第1話1日目名染人々:これは夢?いや異世界だ。
暗闇から目を覚ますと森の中でうつ伏せに倒れていました。
ボーッとする意識を起こして顔を上げると、巨大な蛇が私を睨みつけています。
生臭い匂いが鼻に触ると、ここはもう異世界なんだと分かりました。
直ぐに逃げようとしたけどどうしましよう、腰が竦んで立ち上がれません.....そうだ
私はガブが言っていたバフを思い出しました、能力者を起点にして出た音で力を増幅。
声も音だよね、怖いけど何もしないで食べられるよりかはましです、一か八か..........
私はコルセットで締まったお腹に力を入れました。
「堕天した先で業火に焼かれてしまえ天使三人衆!あと誰か助けて!!!」
当然ながら何も起こりません、大蛇は舌をチロチロとさせながらガラスの様な瞳を私に向けて威嚇をしています。
私に3日生き残るなんて初めっから無理だったんだ.....そう諦め掛けた時です、草の根を分けながら走って来る何かの音が聞こえました。
茂みから勢いよく飛び出して来たのは血のように紅い鎧を身に付けた騎士でした。
紅い騎士は「今度こそは勝つ!」と叫びながら抜いた剣先を怪物に向けると瞬殺で茂みの奥まで吹き飛ばされました。
あまりにも一瞬の事に何が起きたか理解出来ないで目を丸くして茂みを見ていると。
紅い騎士がよろよろと出て来て何も居ない空間に再び剣先を向けました。
「おいお前やるじゃないか!だが俺はチェイン最強のっ!」
騎士は再び茂みに吹き飛ばされてしまいます。
「うおー!何処から攻撃を受けている!?」
そうなんです、大蛇は《《1ミリもその場から動いていない》》んですそれなのにどうして騎士は吹き飛ばされたのでしょうか。
なんて私が考えても紅い騎士が勝てない相手です、どうせ私なんて1秒しないうちに食べられてしまうでしょう。
(さようなら...ゴス仲間の赤美ちゃん....最後にお金を返して欲しかったよ保坂さん....
いい加減ハムスターとネズミの区別を付けようねアミ助.....)
私は心の中で友達に遺言を唱えながら食べられる覚悟を決めて大蛇に目をやると
騎士へ目線を移して茂みをじっと睨んでいます。
(さっきからどうして動かないの?
大蛇をよく見ると何本もの棘が生えた触手を地面に根付かせていています、そっか、この大蛇は《《動かない》》んじゃなくって《《動けない》》のか......でも攻撃は何処から?)
それは直ぐに分かりました、騎士が茂みがら無数の触手に巻き取られて出てきたからです。
私は大蛇の触手と空中戦を繰り広げる騎士にビビり散らかしながらも、ロングスカートをたくし上げて悲鳴を上げながら全速力でその場から走り去りました。
「ムリむりむりムリあんなの無理!異世界怖すぎるんですけど!あの騎士はきっと何とかして怪物を倒しますよね?何とかして、何とかって....どうやって?」
考えれば考えるほどにロングスカートを持ち上げる腕が重くなっていきます。
大蛇からも騎士からも大分離れた所まで来て足を止めると、静寂の中を葉が擦れる音だけが聞こえます。
「騎士は無事だ、大丈夫だ、今頃きっとあの怪物を倒している頃だ、紅い騎士はきっと百戦錬磨の凄腕の英雄、あの紅は今まで戦った魔物達の返り血だ、だからきっと大蛇も倒せる」
そう言って自分を納得させようとする度に何故だか言い知れない不安が私の胸をザワザワと揺らします。
そんな気持ちを引きずりながらとぼとぼと歩いていると、騎士が大量の触手を引き連れて走って来ました。
「よかった、じゃなくって!どうしてこっち側に逃げて来るの!?」
「そこにお姫様が居たからですよ、良いからお逃げなさい!」
「命懸けの森のくまさんやってる場合じゃないんだけど!」
大蛇からの逃走劇が始まると直ぐに騎士と並走になります。
コルセットワンピースがお腹を締め付けてるせいもあって私の呼吸は走る度にどんどん苦しくなって行きます、私は大好きなゴスロリを生まれて初めて煩わしく思いました。
紅い騎士はなんだか余裕そうな清々しい表情をしています。
「お姫様、貴女の声を聞くと何故だか力が湧いて来ます、どうしてだろうか?」
「この状況を理解していますか?ナンパなら大蛇を倒してからにして下さい!」
「俺はあの蛇と何度も戦って何度も負けています、俺の見事な吹っ飛ばされっぷりを見ていたでしょう?」
「あんたは何をしに来たのよ!?」
騎士に呆れた拍子にロングスカートを持つ手が緩みました。
そのまま落ちた裾を踏み抜いてしまうと、お気に入りのロングスカートを破って盛大に転んでしまいました。
騎士はそんな私を追い抜いて走って行ってしまいます。
(騎士?嘘じゃん....え?これ、私死ぬんじゃ......騎士はきっと、最初から私を囮にして逃げる算段を立てていたんだ)
転んだ私を囲むようにして触手が地面から沸き出します。
「もう誰でもいいから助けて!!」
視界を涙で霞ませながら助けを叫ぶと、何度かの鋭い音がした後、私の目の前に紅い篭手が差し出されました。
その刹那、脳裏を夢に見ていた王子様の姿が過ぎり、気が付くと私はその篭手に手を伸ばしていました。
刹那、ガシッと手を掴まれて力強く引き寄せられると、冷たい鉄の塊が痛いほどに強く私を抱きしめました。
顔を見上げると、目線を空に向けた顔の紅い騎士がなにやらソワソワとしています。
「すまない、勢い余って走り過ぎてしまった
お姫様...その....泣き顔が可愛すぎて直視出が来ません」
「はぁ?突然なっおっま、えぇ......?」
私も騎士の顔を直視出来無くなりました。
辺りを見渡すと切断された触手が散らばっています。
「これ.....貴方がやったの?」
「そうだけど驚きました、今まで1本ですら触手を切れた事が無かったのに....それに貴女の声を聞くと力が漲って来る、名のある魔法使いとお見受けした、貴女のお名前を聞かせて欲しい」
「ええ、私は人々《とと》」
私が名乗ると騎士は目を丸くして驚いています、どうしてかを聞いている暇はありません。
再び地面から触手が沸き出して私達に襲い掛かります。
「これは本体を叩かないとキリが無いみたいだ、トト王女、俺に着いて来て声を聞かせて下さい!」
「王女!?しかも俺に声を聞かせてなんて臭い台詞ちゃおでも聞いた事が無いんだけど....まあ良いわ、大蛇を倒しに行こう!」
既に大蛇への恐怖は消えていました、この人ならきっと大蛇を倒せるかもしれない、私には今そんな期待が芽生え始めています。
触手を掻い潜りながら大蛇の元へと向かう道中、騎士が漲った目で私を見て来ます。
「大蛇と戦う前に言葉が欲しい、何故だかトト王女の声を聞くと力が湧いてくるんだ」
(もしかして異能の影響?ん〜、気の利いたことは言えないけど)
「私の為に戦って勝って!」
「承知しました!なんだか漲って来たあああぁあ!体が熱いぜえええぇぇぇぇ!」
咆哮と共に騎士が光り輝きました。
もう突然の発光には慣れましたけど、なんだか下半身の辺りが光源だったような.........
止めよう、私はもうこの世界の光の事なんて何も考えたくありません。
漲る騎士と名染人々なまぞめととの行方にご期待ください!延いては応援も頂けると励みになります(๑•̀ㅂ•́)و✧




