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復讐

なんかすっきりした朝だ。

疲れもなく起きられた。


若いっていいな!

たった3時間の睡眠でもこんなに頑張れる────


「わけないよな。死にたい・・・・・・」


疲れは残ってる。

昨日は散々だった。


特に1回目!

泣きたくなるくらい早かった。


ムキになってやりすぎた。

学校行きたくないんだけど。

でも行かなくちゃ。


御剣と戦うんだ。

そして今度こそ勝つ!


「少しだけ怖い思いさせるけど我慢してくれな」


隣で寝てる理沙の頭を撫でる。


ああ、布団干さなきゃいけない。

やることは沢山ある。




「桂木! 大っニュースだ!」


朝、教室に入ると白泉が興奮したように騒いでいた。


「なんかあったのか? エロ本捨てられてたとか」

「お前は小学生か! メイド喫茶ができたんだよ! 駅前に!」


白泉が持っている本を広げて顔に押し付けてきた。

まったく見えない。

俺はどうすればいいのか。

見えないって言うか。

それとも────


「おお! すげえな! これがメイド喫茶か!」


適当に合わせることにした。

行ってみたいけど桜が怒るんだよな。

というわけで興味はない。


「明日にでも行こうぜ! 放課後にさ!」

「あ・・・・・・、ごめん。家事があるから無理だ」

「そんな時間取らねえから。ただちょっと食べて帰るだけ。俺の奢りでいいから。なっ?」


手を合わせて笑う白泉。

本がグシャグシャになってることはいいのか?


行くと桜に怒られる。

でも奢りっていうのは魅力的だ。


「わかった、行く。奢り忘れんなよ」

「おう。今オープンキャンペーンやってるから安いんだぜ」


白泉はグシャグシャになった本を何度も見て目を輝かせてる。

東京じゃ行けなかったから嬉しいんだろう。

正直、俺も楽しみだ。


目一杯楽しむために今日を死ぬ気で頑張らないといけないな。


「リン、作戦は今朝言った通りだ。準備できてる?」

「はい。武器の手入れはしておきました。あとは御主人樣の心の準備だけですよ」


荷物を置いたリンが闘技場で見せたボロボロの服に着替えた。

といっても魔法陣で服を変化させたって方が適切だ。


じゃあレナも準備できてるってことか。


レナに視線を移すと頷いて答えた。


うん、そうみたいだ。


荷物を投げて龍の力を纏う。


「じゃあやろうか。聖騎士を呼び出すために引き下がれない状態まで追い詰める!」

「はい! 了解です、御主人樣!」

「・・・・・・ん、適当に合わせる」


リンとレナの返事を聞いて空を飛ぶ。


二重起動ツインドライブ────Burst(バースト)


巨大な砲台から放たれた光と闇の魔法は雲を割いて空に消えていった。


「もっと大きく。そして────」


もっと強く!


「御主人樣! そこです!」


リンの声と共に複数の魔法陣が現れる。

全部同じ種類だ。


二発目の魔法は魔法陣に弾かれて四方に拡散して消えていく。


「・・・・・・悪魔、来る。・・・・・・次、光と黒炎。反射して」


レナの指示通りに魔法を放つ。

さっきと同じように四方に拡散した。


「何をしてるのかな? 桂木君」


御剣が来た。


聖騎士として動くためだろう。

白い服を着ていた。


「決着をつけるんだ。お前の復讐に。俺の因縁にも」


銃はもう必要ない。

悪魔が来れば天使が来る。

そうすれば自然と堕天使が来て聖騎士が来る。


そこまでやればもう引き下がれない状況だ。

各々の王を守るために躍起になって戦うそれぞれの種族。

下っ端じゃ手に負えない事態に聖騎士も幹部クラスを出すしかなくなる。

そしてこの辺で出てくるのは多分、現聖王────神崎史郎かんざきしろうだ。


円卓の騎士団ナイツ・オブ・ラウンドが聖騎士の中でどれぐらい強いのかは知らないけどかなり強い人間がくる。

しかも一番近い教会で一番強かったであろうアークさんは俺が倒した。


「そう考えると一番近くて一番強いのはやっぱり聖王だ」

「確かに間違ってはいないよ。でもね、それはさせない。僕の復讐は悪魔を殺して人間も殺す。もう止まる気はないよ」

「俺が止める。絶対に! Booster(ブースター)!」


背中から生える鋼の翼。


雷を纏い光速で動く御剣と剣戟けんげきを繰り広げる。

御剣の一撃は重く早い。

追いつくだけで精一杯だ。


雷鳴と共に振り降ろされる光。

それを刀で受け止める。


「御剣。お前、思ったより強くないな」

「そう。でも弱い僕はに君は殺されるんだよ」


光剣を弾いてかわす。


周りでは天使と悪魔が戦い始めている。

予想通りの展開。

でも予想以上に激しい。


「リン!」

「わかってます。でも数が多いんです。対応しきれません!」


魔法陣を使って戦闘状況を操作しているリン。

戦闘が激しくなったら魔法陣を使って意識を拡散させる。

だけど予想外の事態だ。


ほんとに馬鹿だ、俺は。

どうする。どうすればいい!?


襲ってくる剣撃の嵐。

弾ききれない!


幾つかの受けて煙を上げる体。

激化していく戦闘。


どうすれば・・・・・・そうだ。


「レナ! 龍の力を使ってくれ!」


シユウと戦う前、感じた龍の力は俺のを除いて3つ。

その内俺の近くにあったのは1つ。

そしてそれはレナのものだった。


「リンのサポートだけでいいから。もう・・・・・・それしかないんだ!」


答えないレナに叫ぶ。


「・・・・・・わかった。それ以外ないなら」


レナの言葉と共に突風が吹き荒れる。

風の力か。

ならシルフのリンと相性が良い。

しかも・・・・・・だ。


「先輩、お願いします!」


空に舞い上がる炎。

アモンの炎だ。


先輩には御剣のことは話してない。

でも作戦は伝えてある。

この人の協力がないと絶対成功しないからな。


風に煽られて強くなる炎は悪魔と天使の体を焼いていく。


やっぱりあの人普通の悪魔より全然強い気がする。


「殺したら駄目ですよ」

「わかってるわ。何があったか後で聞かせてもらうわ。今はあなたのやるべきことをやりなさい」

「・・・・・・はい」


御剣と対峙して刀を構える。


吹き荒れる風と炎。そして光。

この後怒られそうだな。


「なんで笑ってるの? そんなに嬉しいのかな? 1人じゃないって」

「ああ、嬉しいよ。そして楽しいだろ。これが終わった後のことを考えるとさ」


じゃあ・・・・・・いくぜ。

ほかの人に引けを取らないように頑張ろうぜ、ヴリトラ!


黒剣こっけん


黒炎の刃が御剣の光剣を砕く。


御剣の取り出した二本目が俺の肩を切り裂く。


鍔競り合う黒炎と光。

伝わってくる。

御剣の思いが。

復讐心。

羨望。

嫉妬。


御剣の笑顔の裏にあった気持ち。

龍の力への嫉妬。

「感情」への羨望。

その全ては俺に向けられていて────


その先にいる悪魔と人間に向けられている。


高速で空を駆け回る俺と御剣。

悪魔と天使の間を縫って二種類の魔法がぶつかり散っていく。


刀と光剣が同時に砕ける。

即座に作り直して握る俺と剣を握ったように構える御剣。


「太陽の聖剣ガラティーン


御剣の手が光出して剣を作る。

そこに現れたのは黄金の剣。


それは一振りで刀を砕き二振りで龍の鱗を貫いて俺の体を吹っ飛ばす。


危なかった。

龍の鱗がなかった死んでたぞ。マジで。

って言っても体が溶けかけてるんだけどな。


「これで終わりだよ」


首に聖剣が当てられて煙が上がる。


「みたいだな。やっぱり勝てないか。結構いい線いったと思ったんだけど」


血だらけの顔で笑ってみせる。


「なんで笑えるの? 死ぬんだよ。命乞いくらいしたら?」


それが御剣には不愉快らしい。

顔を歪ませている。


「楽しかったんだ。今の戦い」


全部をぶつけた。

御剣も本気で応えてくれた。

だから御剣の思いが伝わってきた。


俺の思いも伝わってると思う。

これだけは才能じゃないから。


「それに俺は死なない。信じてるからな」


御剣も一緒に戦ってる人たちも隣で笑ってくれた人も全員信じてるから。

だから俺は戦える。


「愚かだ。馬鹿だよ、君は」

「そうかもな。でも友達を殺してまで平和は欲しくないんだ。俺は御剣と明日を生きたいんだ」


なんか恥ずかしいこと言ったな。

まあいいや。


「俺が間違ってると思ったら何度だって止める。何度だって立ちはだかって弱いから無理だって笑ってやるよ」

「君は・・・・・・おかしい。なんで僕のためにそこまで出来る? 今死にかけてるんだよ! なんで他人を気にかけるほどの余裕を見せてるんだ!」

「さっきも言っただろ。俺は死なない。俺は俺の「限界」を信じてるから。それに友達が迷ってるんだ。助けなきゃいけないだろ」


実は結構ぎりぎりなんだけど。

まあ気にしない。


そして俺は続ける。


「復讐とか俺にはよくわかんない。だから止める権利もないと思う。でも俺は御剣と一緒にいたいんだ」

「・・・・・・桂木君。君は・・・・・・」


首に当たる聖剣が揺らいで離れていった。


「僕は・・・・・・生きていいのかな。僕を作るために死んでいった人は許してくれるのかな?」

「うん、多分。許してもらえるよ」


「友情ごっこか? つまらねぇな」


横から聞こえたのは男の声。


大量の魔法陣。

そしてその上に乗っている聖騎士。


その先頭に2人の男がいた。

一人は神崎だ。

既に配合種の姿になっている。

もう一人は白髪を生やしたじじい。

神崎のお父さんだ。


「ほんとに眩しいくらいの性格をしている。さすが聖王の子と言うべきか? なあ春様?」


聖王から投げかけられた言葉は俺の頭で理解出来るものじゃなかった。


聖王の子?

何言ってるんだ?


「わからないのか? 何故円卓の騎士団であるガレスがお前に殺されることを願った理由。アークがお前にだけ手を抜いた理由。そして死ぬ直前に残した言葉────」


手を抜いた?

手加減されてたってことか。

確かにあの人なら俺を殺せたはずだ。


「なるほどな。ガレスさんの言ってたことがわかった」


円卓の騎士団を照らす光。

その時点で一般人ではないよな。


ったくほんとに何も知らないな、俺は。


「前聖王、それは────」

「ええ、御剣悠。君を作り出した者のことだ」


聖王は御剣を煽る。

御剣の持つ黄金の剣が震える。


「違う。前の聖王は配合種は駄目だって言ったんだろ! 配合種を作ったのはお前のはずだ」

「無知は罪だ。確かに配合種を禁止したのは前聖王だが、第二世代を案を出したのは前聖王なんだよ。あの時は衝撃が走ったな。魂を使うなんて・・・・・・どこから持ってきたのか知らないが最高のアイデアだ」


高らかに笑う聖王。


あの人が第二世代の?

じゃあ父さんが元凶なのかよ。


「さあ御剣悠。それを殺せ。さすれば復讐は完遂される」


「────嫌だ。確かに桂木君のお父さんが元凶なのかもしれない。でも僕を作り出したのはあなただ。それに僕はもう・・・・・・友達を見捨てない!」


御剣は黄金の剣を聖王に向けて叫ぶ。


「御剣・・・・・・ふっ、ありがとな」


なんか感動した。

じゃあ俺ももう少しかっこつけなきゃな!


「そういうことだ。じゃあ始めようぜ。俺たちの因縁に決着をつけようぜ!」




じゃあキャラ紹介をしていきましょうか。


リン(リリィ)

悪魔の奴隷だったが春との一件によりメイドに転職する。

最上級悪魔に匹敵する程の魔力を持つが父親と母親の種族の違いによる結婚によって生まれたため下級悪魔として過ごしている。


最上級悪魔である父親と強力な精霊であるシルフの力を継いでいるため風の魔法やオリジナルを含めた多くの魔法陣を使って春をサポートする。


基本的にタメ口で話すが焦ると敬語になる。


非処女であるが春との経験はない。


はい、これにて終了です。


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