法陣と効果が書いてあった。
強力な魔物────幻龍種? を呼べるものらしい。
なんかかっこいい!
決めた! これを呼ぼう!
見てろよ、荒野先生!
絶対に度肝を抜いてやる!
スピーカーから俺の名前が呼ばれた。
さあ出番だ!
競技場に出ると周りから拍手が上がった。
なんか気持ちいいな! テンションが上がるぜ!
龍の力でも見せてやろうかな!
「第一段階」
俺の言葉と共に黒炎が体を包む。
着物姿に変化した俺は先生から杖を受け取って振り回す。
透明な軌跡が細かな光となって消えていく。
これで魔法陣を描くんだな。
よし、やるか。
杖に魔力を流して本に書いてある通りに動かす。
透明な軌跡は円と模様を描いて光を灯す。
あとは魔力を流して起動するだけ。
魔法陣に触れて魔力を流す。
光り輝く魔法陣とその中から現れる真っ白のクリスタル。
それが割れて女の人が出てきた。
クリスタルの光の中、その女の人は微笑んだ。
「私の名はジャンヌ。ジャンヌ・ダルクです。あなたの思いに応えるために来ました」
「・・・・・・えっ? ちょっと待って! すいません! どういうことですか!? なんか人出てきたんですけど!」
『お前、そこから動くな! 絶対に動くなよ!』
スピーカーから荒野先生の怒声が響いた。
これ、やばいやつだ。
しかもどういうことだ?
ジャンヌ・ダルクってあれだよな? 百年戦争の英雄。
なんでその人が俺の目の前に? しかもイメージと違う。
クリーム色の長髪と透き通るような瞳。
白を基調とした服。露出は少ないけど体のラインはしっかりとわかる。
大きい、そして細い。あと肌が白い。
誰かに頭を叩かれた。
荒野先生だ。
走ってきたのか、息が切れてる。
「使い魔の召喚に英雄が応じるなんて聞いたことねぇぞ。お前何やった?」
「知りませんよ。俺はミカエル様から貰った本に書いてある召喚術を使っただけなんで」
「あ? ミカエルから? おい、それ貸せ」
荒野先生に本を渡してジャンヌと名乗った女の人と向き合う。
「本物?」
「はい、本物ですよ。マスター♪」
なんかイメージと違う。
だって聖女だろ。なんか・・・・・・こう、お固いイメージがあったんだけど。
なんだろう、この人。
凄く・・・・・・嘘くさい。
「えっと・・・・・・俺の使い魔になるのか?」
「少し違います。アザゼル様も仰いましたが人間を使い魔として使役するのは不可能です。ですから私とマスターは協力関係を結ぶことになります」
困惑する俺に追撃の一言。
協力関係とは? 既に嫌な予感しかしませんよ。
「ごめん、もう限界。理解が追いつかない。簡単に言って」
「あなたは私に衣食住を提供する。そして私はあなたの為に戦う。そういうことです」
「なるほど! わかりやすい」
「お前らは馬鹿か!」
荒野先生の一喝が入って会話が終了した。
本はもう読み終わったらしく畳んで捨てられてる。
人の物を捨てるなよ・・・・・・。
「聖女ジャンヌ・ダルクなんて人間界に置いとけるわけねぇだろ! 帰って寝てろ!」
「残念ですがそれは出来ません。ウリエル様から直々に命じられたことですので」
「あ? ウリエル? おい、春。どういうことだ? ミカエルから貰ったんだよな?」
「はい。ミカエル様の親友からの贈り物だってミカエル様経由で貰いました」
荒野先生が驚いたように目を見開いてため息をついた。
「・・・・・・もういい。直接聞いてくる。契約すんじゃねぇぞ」
そう言い残して魔法陣の中に消えていった。
『予定とは違いますが授業を続けます。桂木くん、もう少し競技場にいてください』
まだ授業は続くらしい。
授業の合間の休み時間。
予定変更のため出番がなかったリンとジャンヌさんが対峙していた。
「御主人様、流石に英雄との契約はいけません。しかも聖女です」
「何を言っているのですか? 契約ではありません協力をするだけです」
「それを契約と言うんです。というより聖女と呼ばれるような性格はしてませんね。偽物では?」
「吠えないでください、犬。私が本物かどうかも見抜けないのですか? でしたら嗅覚も使えない用無しの犬ですね。マスターに蔑まれるのがお仕事ですか?」
リンはジャンヌさん────というより俺に言いたいらしいがジャンヌさんが全てに答えてしまうため、俺が喋ることはない。
ていうか思ったより毒舌ですね。
犬って・・・・・・。
「御主人様はそんなことしません。寧ろ蔑むのは私ですから」
「おい、ちょっと待て! 余計なこと言わなくていい!」
「踏むと少し喜ぶんですよ、御主人様は」
「おいこらあぁぁぉあ! 言わなくていいって言ってるだろ! しかも喜んでないし!」
「桂木、お前・・・・・・」
ほら、白泉にも変な目で見られてる!
もう嫌だ。誰か助けてくれ。
「もう俺が話すから! リンは黙ってて。・・・・・・えっとさ、そのウリエル様? って誰なんだ?」
「御主人様、知らないんですか? ウリエル様は────」
「ウリエル様は熾天使と呼ばれる天使の一人です。ミカエル様の古くからの親友とも聞いております」
わざとらしくリンの説明に被せるジャンヌさん。
しかもドヤ顔で。
なんかリンはさっきから不機嫌だし。
なんか嫌な空気だな。
俺としてはさっさと終わらせて桜と話したいんだよな。
せっかく恋人になったんだからデートとかしたい。
結局理沙とも行けなかったから行きたいんだよな。
皆で遊びに行くのも面白そうなんだけど、やっぱり初デートは二人きりがいいよな。
・・・・・・ってそんなこと考えてる場合じゃなかった。
「じゃあ、そのウリエル様がジャンヌさんに俺と協力して何かをしろって言ったのか?」
「はい♪ 天界からの補助だと言っていました」
ジャンヌさんが頷いて答えた。
天界からの補助?
これも意味がわからないぞ。
俺は和平の為に戦うわけじゃないし、っていうかそう決めたから。
まあ、ハーレムを作るなら平和の方が都合がいいんだけどさ。
ゆっくりイチャイチャできるし。
「私は反対です。聖女を従えるなんて。他の天使から殺される可能性も出てきます」
リンは不機嫌そうに言った。
確か、人間の希望とかで生まれたのが英雄の天使版なんだよな。
じゃあジャンヌさんもそういうもので生まれたのか。
そう考えると悪魔である俺と関わるのは良くないよな。
うん、難しい。積極的に和平に関わる意思がない以上、協力関係を結ぶのは迷惑だよな。
先輩に聞いてみようかな?
「確かに天使に狙われるのは嫌だ。でも・・・・・・」
美少女を失うのは辛い。
割と嫌われてないし良い関係も築けそうな気もする。
何よりマスターって響きがいい。
スタイルもいいしな。
悩む、悩むぞ! 俺は今、最高の悩みを持っている!
女の子を傍に置くかどうかを悩める日が来ようとは!
父さん、俺はやったよ!
「マスター? そろそろ授業が再開される時間だと思うのですが宜しいのですか?」
ジャンヌさんが俺の顔を覗き込んで言った。
やっぱり綺麗だ。
先輩も綺麗だけど、違うんだよな。
なんだろう? 儚い? そんな感じがする。
「ああ、じゃあ行こうか。今回の合同授業は俺も実技が出来るから嬉しいんだよな」
「前も合同授業あったの?」
「まあな。リンと会う前に。今思えばあれから始まったんだよな」
リンと歩きながら話す。
懐かしいな。
まだ二ヶ月前だけどな。
なかなか濃い二ヶ月を過ごしてるな、俺。
戦って、死にかけて、殺して。・・・・・・思い出したくなかった。
「だから今が楽しいのかもな」
そう呟いてリンの手を握って走る。
まだ授業は始まったばかりだ。
「じゃあ桂木くんは誰に付きますか?」
何故か一人一人指名して選ばせられる方法をとったヒルデ先生。
しかも俺からだぜ。
中途半端だよ! 俺、二年三組で出席番号最後の方だぞ! 何故俺から!?
そんなこと言えるわけもなくため息混じりに答える。
「誰でもいいです。やる事一緒ですし、多分日向がミスるんでフォローしなきゃいけないですから」
「むむむ、それどういう意味? 私もやれば出来るよ! ・・・・・・多分!」
自信満々に言った日向は置いといてほんとに誰でもいいんだよな。
じゃあ・・・・・・適当に可愛い子を選ぼう!
誰にしよっかな。
「はいはいはい! 私が教えて欲しいです! ねっ? 一緒にやろ? 由紀ちゃん、美奈ちゃん!」
聞いたことのある声が聞こえた。
ああ・・・・・・レポートのこと忘れてたな。
どうしようか・・・・・・。絶対怒られる。
「桂木くん選ぶのはあなたです。誰にしますか?」
ヒルデ先生から選択を迫られる。
キラキラした視線が向けられてる。
逃げ場はないらしい。
「・・・・・・あの三人でお願いします」
短髪の女の子、確か霜月香那を指さして答えた。
なんというか・・・・・・先が思いやられる。
「じゃあやるからな。はい、杖持って」
三人に杖を配って持たせる。
一人ムクれてる奴がいるが気にしない。
「あとは魔力を流して紙に書いてある円を描くだけ。簡単だろ?」
簡単に説明して杖を振るう。
事前に軽い説明と魔法陣が書いてある紙を渡されてるからこの程度で大丈夫のはずだ。
魔力の扱いは礼装で慣れてるはずだからな。
「おー! ほんとだ! 簡単にできるよ! 綺麗だね」
早速魔力の軌跡で遊び始める香那。
今はやめてくれ・・・・・・。
ヒルデ先生に見られてんだよ。
俺は教師にとって危険人物でしかないんだからな。
「遊ぶのはやめてさっさと終わらせてくれ。成績に響くぞ。ほら、香那も────」
香那を止めようと動こうとする俺の袖を誰かが掴んだ。
良月美奈だ。
相変わらず気が弱そうだ。
挙動不審になってる。
「あ、あの・・・・・・わからなくて。教えて欲しいです」
「わからないって言われてもプリント渡されてるだろ? その通りにやればいいんだけど」
「そう・・・・・・ですよね。ごめんなさい」
美奈がそう言ってプリントとにらめっこし始めた。
・・・・・・ああ、俺の馬鹿。
ヒルデ先生からの視線が痛い。
わからないから聞いてきたのに追い返してどうすんだよ。
美奈に近づいて座る。
「ほら、どこがわかんないんだ?」
「でも・・・・・・」
「いいから。今は俺が先生なんだから何でも質問しなさい」
なんとなく胸を張ってみる。
なんで俺こんなことしてんだろ。
そんな疑問が頭をよぎるが気にしない。
「魔法陣って一筆じゃなくてもいいんですか?」
美奈の質問は初歩的なものだ。
でもわからなくもない質問だ。
魔力の線を切るかどうか。
完全に視認できるかわからないから円や模様が書きにくいんだ。
だから一筆で書いた方がいい。
っていうかプリントにはそう書いてある。
でも魔法陣は一筆で書くのは難しいんだよな。
だからわからなくもない。
「分けても大丈夫だ。だからゆっくり書いて、一発で成功させてな。香那みたいに遊ぶのは無しだ。怒られるから」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
小さく会釈する美奈。
なんか可愛い。
あと黒タイツ。
桜を見る度に思うけどいいよね、タイツ。
なんか光って見えるよ。あとスベスベしてそう。
あとは香那と由紀か。
由紀は放っといても出来るから香那だな。
「ねぇねぇ、これでいいの? なんか出てきたけど」
香那の声に振り返ると既に魔法陣を描いて猫を呼び出していた。
・・・・・・何やってるんだ、こいつは。
いつのまに! いや、そうじゃない。
えっ? 凄いびっくりなんだけど!
「あ、ああ。成功してる。あとは契約だけだ」
「契約? 何それ? この後どうすればいいの?」
首を傾げる香那に頭を抱える。
こいつら選んだの間違いだ。
もっと普通の子が良かった。
ほら、日向とか・・・・・・いや、あそこは駄目だ。
日向の方に視線を向けると日向自身がミスってた。
やっぱり失敗してるじゃん・・・・・・。
・・・・・・ってそうじゃない!
「第二段階! 日向、どけ!」
そう叫んで地面を蹴る。
日向の魔法陣から呼び出された魔物を床に叩きつけて気絶させる!
『ご苦労だな、主人様』
まあな。でも殺し合いよりはマシだよ。
龍の力を解いて息を吐く。
日向が駆けてきて言った。
「あはは、ごめんね。巧く出来たつもりだったんだけど・・・・・・」
「少しだけ模様が間違ってる。ちゃんと確認してから起動してくれ。怖いから」
あと俺が怒られそうだから。
それにしてもこんな授業をして怪我したら責任問題だよな。
そんなデメリットを孕んでまですることなのかな?
「桂木君が勝手に戦うから大丈夫なんだよ。桂木君は反応速度早いからすぐに対応できるからね」
御剣が俺の心を読んだかのように答えた。
なるほど。つまり利用されてると。
あの人、教師とは思えないぞ。大丈夫か?
「桂木さん! とどめを刺してください!」
「えっ? やばっ────」
ヒルデ先生の声が聞こえた時には遅かった。
さっきの魔物が大口を開けて俺と御剣、そして日向を飲み込もうとしている。
ヴリトラ、ゲイ・ジャルク。
『今日は人使いが荒いな。まっ、体を慣らすためだと思っておくか』
手に黒炎の槍が発現する。
頭にディルムッド・オディナの動きが浮かんでそれの動きを体にインプットする。
一閃。
魔物の血が飛びった。
「ああ! 体痛てぇ。もう二度とやらない、こんな技。っていうか御剣も動くなら言えよ! だったら俺動かなかったのに」
「ごめんね。どっちが速いか試したくて」
「それは別の所でやろうぜ。今やらなくていいことだよ」
西洋剣を持っている御剣と談笑して槍を消す。
元々サタナキアに対抗するために作った裏技みたいなものだからな。
デメリットなんか考えなかった。
使うならもっと考えよう。
「じゃあ後で少し打ち合わない? 見てみたいな、桂木君がどれだけ強くなったか」
「後でな、後で。その前に大切なことがあるからな。じゃあな」
香那たちの所へ駆け戻る。
すると二人、香那と美奈が猫と犬を呼び出していた。
香那は二体目だ。
そろそろやめろ、マジで!
「契約教えるから、ちょっと待って。それ以上呼んだら駄目だ。俺が怒られるから」
由紀に視線を移すとムクれて顔を逸らされた。
何を怒ってるだ、あいつは。
とにかく先に進めていいんだよな?
先に進めないと香那が怖いし。
香那の手を握って黒炎のナイフを渡す。
「少し手を切って血を垂らす。それを魔物に飲ませれば契約完了だ」
「はーい。じゃあ・・・・・・てい!」
躊躇う様子もなく手を切る香那。
この子怖い!
可愛いし活発な子だけど躊躇いがない。
少しは自分を大事にしてくれ。
人のこと言えないけど。
逆にナイフを持ったまま止まってる美奈。
体を震わせる程怖いのか。
まあナイフだしな。下手したら死んじゃうし怖いけど。
そこまでビビるか?
料理とかでも使うと思うし扱ったことあると思うけど。
「大丈夫か? 怖いなら別のにするけど」
話しかけると体をビクつかせて俺を見る美奈。
何か変だ。
明らかにおかしい。
涙目なのもそうだけど、体の震えが尋常じゃない。
「ほんとに大丈夫────」
「大丈夫だよ。私がいるから。大丈夫。だから・・・・・・落ち着いて」
俺の言葉を遮って香那が美奈を抱きしめて言った。
なんかやっぱり変だ。
この二人の関係はおかしい。
ただの幼馴染みって感じじゃない。
なんか・・・・・・依存してる? よくわからないけど・・・・・・。
まあ踏み込まない方がいいな。
誰にだって知られたくないことあるし。
「じゃあ美奈のこと任せていいか?」
「うん、大丈夫。任せて」
頷いた郁奈を尻目に由紀を見る。
まだムクれてるよ、お嬢様は。
「やらないのか? できれば早くして欲しいんだけど」
「別に・・・・・・あんたに教えられなくても出来るわ。だから他の人の所に行っていいわよ。卯月先輩の所とか」
「行けたら行ってる。でも由紀も終わらないと行けないんだよ。だから早く終わらせようぜ。成績も上がるし万々歳だろ」
由紀は不満そうな顔のまま杖を操り始める。
完璧としか言えない魔法陣を描いて起動させる。
光の中から現れたのは・・・・・・人型の悪魔だ。
「我が名はウンディーネ。水を司る四大精霊。汝、我に契約を求めるか?」
「人型と契約って出来ないんだろ? さっきもジャンヌさんも言われたぞ」
「あんた、四精霊も知らないのね。ホント馬鹿じゃないの? れっきとした使い魔よ。あんたが呼び出してた英雄とは違うわ」
四精霊・・・・・・四大精霊・・・・・・。
ああ! シルフとかそういうやつか!
そういえばリンの時に言われた気がする。
リンは使い魔と悪魔のハーフだって。
確かに人型じゃないと子供できないな。
「それにしても綺麗な使い魔だな。俺もこんなの呼びたかった」
「呼びましたか? マスター♪」
どこから来たのか、ジャンヌさんが横にいた。
怖いです。いきなり現れないでください。
とにかく二時間目が終了した。




