人と神と告白
「空港だぁ!」
「おー!」
空港の駅でテンションが上がっていく俺と日向。
すげえ! でかいエスカレーターがある!
下から覗けば上の人のパンツ見えるんじゃねえのか!
「やってみる価値・・・・・・あるな!」
「ねえよ。ほら、行くぞ。遅刻ぎりぎりだぞ」
白泉に襟を掴まれて引きずられる。
「なんでだよ! やろうぜ!」
「それは犯罪だ。捕まるぞ」
冷静に。それでいて呆れたように白泉が言った。
・・・・・・確かに危険が大きすぎる。
でも・・・・・・燃える!
「って言いたいところだけど。桜たちに迷惑かけるのは駄目だな」
「自由時間になったらAV買いに行こうぜ」
「ああ! そうだな」
AVでまたテンションが上がる俺。
ああ、単純だな。俺って。
班員が揃って・・・・・・っていうか既に駅で合流していた俺たちは先生に報告して自由時間に突入した。
「雷門だぁ!」
「おっきいね!」
またテンションが上がる俺と日向。
「落ち着いてください。はぐれてしまいますよ」
「あの2人に何言っても無駄だろ。ついて行った方が早い」
ため息をついて呆れた様子の桜と白泉。
「桜、奥行こうぜ! ほら、早く!」
「ちょっと待ってください。あの────」
桜の声を無視して手を握って走る。
目指すは奥!
そして早くAVを買いに行く!
そして奥について気づいた。
これ、寺じゃないのか?
「なあ桜、ここって?」
「浅草寺と呼ばれるお寺ですよ。知らなかったのですか?」
「・・・・・・帰ろう」
「えっ? 少し待ってください! まだ皆と合流してません」
「多分まだ雷門にいるから早く行こう」
やばい。
これはやばい。
下手したら死ぬぞ、俺。
「どうしたのですか? 不都合なことでもあるのですか?」
怪訝そうな顔の桜。
「悪魔ってさ、神社とかに入ると死ぬんだ。そういう存在らしい」
最近勉強したことなんだけどな。
神社とか教会には神の力による結界が張ってあって中に入ると罪が浄化される効果があるらしい。
そんな中に罪の塊である悪魔が入ると・・・・・・。
「と、とにかく! 回り道でもいいから早く出たいんだ! ここで溶けるとか洒落にならないから!」
「わかりました! では・・・・・・」
周りを見渡すと人の海。
そして本堂は目の前にある。
二天門から出るか?
駄目だ、観光客が多すぎる。
あの中を突き抜けて走る程俺のメンタルは強くない。
だからといって真ん中を逆走は一番駄目なやつだ。
「しかたありません。二天門から出ましょうそちらの方が早いです」
桜に引っ張られて観光客に突っ込んでいく。
桜って走るの速いな、なんてことを考えてると壁に頭をぶつけた。
でも目の前に壁なんてない。
俺がぶつけたのは結界だ。
あれ? もしかして閉じ込められた?
「大ピンチだ! ど、どどどうそればいいの? これ!?」
「どうしたのですか? 早く行きましょう!」
俺の状況を知ってか知らずか手を引っ張り続ける桜。
痛い! 痛いです!
千切れそうですよ、桜さん!
「桜、1回手を離そう」
桜の手を離して後ろに下がる。
そして助走をつけて地面を蹴る!
跳ねた俺の体は二天門を軽々と超えて────
結界にぶつかった。
上にもあるのかよ・・・・・・。
そして少しして思いついた作戦は3つ。
作戦1!
結界ごとぶっ壊せばいいだろ作戦!
龍の力を使って結界に攻撃する作戦だ。
下手したら悪魔が殺されてしまう作戦だがこれが一番手っ取り早い。
作戦2!
雷門まで戻ろうぜ作戦!
入れたんだから出れるだろという安直な考えから生まれた作戦だ。
多分成功する前に死ぬ。
作戦3!
神頼み作戦!
千円くらいお賽銭すれば出してくれるんじゃないのか? という俺の馬鹿さ具合がわかる作戦だ。
呆れるしかない。
そして俺は────
「桜、離れててくれ。結界壊すから」
作戦1を選んだ。
「二重起動────第一段階」
そして鋼の翼を生やす。
「いくぜ! Booster!」
加速して結界とぶつかり合う!
だが弾かれて龍の力ごと魔法が霧散してしまう。
失敗か。
ついでに周りに悪魔だってことがバレた。
大人しくお賽銭にしとくべきだった。
周りから悲鳴が上がって騒ぎになる。
逃げ惑う人。
俺も逃げたいよ。
なんで皆はあっさり出れるんだよ!
俺は!? 出れないの!?
「桜、理沙にごめんって言っといて。こんな馬鹿な死に方して」
「春、まだ何か手はあります! 諦めないでください! 他の観光客に紛れて出ることは出来ないのですか?」
「できたらとっくにやってると思うんだ・・・・・・」
「で、でしたら────」
桜に背を向けて財布から千円を出す。
最後の賭けだ。
「受け取れ! 俺の無けなしの千円!」
パンッ! っと音を立てて手を合わせる。
俺の最後の願い・・・・・・。
それは────
「せめて女の子に囲まれて死にたいで────」
「千円ゲットォォ!」
空から降ってきた女の人に俺の願いはかき消された。
しかも盗られたし。
俺の命の千円・・・・・・。
っていうか巫女!
凄いがめつい巫女がいるんだけど!
いいのか!?
巫女服を着た女の人は俺の千円を握りしめて振り向いてわざとらしく咳払いをした。
「こほん、君が私を呼んだ人?」
「いや、呼んだ覚えはないけど。返してくれませんか? 俺のお賽銭」
「お賽銭? なら私のじゃない! 久しぶりのお賽銭♪ しかも千円よ! これは読ちゃんと宴ね」
いや、だからお前のじゃねえよ。
でもおっぱいがぷるんぷるんしてる。
これは千円の価値があるかもしれない。
「ていうかいいんですか? 巫女さんがお賽銭盗って」
「えっ? 巫女? ・・・・・・ああ、コスプレ中だった! ちょっと待ってね」
巫女さんがくるりと一回転。
するとみるみる服が変わっていく。
魔法少女みたいだ。
一昔前のだけど。
ミニスカの巫女服に真っ白なニーソ。
はっきり言ってただエロくなっただけの服に変化した。
俺は嬉しいよ!
完璧な黄金比率の絶対領域。
ミニスカとニーソの間の太ももは健康的な色をしていて人間とは思えない程綺麗な足だ。
輝いてるように見えるレベルだ。
「太陽神アマテラス、爆誕!」
そして巫女服のせいかまるで見えそうにないおっぱい。
だが逆に見えないからこそ興奮する。
あの太ももから察するにおっぱいも綺麗なんだろうなぁ。
「聞いてる? アマテラスだよ? 神様だよ?」
あっ、やべ。涎出てきた。
見た感じすべすべしてそうな肌だからおっぱいの弾力もそれなりにあって。
触ると跳ね返って────
蹴られた。
前から、息子を、蹴りあげるように。
「いっ! ああああああ!」
その場に蹲る。
当然股間を押さえてだ。
まともに声が出ない。
潰れる! いや、マジで!
彼女が出来たのに機能不全とか嫌すぎる。
「神様無視は重罪だぞ!」
正直それどころじゃない。
死にそうなんだけど。
股間から煙あがってるんだけど!
大丈夫か!?
機能不全より悲惨なことになってないか?
・・・・・・大丈夫だ。
ちゃんとある。
何故か元気になってるけど。
「なんでしたっけ? アマテラス様? って確か・・・・・・三銃士?」
「三貴子と呼ばれている神様です」
駆け寄ってきた桜が訂正した。
違うか。似てたけどね。
なんで知ってるんだろう、桜は。
「そうそう。よく知ってるね、お嬢ちゃん。どう? 私と一緒に神様にならない? 気持ちいいことしてあげるよ?」
「じゃあ俺が立候補します!」
「お粗末な子には興味ないの。さっさと消えろ」
お粗末・・・・・・。
ていうか消えろって神様が使う言葉じゃないだろ。
「あらら、もう終わりだね」
何人かの足音が聞こえてくる。
聖騎士が来たんだ。
「早く逃げましょう」
「いや、結界あるから無理だろ」
「なるほどねぇ。ここで戦われると私も困るんだよね。解いてあげよう」
空にガラスが割れる音が響いた。
結界が壊れたんだ。
「いいんですか? そんなことして」
「本当はダメだよ。でも千円くれた人にお礼しなきゃね」
アマテラス様から渡されたのはガラスの破片だ。
「なんですか? これ」
「少し考えればわかるもの。君の信じる君を信じて。絶対に」
この人の言ってることはわからない。
でも・・・・・・
「ありがとうございます。神様がくれたものならご利益がありそうですね」
一礼して二天門に走る。
振り返るともうアマテラス様の姿はなかった。
「なんとか逃げられたな」
浅草寺から走って30分。
見たことない町で桜と2人、休憩していた。
「はい。ですが日向達と合流できませんでした」
「聖騎士が来たんだから逃げてるよ、あいつらも。リンがいるからな」
ふぅ、それにしても暑いな。
梅雨なんて来ないんじゃないのか。
そっちの方がありがたいけどさ。
洗濯物的に。
「と、とにかく連絡をとって・・・・・・」
桜が携帯を取り出してすぐにしまった。
「どうした?」
「充電がありません。すみません、春の携帯で連絡をお願いします」
「ああ、ちょっと待っててくれ」
ズボンのポケットに手を入れる。
そこに携帯はない。
あれ?
鞄を見る。
やっぱり携帯はない。
「・・・・・・落とした」
「えっ? すみません、聞き逃してしまいました」
「携帯落とした」
桜の笑顔が凍った。
俺の大ピンチは続くみたいだ。
「どうするのですか? 公衆電話を探しましょうか」
「最近見ないよな、公衆電話。先生に言って電話かけてもらった方が早いと思うけど」
あと楽だ。
遠足では最後に先生に終了報告をしてから帰ることになってるから先生の居場所は大体わかる。
問題があるとすれば・・・・・・
「今はお昼ですよ。先生方は終了場所にいるのでしょうか?」
「・・・・・・近くにはいると思うよ」
「なら駄目ですね。駅ならば公衆電話があると思います。そこで日向に連絡を取りましょう」
そういうことになった。
駅を目指して1時間。
見回りをしてる聖騎士を避けながら移動してるから凄く遅い。
しかも────
「腹減ったな」
「今は我慢です。日向と合流してから食べましょう」
俺と桜の腹は空腹を訴えていた。
駅はまだ見えない。
「もう食べようぜ! 無理!」
「で、ですが。日向は・・・・・・」
「食べてるよ、絶対。あいつなら」
「・・・・・・そうですね。お昼にしましょう」
日向は食べてる。
変な確信を得た桜と俺は近くのファミレスで昼ごはんを食べることにした。
そして何故か個室に通されて食事を終えた俺と桜。
聖騎士にバレないから嬉しいんだけどね。
ここまでしなくてもいいかなって思うんだよね。
「あの、春。少しいいですか?」
桜が浮かない顔をして言った。
「うん、いいけど。聖騎士のこと? ごめんな、今度お詫びになんかやるから」
「違います。あなたの言うハーレムのことです」
桜にしては珍しい話題だ。
桜はこういう話に弱いから普段は絶対にしないんだよな。
「ん? うん、どうかしたのか? もしかして────」
「この前の告白は・・・・・・どういう意味だったのですか?」
やっぱりきた。
ていうか桜とハーレムの話をするんだったら告白の話は出てくるよな。
いくらなんでも気づく。
「どういう意味ってそのままの意味だよ。俺は桜が好きだ。だから付き合って欲しい」
「違います。私が聞きたいのは付き合ってどうするのか・・・・・・なんです。私はあなたの戦う「理由」になればいいのですか? 私は・・・・・・あなたを傷つけるために付き合えばいいのですか?」
桜の目には涙が浮かんでいた。
そんなこと考えてたのか。
桜の考えてることはわかる。
俺の戦う理由は大切な人と笑える未来を作るためだから。
戦う理由になるのは桜たちだ。
俺は戦って傷ついていく。
「桜は気にしなくていいのに。俺の身勝手な理由なんだから」
「無理ですよ、そんなこと。あなたが傷ついているのに私はそれを見ているだけなんて・・・・・・。私は────」
「あっ、ごめん。ちょっとトイレ行ってくる。緊張続いたからさ、いきなりきた」
桜の言葉を遮って個室を出る。
俺は今程自分がヘタレだと感じたことはないぞ。
活動報告での宣言通り、軽くキャラ紹介でもさせていただきます。
桂木春。
作品の主人公。
自己犠牲上等の性格だったが悪魔へと転生しクシア・アモンとの出会い、おっぱい洗脳によりハーレムを目指すようになった。あと一応熱血?
人間の時の経験が足を引っ張り放出型の魔法が使えず魔法を体に纏わせて戦う。
能力
呪いの龍王。
太陽を飲み込んだという逸話の通り膨大ともいえる魔力量を有する龍王。
なんだかんだ力を貸すことが多い。
機械仕掛けの龍
荒野天によって作られた人工の龍。呪いの龍王や他の龍王の戦闘データを使い制作された。
それ程高い性能を有しているわけではないが呪いの龍王の魔力量と春による無茶な使い方により龍王に匹敵する程の力になった。
終期の機神
シユウ・ルシファーとの戦闘時に春の力として現れた神。この時は機械仕掛けの龍や呪いの龍王と混ざり龍と人間が混じり合った姿で現れた。
本来なら存在しない神。
理由は最後の掘り下げにて判明の予定。
感情変化
春自身の感情によって魔法や五感、身体能力までも上昇する。簡単に言うと火事場の馬鹿力。
魔法の場合、普通の人間でもある程度は補正がかかるが春の感情による振り幅の方が遥かに大きい。
このぐらいでしょうか。
1話につき1人が個人的に都合がいいのでそうさせていただきます。
ある程度進んだら用語だったり設定だったりの簡単な説明をしていきたいと思います。