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幻想教師   作者: 君島 和人
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7時半、出会いと問題児に遭遇

午後7時半、ここで何か違和感を覚えないであろうか。そう午後7時半。



お前は学校の始まりが夜で、朝食とかあり得ないだろと言う人がいそうなので断っておく。



俺は何一つ間違っていない、以上。



そして午後7時半、くどいと言われても仕方がないと思うが再度繰り返させて貰うと7時半。ちょっとした事件が俺を待ち受けていた。


―――



午後7時、家を出た俺達は学校に向かう途中にあった。



「ちょ、キクハ!! 何だよその催しは!!! って空から女の子がッ!」


女の子が浮いていた。



「女の子ではなく、美少女キクハちゃんと訂正していただけないかしら、もっと言うなら魔法使い、いや魔女っ娘かしら」



「ツッコミの観点が違う!?」



ここで良く解る解説。こんな不思議な会話を家の目の前で繰り広げているクール系美少女と幻静さん。さてツッコミの何処が違うか会話の隙間を開けてみれば



「いや、空から女の子ではなく、空に女の子が……ってそうじゃねえ!!! キクハが浮いてる? 箒で、紫のローブを纏って、とんがり帽子を被って浮いてる?」


「ええ、浮いてるわ。因みに下着は見えないように設定してあるから無駄よ」



「俺は、諦めの悪い男でね。まあ上目遣いは止めよう」



ところでと、俺は話を振り出しに戻すため真剣な顔付きでキクハを見上げた。



「下着も紫ですか?」


「起業秘密よ」


「その秘密で何を起業する気だ」


「まあ、私に言わせる気? 自分で考えなさい」


黒い微笑みをこちらに送る彼女だったが、まあキクハはクール系の10人に聞いたら8人は必ず美少女認定を下すだろう。後の2人はあれだ、異端好き、例えるなら、頭のネジの場所に誤ってドライバーが突き刺さってるようなやつの割合とふんでおこう。


しかしまあ俺も男だ女の子と会話できるのはまあうれしい。まあ嬉しいはずなんだが、今はとても悲しい。悲愴感が滲み出るほどに悲しいかな、だって足を踏まれるもの。


しかも小指、これが少年漫画なら、グッ 小指がいったかってかっこ悪すぎるわ。もっというと取れかけの爪が割れた。


残酷なほどに地味で、そして痛い。だが俺は顔にはだしても口には出さない男なので気にせず話を切り出した。



「ところでだ、ところでその箒にまたがっているということは、俺を置いていくつもりか?」


帽子を目深にかぶり直し、箒にこめる力が強くしたキクハは空を見つめていた。準備万端とはこのことなのか、今まで俺の目線より少し高めの位置だったのが少しずつ上空彼方へと上がっていった。


随分と高く上がり俺はおろか町を一望できる場所まで上がると箒とキクハの動きは急停止した。



やっぱ俺おいてくつもりか、いやー、まさかねー。止まってくれたし。



「……? 当たり前の事を言うのね。でもあなたのそういうインスタントジョーク嫌いじゃないわ」



「確かに即席だけれども、ジョークじゃない真面目な話だったのだがってもういない!!!」



俺は空を見上げて一つため息をこぼした。起きてすぐの、夜から少し疲れたと言いたげな様子でかばんを片手で持ち徒歩で向かうことにした。


ここまでがお家での出来事。


―――



仕方がない徒歩で向かおう、と意気込んでみたものの、はっきりと分かることは一つだけあった。



「あーー初日から大遅刻ですわ」


もう確定的でまず変えられない真実だ。予定としてはキクハに起こしてもらい、ご飯を作ってもらい、何とかしてもらうという楽観的で、希望的観測に基づいた甘い考えでした。


甘過ぎてヘドが出るほどに。


西暦○○年、俺の他力本願時ここに沈む。



「はーー間に合わないよな、やっぱり」


ところで


「やっぱコーヒーっていいよね。落ち着くよね。ここの店のコーヒーはおいしいよね。そう思うよねそこの少年」



そう、俺は今宛もなくブラブラすることに嫌気が指し、行き付けの店に一時足を運んで作戦会議もとい束の間の休息を楽しんでいた。



学校は後で電話で風邪の真似事でもすれば万事解決。



「えっ!! 僕? あの、その、つかぬ事をお聞きしますがコーヒーって何? 」


若さ故の~~か敬語がおかしい。あほの子か?


それより何かおかしい点が……



おっと重要なことを忘れるところだった。この少年はコーヒーを知らない。というか飲んだことがないらしい。少年の顔はこちらのカップの中身をまじまじと見つめ、時折俺が見ると顔をそらしてあたふたしやがる。興味ないですよって言いたいようだが、こいつは顔に出るタイプらしい。


その証拠に。


「飲んでみるか?」


「別にいいですよ」


とか言いながら、口調とは裏腹に口角が上がり、手を自分からカップに近づける。


本当にわかりやすい奴だ。


「おいしいか?」


「うんおいしい」


邪なものが全く入ってない純粋な笑顔だった。


いいね、気に入った。


「そうかそうか、少年。ここであったのもなんかの縁だからさ名前教えてよ」


俺が気さくに問いかけると少年は黙り込むことも考え込むこともなく、切れ目なく会話は続いた。



「ソラです。ソラって読んでください」



「ソラ……か、良い名だな。俺は幻静正人、25歳。よろしくな」



握手を交わし、ソラの表情にも強張りが取れてきた。触れたときに脈拍が安定していたからだ。

なので、そろそろ頃合いだと思い大人として行動することにした。



つまり学校についてだ。


「ソラ、お前顔を見る限り16歳ぐらいだよな、学校は?」


俺が真剣な面持でソラを見つめると、今度は数秒の間が開いた。その後、言いにくそうに重たい口を開け


「……やめた」



やめた。ソラは俺にそう告げて一旦顔を反らし、また顔をあげた。


笑顔だった。


笑顔を作っていた。


無理をして、笑顔を作っていた。


完璧な作り笑い、完璧すぎて見え見えの


笑ってはいるが明らかに無理をしていることが分かった。


唇が震え、舌を噛み締め、拳を握り締めていた。


はっきりとした動揺が足元に


彼は、ソラはもう一度はっきりといった。


「やめました」




現時刻7時半。退学少年と出逢った瞬間だった。

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