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ゲームの朝


翌日の朝、珍しく俺は日向と2人で登校していた。桜は寝坊したらしい。日向が家を出る時に言ってた。

そんなこと今の俺にはどうでもいい。昨日の事を思い出すだけで頭がおかしくなりそうだ。だって、結局あの後────


「俺、多分さ────」

「お兄ちゃん! 大変だよ!」


突然ドアが開け放たれて白が部屋に飛び込んできた! 部屋の中には抱き合ってる俺と日向がいる。それを見て白はポカーンと口を開けて固まってしまった!

白の後ろから出てきた日向のお母さんが俺達見てニヤッと口角を上げて言う。


「あらら。邪魔しちゃったみたいね。白、あっちに行ってお母さんとおやつ食べようか」

「えっ、うん。でも、お兄ちゃん達何やってたの?」

「何って? うーん。ナニよ」

「ばっ! 何言ってんだ、あんた! 白が変な言葉覚えたらどうするつもりだ!」

「へー、春は日向に変なことするつもりだったんだー。おー、いやらしい」


ったく、この人はぁ! ああ言えばこう言う! 元々婚約書だってこの人が変な事言うから日向が作るとか言い出しんだ。日向と一緒でろくなことしねえ!


「じゃあごゆっくり〜」


お母さんが白を連れて部屋から出ていった。何しに来たんだよ、マジで! 雰囲気潰したし、眠気も帰ってきたし! あぁ、もう駄目だ。


「えっ! 春くん? 大丈夫!? お母さん! 春くんが倒れた!」


────って、感じで昨日は終わった。最後は眠気に負けてぶっ倒れたし。朝は朝でお母さんから色々言われるしで最悪だ。


「ねぇ、春くん」

「ん? 何だ? また戦わないでとか言うなら聞かないぞ」

「違うよ。えっとね、昨日は何を言おうとしたのかなって」

「ノーコメントで」

「えー! なんで!? いいじゃん、教えてよー!」

「絶対嫌だ。あんなこと二度と言うか」

「なんで!? えー、気になる」


騒ぐ日向を無視して歩速を速める。やっぱり昨夜は頭がおかしかったのかもしれない。なんでこんな奴とキスなんてしたんだ・・・・・・。


「歩くの速いよ。もっとゆっくり行こ?」

「嫌だ。早く行って準備しなくちゃ勝てないだろ」

「じゃあ勝つ作戦思いついたの?」

「いや、全く思いつかない」

「あぅ、駄目じゃん。じゃあやっぱりゆっくり行こうよ」

「嫌だ。今日の戦いは日向の為だけじゃない。俺の為でもあるんだ」


夢で見たあの日と同じ思いをしないため。もう目の前で大切な人を失いたくないから、俺は強くなったんだ。多分だけど。


「うん。ごめん」


日向は足を止めて俯いた。ああ、もう! なんなんだよ、これ! 俺が泣かせたみたいになってる! 周りの人達もチラチラ見てきてるし!


「分かった。ゆっくり行くから。ほら、泣き止めよ」


日向の手を握ってゆっくりと歩き出す。何の罰ゲームだよ。嬉しいような嬉しくないような。全く嬉しくないな、これ。


「春くん」

「んー?」

「今日ね。もし、生きてたら・・・・・・泊まって欲しいな」

「はいはい、分かりました。白も喜ぶし、お泊まりさせていただきますよ」

「うん。あのね、そしたらね。言いたいこと・・・・・・沢山あるんだ」

「じゃあ守らなくちゃな。後悔なんてしたくないから」


何でもいい。何でもする。だから生きていて欲しい。好きとかじゃなくて。1人の友達として、幼馴染みを守りたいんだ。だから────

今日だけでいい。俺に力をくれ。







「桂木、昨日は悪かった!」


学校には着いた頃には授業が始まっていた。のに関わらず教室に入った俺に白泉が頭を下げてきた。

クラスメイト達は白泉っていうより、俺と日向を見ている。昨日サボったからか?

それはどうでもいいんだ。それより白泉が頭を下げる理由が分からない。


「昨日って何のことだ?」

「いや、だから・・・・・・昨日は言い過ぎた。よく考えたらお前は悪くないのに言いたい放題言っちまったから」

「あー、そのことか。別に気にしてないよ。あんなの怒ることじゃない。それよりもまだ何もない?」

「あ、ああ。まだ平気みたいだ。てか、大丈夫なのかよ! 如月連れてきて」

「うん。大丈夫。俺が守るから」

「そういう問題か?」

「おう、まあな」


まだ、早乙女先輩は動いてない。よし、まだ────


「まだ、作戦を考えられる。とか思っちゃってる? 桂木くん」


黒板に早乙女先輩の顔が映し出されてる! あそこから聞こえたのか!

つーか、黒板!? 悪魔って黒板に入れるのか! すげえ!


「プロジェクターが壊れたのか! なんだこれ。何が起こってるんだ!?」


先生が騒いでるのを見るにプロジェクターから映し出されてるだけらしい。それでも十分凄くね。普通なら無理だろ、こんなこと。


「驚いてる? 驚いてるよね。私が望んでビデオを撮ってもらってるなんて2回だけだもん。びっくりしちゃうよねー」


なんだこのテンション。明らかにおかしい早乙女先輩は続ける。


「私のだーい好きな桂木くんに、少しだけ時間をあげる。ゲーム開始は9時半。そして、私は屋上で10時まで動かない。これで始めようか」


強引! これ録画ですよね!? 決定事項ですよね! 拒否する権利も質問する権利もなしですよね!? 9時半まであと30分ですけど! 作戦どころか準備すら出来るか微妙ですよ!


「うーん、コレ見てる時は多分9時くらいかな? 頑張ってね」


そう言って黒板から早乙女先輩の姿は消えた。しかも全部バレてる! 妥協もなしですか。やっぱり日向のことなんて無視しとけば良かった・・・・・・。

とりあえず火野村先輩に報告しないと。あの人なら準備出来てるはずだ!


「────9時半は、少し辛いわね」


準備出来てなかったぁ! 電話から聞こえる火野村先輩の悩み声。先輩でさえ準備出来てないんじゃどうしようもない。完全に詰みだ。


「何とかならないんですか?」

「なるわよ」

「なるんですか!? ならしましょうよ!」

「春だけはね。私達は何も出来てないけど」


それは何とかならないって言うんじゃないですか? 俺だけ戦って何とかなるのか? ならないですよ、先輩。何とかしますけど!


「それで、じゃあ何とかする方法を教えて欲しいです」

「ロッカーを開けてみなさい」


先輩の言う通りにロッカーを開けてみると、学校の制服が入っていた! これが何とかする方法? 刀とか入ってるけど、礼装かもよく分かんないぞ。


「これ、何ですか?」

「礼装よ。今すぐに着替えなさい。そこで」

「ここで!?」

「時間ないでしょ。着替えなさい」


確かに時間がない。でも・・・・・・。


「分かりましたよ! やります!」

「じゃあ、説明するわよ。まずは────」


クラスメイトの視線の中着替え、先輩の説明が始まった。







「最後に刀の説明よ。抜いてみなさい」


服の説明が終わった。そして遂にこの刀の説明に入った。抜かなくても重さで分かる。これ、刃が付いてる。


「先輩、これ本物ですよね?」

「ええ。魔界で作られた最高品質の刀よ。魔力を通しやすい性質を持ってるからあなたにも使えるはずだわ」

「そういう問題じゃないです! 本物ってことは・・・・・・」

「ええ。殺しなさい」

「殺せって────!」

「守りたいなら迷うのは駄目よ。殺すか、あなたの大切な人が殺されるか。どちらか選びなさい」


先輩の声には力が篭ってる。本気だ・・・・・・。そんなこと言われなくても分かってる・・・・・・はず。答えなんてすぐに出てる。でも・・・・・・。

ゲーム開始まで、あと10分。

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