序章「間隙久遠と有想夢想を玩弄する者」
「運命に招かれ、悲劇が訪れる。今宵は荒んだ夜陰になりそうね」
学園の学園最高理事長を務める、齢1900歳の少女は悟りきった表情で、ただ語る。
この世界で100歳越えの人間はそう珍しくも無い。しかし1000歳越えとなってくると、居るか居ないかの珍しさになってくる。それも若さを保ったままの人間なんて恐らく彼女くらいしか居ないだろう。
「さて、行こうかしら。威光を放つ月の明るみを浴びた、散歩も悪くは無いわね」
漆黒のドレスを着た少女は、漆黒の傘を肩に掛けると、くるっと1回転して見せる。
そんな少女が私室として扱っている、この部屋は学園最高理事長室と言う。意味的には校長室と同意義だが、この部屋は学園最高理事長室と言う機能の他に、学園最高情報処理室という役割も持つ。
学園最高情報処理室とは、学園の関わるあらゆる情報を処理し、学園に関わる全てを支配下に置く為の物だが、この部屋に特に機械的な物は見当たらない。
と言うのもその情報処理は学園最高理事長の頭の中だけで行われており、一見、適当に過ごしてる様に見える学園最高理事長だが、する事はちゃんとしているらしく、彼女の頭の中には学園の全てと言っても過言では無いほどの知識が詰め込まれている。
「断末魔に乱数調整、その他諸々。かなりの機械天使の部品が集まったわね。さて、次は機械天使のどこを支配下に置こうかしら……それとも――」
学園の学園最高理事長を務める、齢1900歳の少女はそう言い、窓も扉も無い部屋から突然、姿を消す。騙し絵のように気が付けば彼女はそこには居なかった。
そんな彼女を知る者は彼女の事をこう呼ぶ。
――間隙久遠と有想夢想を玩弄する者――
この間隙久遠と有想夢想を玩弄する者さんが、一番主人公に近いです。