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初めて


夜の自室。

部屋で寝てる理沙とただ点いてるだけのテレビ。


俺は何をしてるんだろう。

結局答えは出なかった。


昼での御剣との戦いは一般人を巻き込むかもしれない戦いだった。

いや、実際巻き込んだんだ。

結果的に怪我人が出なかったとしても。


それで守りたいなんて言ってるから笑える。


「走るか」


気分転換だ。

もしかしたら見えるかもしれない。

ハーレムの時のように・・・・・・。




夜の星に照らされて走る。

忙しくて体力トレーニングなんて出来ないけど、たまに走るのはいいな。

風を切る感覚が気持ちいい。


目を閉じて空想上の敵を作る。

それらの攻撃を避けて刀を抜いて切り裂く。


横から拍手が放たれた。


「いやーさすが円卓の騎士団ナイツ・オブ・ラウンドを倒しただけのことはある」


近づいてきた男────神崎始かんざきはじめは心底愉快そうに顔を歪める。


「なになに? 無視? ったくこれだから春は子供なんだよ。現実を受け止めなっ。お前は裏切られたんだよ」


神崎の言葉に殺意が湧いてくる。

それに任せてこいつを殺せばどんなに楽なことか。


「お前、ほんと裏切られてばっかだな。あんだけお前を好いていた理沙だって俺が処女を貰ったんだから」


死ね。

ただ思いつく言葉を飲み込む。


そんな俺の思いを知ってか知らずか・・・・・・いや、知ってるんだろう神崎は続ける。


「今度は日向を食おうか」


この一言で俺の全てが壊れた気がした。


「ふざけんな・・・・・・」

「あっ? 今なんて────」


神崎の言葉が言い終わる前に顔面をぶん殴る。


「お前は・・・・・・俺が殺す。絶対に!」

「くくくく、あははははは」


地面に転がった神崎は狂ったかのように笑い始めた。


「殺す? お前が? 俺を? 無理だよ、お前じゃぁ。だって俺は────」


神崎の体が生々しい音を立てて変化していく。

背中から生えた腕。

腹から覗く顔。

体は大きくなっていった。


「配合種の最高傑作パーフェクト・クオリティ。唯一の第三世代なんだからなぁ!」


神崎の手刀が俺の体を貫通した。

動きが・・・・・・まったく見えなかった。


「あれぇ? 見えなかったのかな? やっぱ子供だねぇ、春は」


腕が引き抜かれて血が溢れ出してくる。


倒れる俺の体に血に濡れた腕が置かれた。


「第三世代の能力は魔力を無効化し吸収する。たとえそれが龍の力でもな」


急激に体の力が抜けていく。

魔力が・・・・・・。


「安心しろよ。俺が美味しく頂いてやるから」


そう言って声の主は遠ざかっていった。





血だらけの体で帰った俺を出迎えたのは理沙だった。


「起きてたんだ。もう寝たほうがいいと思うぞ」

「凄い傷・・・・・・。どうしたの?」

「別に。ただ転んだだけだから気にしなくていいよ」

「転んでお腹からそんなに血は出ないわ。病院に電話────」

「いいから! 大丈夫だから。悪魔は人間とは違う。これぐらいじゃ死なないから」


携帯を取り出した理沙を止める。


「血流してくるから。先に寝てて」


そして風呂に向かった。


脱衣場には先輩の服が脱ぎ捨てられていた。

風呂場から聞こえるシャワーの音。


タイミングが悪いな。

いつもの俺ならテンション上がって覗こうとでもしてたんだろうけど。

そんな気分じゃない。


でも先輩のおっぱいを見れば気分転換になるかも。

少しだけ・・・・・・少しだけなら!


風呂場の取っ手に手をかけて隙間を────


「何をしているのかしら?」


開ける前に扉が開かれた。


目の前に広がる二つの山。

濡れて体に張り付いてる赤い髪。


とんでもなくエロいですよ、お姉さま。


「あ、ありがとうございます」

「何を言ってるの? あなた、血が出てるじゃない! 治癒をかけるから入りなさい」


風呂場に引きずり込まれて背中から抱きしめられる。


おっぱいが背中に!

先輩の手が俺の腹を撫でる。


風呂を覗くと天国が見えるらしい。

これは明日白泉に教えなくては!


「どうしたの? こんな深い傷。下手したら死んでたわ」


耳元で先輩に囁かれた。

やばい。

これはやばい。

桂木春、童貞。

そんな俺にはキツすぎる状況だ。


「ちょっと転んだだけです」

「人間界では転ぶとお腹に穴が空くのね。これじゃ危なくて会談ができないわ」


先輩が静かに微笑んだ。

この人には永遠に勝てない気がする。

それでいいのかもしれないけど。


「・・・・・・昔の知り合いに会ったんです。そいつ、聖騎士で・・・・・・」

「そう。戦ったのね」

「はい。それと配合種のことも知りました」


先輩は黙ってしまった。

言っちゃいけないことなのか。

でも今日のことは話しておきたいから。


「なんで悪魔の罪だって言われてたんですか? あれに悪魔は────」

「関わってるわ。実際魂との配合種は悪魔が生み出した呪いのようなものよ」

「呪い・・・・・・?」

「ねえ春。聖王って知ってるかしら?」


先輩の質問に頷いて答える。

聖王っていうのは聖騎士の王。

つまり聖騎士教会で一番偉い人だ。


「一つ前の聖王は反対してたの。配合種なんてもう作りたくないって。でも悪魔に対抗するために人間はそれを無視した。敵のはずの悪魔の手を借りてできたのが第二世代。異常アブノーマルの子なの」


聖王を裏切った。

それは「正義」を捨てたってことだ。

そこまでして欲しいものはなんだったんだろう。


「それでその異常の人たちってどうなったんですか?」

「死んだわ。五年前に殆どね。そしてその唯一の生き残りが悠なのよ」


五年前。

あの悪魔が来た年か。

悪魔が関わってるってことはその時に殺されたんだ。


「先輩。俺、どうすればいいんですか?」


五年前。

沢山の人が死んだ。

それは嫌だと言いながら俺は悪魔を・・・・・・。

人を殺した。


俺がやってることは五年前の悪魔と同じことなんじゃないのか?

そう思えて仕方がない。


「戦って殺して。俺は許されるんですか? 俺は誰かを助けられてるんですか?」


殺して欲しいと言われた。

それを殺すしかなかった俺。


聖騎士は殺される覚悟がある。

じゃあいいのか?

あの人たちにも守りたい人がいるはずなんだ。


俺と同じ。

なら話すって選択肢もあるんじゃないのか?


「それは私も悩んだことがあるわ。でも考えたってわかることじゃないの。殺すことはやっていけないこと。でも殺されるかもしれない状況でそんなこと考えてる暇なんてないもの」


先輩からギュッと抱きしめられた。


背中に感じる柔らかいものとか。

甘い匂いとか。

そんなものより先輩の甘い声が俺の脳を溶かしていく。


「あなたが感じるように動けばいいわ。あなたの罪は私も一緒に背負うから。ずっと一緒に生きるから。何も怖がらなくていいわ」


俺の感じるようにってそれじゃ今まで変わらない。

いや、それでいいのかもしれない。

最初から杞憂だったんだ。


だって────


「好きだって言ってくれたんだから」

「えっ? 何か言ったかしら?」

「あっ、いえ。何でもないです。ありがとうございます! じゃあ俺出ますから」


先輩に一礼して風呂場を出る。

間違いでもいいのかも。

それは俺の「正義」だから。




自室に戻ると理沙がベッドに座っていた。


なんとなくわかってたけどな。

こうなるって。


「寝ないのか? また太るよ」

「夜更かしじゃ太らないわ」


なんかむくれてるし。


「なんで怒ってるんだ?」

「あんなことがあって怒らない人はいないわ」

「そうですか。じゃあ俺は寝るから頑張って起きてて」


電気を消して布団を被る。

当然のように理沙が布団に入ってくっついてきた。


結構単純だ。


「もう寝るのか? もう少し起きててもいいと思うけど」

「春が寝るなら寝る。・・・・・・もう傷治ってる」


理沙が腹を撫でて不思議そうな声をあげた。


傷があると思ったなら触らないで欲しかった。

触られると痛いんだからな。


「先輩に治癒魔法かけてもらったからな」

「やっぱり火野村さんだ。いつもそうね、何かあると火野村さんに頼るの」


むくれてる理由はそっちか!

でもなんか気分いい。

彼女が嫉妬してくれてるとか・・・・・・。


今の俺、凄いニヤニヤしてるな。

電気消してて良かった。


「はいはい、ごめん。次から理沙にも相談するから」

「どうせ悪魔のことなんかわからないわよ、私は」


前言撤回だ。

ちょっとめんどくさい。

こういう時ってどうすればいいんだろうな。


あとくっつかれると色々当たってるからやばい。


足にムチっとした太ももの感触。

胸にはノーブラであろうおっぱいの感触。

そして首あたりに理沙の息が当たってドキドキする。


「悪魔のことだけじゃなくて。他にも色々あるから」

「もう、寝る。おやすみ」


ほんとにめんどくさいな。

しかも後ろ向いちゃったからおっぱいと太ももが離れたし。

代わりにお尻が当たってるけどね!


1回冷静に考えてみよう。


理沙は彼女だ。

彼女が泊まりに来てるんだからやることは一つだろ。


理沙も覚悟してるんじゃないのか?


「少しくらいなら・・・・・・いいよな?」


よし、返事はない。

ならチョンくらいなら触ってもバレない。


慎重にそれでいて早くおっぱいの目の前まで手を動かす。


そして突撃────!


「何が少しなの?」

「えっ?」


時すでに遅しとはこのことか。

理沙の声が聞こえた時には俺の手はおっぱいに沈みこんでいる。


服越しでも柔らかく俺の手を包み込んでいる。


おお! 凄い!

先輩のおっぱいは弾力がある。

でも理沙のは手に吸い付いてくる。

どっちも違ってどちらもいい!


って、違う!


「いや、違う。えっと、出来心みたいなもので・・・・・・」

「したいの?」


理沙は意外なことを言って俺の手を掴んだ。

そしてその手をもう一度おっぱいまで持ってて────


「エッチなこと・・・・・・したい?」


言ってることがわからない。

でも・・・・・・


「していいの?」


頷いて答える理沙。


その理沙を両手で抱きしめてキスをした。



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