表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/84

和平の後に


「終わったか? 御剣」


帰ってきた親友を教室で出迎える。


「うん、終わったよ。桂木君」


笑顔で答える御剣に軽い安堵を覚えつつ外を見る。


さて、収集がつかなくなってきたこの状況。

どうしよっか。


「リン、なんか作戦ない?」

「私は御主人様がノープランであることに驚きを隠せませんが」

「・・・・・・やっぱり変」


リンとレナからのダブルパンチが飛んでくる。

俺もこんなことになるとは思ってなかったんだよ。


目の前で繰り広げられているのは軽い戦争だ。

闇と光が舞って血を散らす。


「・・・・・・じゃ、全員殺す」

「それは駄目。殺したら和平会談どころじゃなくなるだろ」

「でしたらここで皆で心中しますか。私達の首があれば収まるんじゃないですか? 首謀者は死んだので許してくださいって」

「それも勘弁して。まだ死にたくない」


と言ってもマジで手段がない。

今だってレナとリン。そして先輩とヒルデ先生が流れ弾を弾いてくれてるだけだ。


戦争の終結と四人の魔力切れ。

どっちが早いかは言わなくてもわかる。


「だったらもう一度奇跡に頼るか」


機械仕掛けの龍騎兵デウス・エクス・マキナ

神の力を使えば止められるかもしれない。

あくまで可能性だけどそれしかない。


二重起動ツインドライブ────んぐっ!」

「・・・・・・駄目。・・・・・・神は駄目」

「少しはご自分の体を大事にしてください。龍の力を使えない今の御主人様が神を使ったら本当に死んでしまいます」


俺の口を塞いだレナ。

嬉しい誤算なのかもしれない。

レナもリンも周りを見てる。

ちゃんと考えてくれてる。


会って時間は経ってないけど。

ちゃんとした絆はあるんだ。


でもそれじゃ打開策が生まれてくるわけがない・・・・・・。


「桂木君、僕に考えがあるんだ。聞いくれるかな」

「御剣・・・・・・。色仕掛けとか無しだぞ」

「僕、そんなに馬鹿に見えるかな。血を使うんだよ」


御剣が床に流れる俺の血を指さした。


「神崎史郎は自分の血を使って龍の力を纏った。でも龍の能力にそんなものはなかった。ということは血に龍の魔力が混ざっているって考えられる」

「ってことは流れた俺の血を使って消費魔力を抑えて力を使うってことか」


俺の言葉に頷いて答える御剣。

確証はない。

でも容量不足リミットオーバーと同じだ。

人間に必要ないから伝えられてない可能性ありもある。


試す価値はある。

ていうかやるしか選択肢がない。


「・・・・・・私やる。それ以上は春の体が死んじゃう」

「ですね。私がやるよりはレナさんがやった方がいいと思います」


レナが覆いかぶさってきた。

肌に感じる女の子の柔らかい感触。

あといい匂いがする。


「待ちなさい! レナ、堕天してしまいます。今すぐやめなさい」


銀髪の男が叫ぶ。

ミカエル様だ。


これは悪魔の血を吸うってことになる。

それは天使にとってやってはいけないことなんだろう。


「・・・・・・知らない。・・・・・・やろ」


首筋に柔らかく湿った物が当たる。


血を舐められて、傷口から吸われる。


なんか気持ちいい。

ずっとこうしててもいい気分だ。

おっぱいも当たってるし。


「それでどうすればいいんだ? この後」

「えっ?」

「いや、だって血を吸っただけじゃ意味無いだろ。この後どうすればいいんだよ」

「いや、その・・・・・・あはは」


知らないな、絶対。

あともう一つ気になることがある。


「これって血じゃなくても体液なら何でもいいんじゃないのか?」

「御主人様、この状況で情事に及ぶ余裕があるなんて流石です。その能天気さ、尊敬いたします」


そういうことじゃねぇよ!

今ここで天使を抱けって言われても無理だよ。

その前に死ぬから!


「いや、そうじゃなくて。でも確かに力は受け渡しは出来るな」


ミカエル様の視線が痛い。

いや、しませんよ。

うん、天界のお姫様に手を出したりはしません。


「・・・・・・ちゅー」

「ん? なんか言った?」

「・・・・・・血より早い」

「だから何言ってるの────」


口に唇が当てられて舌が入ってきた。


レナの舌が俺のそれと絡まって音を立てる。


撫でて吸って絡まって。

それから伝わる快楽と甘い匂いに脳が蕩けそうになる。


「・・・・・・終わり。・・・・・・じゃ、終わらせる」


レナの体に浮かぶ黒い蛇の刺繍。


力の譲渡が完了した証だ。


吹き荒れる黒い風。

それは天使と悪魔を飲み込んで体を縛っていく。


俺が使うより全然強いってどういうことですか?

もう俺、必要ないんじゃないかな。


「仕方ありませんね。レナの変化を見れたお礼としましょう」


ミカエル様がため息をついて飛び立った。


「今、魔王サタン。及び堕天使の長、アザゼルが降伏をしました。故にこれ以上の戦闘は無意味と判断しました。天使は即刻撤退を開始してください。そして悪魔は死にたくなければ・・・・・・わかっていますね?」


純白の六対の羽が光出した。

その光を見るだけで体が震えて逃げたくなる。


死ぬ。

逆らったら死ぬ。

それを強制的に理解させられる。


やばいだろ、あれ。


「会談は予定通りに行いますがよろしいですか?」

「あんなこと言って和平なんて組めると思ってんの? 僕は無理だと思うけどね」

「和平を組めば魔界に攻め込む天使は全て堕天する。それは天界に仇を成す存在になります。天使として賢い者なら戦争なんてしなくなりますよ」

「悪魔が無理だって言ってんの。負けたから和平を組みます? 馬鹿言うなって連中のが多い。めんどくさいけどしょうがない」

「いるじゃないですか。悪魔に面白い子が」


ミカエル様と魔王様が何かを話してる。


悪魔は魔法陣の光と共に姿を消していく。

終わった。

これで全部終わった。


俺の意識は糸が切れたように途絶えた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ