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ハーレム


桜の家に戻ってきた。


体中が御剣との戦いの後を刻んでいる。

あいつ、本気でやりすぎだ。

手も足も出なかった。


でもわかった気がする。

俺がどうしたいのか。


動いてみるもんだな。

考えがまとまるというかやりたいことがわかる気がする。


絶対に怒られるな。

でもやってやる。

俺は・・・・・・


「ハーレムを作るんだ!」


「何を言っているの? 御主人様」

「えっ? ・・・・・・リンか。びっくりさせないでくれ。怖いから」


何故か横にリンがいた。

そういえば昨日リンはいなかったような・・・・・・。


「昨日はどこいってたんだ?」

「家にいたよ。オーガス様とお喋りをしてた」


ああ、帰ったのか。

変な気を使わなくてもいいんだけど。

まあいいか。


「お迎えに上がりました、御主人様。さあ帰ってご飯を作りましょう」

「そういうことか。先輩の料理は駄目なのか? 魔界産の材料だろ、あれ」


カレーを思い出す。

あれはまずかった。

もう2度と食べたくない。


「確かに魔界産だけど調理がダメダメなんだよ。魚の頭が入ったサラダとか食べたくないの」


想像したくないな。

あの人頑張ってるな。

いろんな意味で。


「じゃあ白を迎えに行ってくるから待っててくれ」


家の中に入ると目の前に桜がいた。

凄い汗だ。

ずっと振ってたのか。


「ご飯を作っていたのではないのですか?」

「えっと・・・・・・。ちょっと外に出てたんだ。白起きてる? そろそろ帰ろうかって思ってんだけど」

「起きてると思いますが。早くないですか? ご飯を食べてからでも良いと思いますが」


火野村先輩の創作料理のせいで帰らなきゃいけなくなったとは言えないよな。

じゃあ適当に────


「やらなきゃいけないことがあるんだ。理沙のこととか」

「・・・・・・そうですか。ではすぐに呼んできますね」


桜が奥に入っていった。




しばらくして桜が戻ってきた。

白の姿はない。

間違いなくわがままを言ったんだ。


「まだ帰りたくないそうです」

「まったく何考えてんだ、あいつは。まあいいか。無理矢理連れ帰るだけだし」

「でしたら私が後で送っていきます。駄目でしょうか?」


普段の桜なら絶対に言わないことだ。

帰したくないのか?

なんで?

わからないな。


「いや、大丈夫だけど。いいのか? 迷惑かけることになるけど」

「はい。白といる時は息抜きになりますから私も帰って欲しくなかったんです」


そういうことらしい。

男の俺にはわからないことだな。


「わかった。じゃあよろしくな」


というわけで俺だけが帰ることになったんだが1つ言わなきゃいけないことがある。


「なあ桜。俺と付き合ってくれないか?」


場が沈黙に包まれた。


あたり前だな。

昨日振られた相手に付き合ってくれなんて言われたらこうなる。


「・・・・・・卯月先輩はどうするのですか?」

「付き合う」

「・・・・・・はい?」


桜は理解できないみたいだ。


「だから理沙とも付き合う」

「言ってる意味がわからないのですが」

「ハーレムを作るんだ!」

「馬鹿じゃないのですか?」


桜の視線が痛い。

桜の声が低くなる。


「あなたの考えていることはわかります。泣かせたくないとか思ったのでしょう」


うわぁ図星だよ。

それが桜をイラつかせるんだろうな。

でも────


「やっぱり桜には泣いて欲しくないんだ。そう思ってた」

「余計なお世話です。振られた相手に慰めてもらってどうするんですか!?」

「でも! 今は違う。ずっと償わなきゃって思ってた。五年前から桜だけは泣いて欲しくないって考えてた。俺のせいで傷ついた分だけ沢山笑って欲しいって思ってた」


でも桜は好きだと言ってくれた。

ずっと好きだって。

それは俺にとって確かな救いだったんだ。


「だから桜とは付き合えないって思ってたんだ。俺は影で守っていこうって。桜が楽しく暮らせるようにって思ってた」


言われても気づかなかった。

見て。触れて。初めてわかったんだ。


「でも桜が好きなんだ。初めてなんだ。あんな風に見惚れたの。抱きしめたいって思ったの」


でも理沙も放っておけない。

ああ見えて馬鹿なところあるし。

好きとは違う感情。

でも近くにいて欲しいから。


「まあ無理言ってるのもわかる。でもこれが俺の考えた結果だから。じゃあな」


家から出て深呼吸。

うわっ、恥ずかしい!

死ぬかと思った。


さっさと帰ろう。

そしていつも通りに過ごせばきっと落ち着くだろう。




家に帰って思うことといえば臭い。

その一言に尽きる。


「こんな臭かったけ? 生ゴミみたいな臭いするんだけど」

「全部あの料理の仕業なんだよ」


リンが意味深に言った。

既に嫌な予感だ。


リビングに入ると何故か血に塗れた皿がテーブルに置いてある。


なんだ? 生肉でも食ったのか?

そういえば魚の頭が入ったサラダとか言ってたような・・・・・・。


「あら春、お帰りなさい。ご飯できてるわ。食べましょうか」


台所から出てきた先輩の手には黒い何かがある。

かろうじて四角であることはわかる。

そして上に乗ってるピチピチ動いてる生き物。


「なんですか? それ」

「トーストだけど。見えないかしら?」


見えないから聞いたんだよ!

じゃあトーストの上に生きた何かが乗ってるの!?

怖っ! 絶対に食べたくないんだけど。


「リン、2枚食べれるか?」


ボソッと後ろに隠れてるリンに呟く。


「無理。どう考えても無理。昨日のご飯だってまだお腹の中で唸ってるんだから」


ごはんが唸るってなんだ?

生きてるのか?


ああ、目の前のトーストも生きてたな。

腹をくくって食べるか。

さよなら、俺の人生。

死んだから悔いしか残らないな。


「わかりました。食べましょう」


トーストを1枚取って口に運ぶ。


無理だ、これ。

なんかやばい!

なんだろう? 未知の食感が襲ってくる。

グニャグニャしてる。

食感の感想じゃないのはわかってる。

でもグニャグニャしてるんだ。


白がいなくて良かった。

マジでそう思った瞬間だった。




トーストらしきものを食べ終わって先輩と食器を洗う。


結構手際がいい。

ほんとは料理も巧いんじゃないのかと思えるくらいに。


「そうだ、先輩。話したいことがあるんですけどいいですか?」

「ええ、いいわよ。またおっぱいとか言わないならね」


先輩に全部話した。

昨日のこと。

今朝のこと。

全部だ。


そして返ってきた答えは────


「魔界は一夫多妻制よ。悩まなくてもハーレムは作れるわ」


意外なものだった。


「それを早く言ってくれませんかね? 俺の悩んだ意味! あれ? でも人間界で暮らすならやっぱりハーレム無理じゃないですか?」


あれ? もうわかんねえな。

まあ考えてもしょうがない。

俺の目的は1つ!


「俺だけのハーレム作る!」


拳を握って宣言する。

この目的のために強くなる。

ハーレムのために!

大切な人を守るために!


これが俺の新しい目標だ。




夜になって桜が白を送ってきた。

ここまでの時間が長かった。


包丁を買ったり先輩の手料理を食べて死にかけたり。

とにかく色々大変だった。


「ただいま、お兄ちゃん」


白が笑顔で言った。

天使の微笑み。

最高だ。もう何もいらない。

今日の苦労が全部吹き飛んだ。


「おかえり。ごはんできてるから食べな」

「うん、わかった。桜さん、送ってくれてありがと」

「いえ、当然のことをしただけですから」


なんかかっこいい。

ていうのは置いといて。

桜のこと送らなきゃいけないな。

凄い二度手間だ。


「女の子1人じゃ危ないから送ってくよ」

「大丈夫です。自衛くらい出来ます」

「そういう問題じゃないの。怖い男の人が複数来たら桜でも勝てないだろ。だから送ってく」

「はあ、そうですか。ならお言葉に甘えさせていただきます」


先輩たちに一言伝えてから家を出る。

真っ暗だ。

雲一つない空に星が煌めいてる。

凄い綺麗だ。


「じゃあ行こうか」

「はい」


それから会話が広がることなんて無く、ただ歩いてるだけだ。


なんか気まずい。

まあハーレムに加われなんて言われた奴に近寄りたくないよな。


「あの、今朝のことなんですが・・・・・・」

「えっ? ああ、うん。なんだ?」

「本当なんですか?」

「おう! ハーレムを作るために頑張るぜ」

「そっちではありません。その・・・・・・」


桜が少し間を開ける。

言いにくいことなんだろうか。


「綺麗だと思った・・・・・・とかはあなたの本心なんですか?」

「そこで嘘ついてどうするんだよ。ほんとだ。命を賭けてもいい」

「なら卯月先輩に諦めてもらうというのは・・・・・・駄目でしょうか?」


桜の声が小さくなって目を逸らされた。

恥ずかしそうだ。

俺も恥ずかしいんだけど。

なんでだ?


「どうだろう? 理沙に聞いてみないとわからない。俺の個人的な意見を言わせてもらうと────」

「それは結構です」


きっぱり断られた。

最後まで言わせてくれてもいいのに。


「あっ、着いたな。じゃあまた明日な。あと俺はハーレムを諦めるつもりはないから」

「それは・・・・・・困ります。そして卯月先輩も嫌に決まってます。はあ、続きは明日にしましょう。おやすみなさい」


桜がため息をついて家に戻っていった。


「俺は・・・・・・諦めないからな」


いなくなった桜に向かって口を開く。


さて、帰ろうかな。

帰ったらハーレム計画でも作ろうか。

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